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
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
独特の理知的デザインで日本市場に殴り込みをかけるカナディアンブランド、オーパス。旗艦モデルであるヴィヴァーチェは、完成車として近年稀に見るコストパフォーマンスを備えた今季注目の一台である。インプレにおいてスペック上の“コスパ”ばかりが褒められているバイクは実際に走るとパッとしないものが少なくないが、このヴィヴァーチェの出来映えやいかに。安井がメーカー担当者の個人所有バイクを借り出し、このニューカマーの製品哲学に深く迫る。
(text:安井行生 photo:我妻英次郎/安井行生)
第54回の対象車は、日本初上陸となるオーパスのフラッグシップモデル、ヴィヴァーチェ。オーパスとはカナダのブランドで、ロード、MTBはもちろん、シクロクロス、ツーリングモデル、シティバイク、キッズバイクまで幅広いラインナップを誇る総合メーカーである。
オーパスロードラインのトップモデルとなるヴィヴァーチェは、東レの高強度糸T700と高弾性糸M50Jを組み合わせたカーボンモノコックフレームを核とする。上下異径 (上:1-1/8インチ、下:1-1/2インチ) ヘッド、インテグラルシートピラーなどの流行のスペックを取り入れるが、世を驚かす前衛的技術ポイントは特に見られず、BBは通常タイプを採用する。Vivaceとはイタリア語で 「活発に」 「生き生きと」 という意味で、音楽の速度標語としても使われている。日本に入荷するサイズは5種類で、ジオメトリはレーシングバイクとして標準的なものだ。
販売形態はデュラエースとマヴィック・コスミックカーボンの完成車のみで、フレーム販売は設定されない。ステムはイーストン・EA90、ハンドルは同じくイーストンのEC90エアロというマニアックな選択。タイヤはヴィットリア・コルサEVO CX、サドルにセライタリア・SLR XPという、全く隙のないパーツ構成。もちろん、チェーンからスプロケットまで全てデュラエースである。レーシングパーツの定番で固められたアッセンブルには好感が持てる。このスペックで60万円を切る価格は、トップモデルとしては最も安い部類に属する。セカンドモデルとして、同じフレームを採用しメインコンポをシマノ・105としたアレグロもラインナップされる。こちらも完成車で30万円弱と、お買い得感の高い価格設定となっている。
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
今回はメーカー広報車ではなく、代理店担当者の私物を借り出した。幸い (かつとても気の毒) なことに、その担当者氏は筆者より脚が5mmほど短く、そのおかげでISP仕様のヴィヴァーチェの試乗が実現したのだ。締め切りに追われる中で中々乗れず、一ヵ月以上も借りてしまったが、しっかりと300km以上を走ることができた。ありがたいことである。
一言で表現すると、「軽やかで美しい走り」。最初の数mで、現状最高レベルの優れたバランスを感じ取ることができる。ソフトだな、と思った瞬間に羽のように軽い加速を始め、従来のレーシングバイクには見られないほどのスムーズさを伴って加速していく。脚への当たりはあくまでもマイルドでクリーミーだが、抵抗を感じさせないまま実速度はしっかりと上がっている (加速はいい) という、最新車の走りそのものだ。

しかし 「全身バネ」 というタイプではない。しなりを最大限に活かして進ませるというより、表面にソフトさを設けつつ芯にガッチリとした剛性を据えることで、疲労の少なさと動力伝達性を最も上手く両立させているフレームである。表面はソフトだが、中身はしっかりと硬いのだ。
こういった 「しなりを前提にしたフレーム」 は、ある限定された速度域・負荷のゾーンを外れると意図しない (良くない種類の) たわみを見せる、という繊細なタイプが多いが、このヴィヴァーチェは違った。どの速度域にもどのトルクバンドにも非常に巧く対応する。柔軟で安定した振る舞いはいつでもどこでも変わらない。どんな入力でもフレームの美しい挙動が色褪せないのだ。
ドグマ風586調VXRS的と言えなくもない。ヴィヴァーチェはドグマの乗り味を思い出させ (さすがに少し薄味にはなっているが)、VXRSのペダリングフィールを想起させもする (もちろん少々希釈されてはいるが)。コラテックCF-1のように上質で、ルック586のようにしなやか。そんなヴィヴァーチェの反応には、奥が深い優雅さすら備わっている。ソフトなのに、トラクションも殺していない。中間加速や登坂ダンシング時の反応性は、ヴィヴァーチェが最も得意とするところだろう。
