



ダモクレスに乗って以来、リドレーのミドルグレードには一目置いているという安井。確かに速いが速く走らせるには人間がほとんどマシンと化す必要のある695やターマックSL4の直後で、それら最新鋭フレームとは明らかに異なる味付けがなされたエクスカリバーは、再びインパクトを与えることが出来たのか?安井個人の趣味嗜好をたっぷりと交えた、唯一無二のエクスカリバー評。
(text:安井行生 photo:我妻英次郎/安井行生)
リドレーの中堅機種であるエクスカリバーは2005年にデビューしたロングセラーモデル。2009年に現在の形状にモデルチェンジし、そのまま2012年シーズンも継続してラインナップされる。ニューモデルではないが、ヴァカンソレイユカラーが限定発売されたことを機に試乗を行った。
24tと30tのカーボンを素材とするモノコックフレームは、太いダウンチューブ、偏平されたシートステー、太いチェーンステー、上下異径ヘッドチューブなど、最近の流行に則ったフレーム形状を持つ。数年前まで、「リドレーといえばエッジチュービング」 だったが、近年はその特徴が薄れつつあり、このエクスカリバーも全体的に丸みを帯びたチューブを採用している。目新しい機構は何一つ採用されてはいないが、熟成され安定している技術を使っていることで安心感があるともいえる。
このエクスカリバーについて、メーカーのキャッチコピーをそのまま鵜呑み&丸写しにした 「ISPではないヘリウム」 という記述をよく見かけるが、そもそも素材が違うのだから全くの別モデルと考えるべきである (確かにシート部以外の形状はそっくりだが)。言っても 「兄弟モデル」 がいいところだろう。BBとシートチューブはノーマルとなっており、汎用性が高いことには好感がもてる。決して目立ちはしないが、真面目なフレームであることは伝わってくる。





最近のプライベートバイクは前回のインプレにも取り上げたLOOK 695SR。先月アメリカでターマックSL4やヴェンジを堪能してきたばかりであり、この後にはピナレロの新フラッグシップ、ドグマ2の試乗が控えている。機材のインプレッションに先入観は禁物だが、それらの半額以下で入手することのできるエクスカリバーの試乗に 「箸休め的感覚」 がないわけではなかった。それに、このエクスカリバーはルックスでマニアを魅了するタイプではない。塗装はリドレーらしくさすがに綺麗だがフレーム表面の平滑度はそれほど高くなく、フレームの構造もここ数年の流行りをソツなく取り入れたもので素っ気ない。個性とインパクトにやや欠ける (小さいサイズのフレームでも視覚バランスが崩れにくい適度なスローピング度合いを持つという嬉しいポイントもあるが)。しかし、以前のリドレー (ダモクレス) のときと同様、今回もロードフレームはグレード (価格) や素材や剛性の高低や最新スペックの有無では測れないことを思い知らされた結果となった。

ヒルクライムレースのスタートラインで、もしあなたのフレーム重量700g台・完成車重量6kgを楽々と下回る自慢の超軽量バイクのすぐ隣にエクスカリバーが並んでも、ミドルグレードバイクだからと安心してはいけない。油断しているとすぐに視界から消え去ってしまう。エクスカリバーはトップクラスの登坂能力を持っている。
所変わってここはとあるサーキット、エンデューロレース参戦中すでにラスト一周。同一周回・同一集団内であなたのトップスプリンター御用達超高剛性バイクの後ろにピタリと付いたエクスカリバーを、しなやか系ヒルクライムバイクだと侮ってはいけない。うかうかしていると、両手を挙げるのはエクスカリバーのライダーだ。エクスカリバーは、高速域からのスプリントでも素晴らしい伸びを見せてくれるのである。
ミドルグレードのOCLV (4、5シリーズ) やヴェンジ・プロなどの最新鋭アッパーミドルクラスに匹敵する乗り心地を備えていることも強調しておかなければならない。ただフワフワにしただけの不快なロードバイクとは違い、ソフトさと減衰の速さを上手くバランスさせている。万能系ロードフレームとして理想的な快適性を有している。世間ではとことんソフトなフレームを 「ロングライドに適した…」 とありがたがっている傾向も見られるが、ロスのある乗り物が人力での移動に適している訳がない。長距離走に適したフレームとは、あるレベルの動力伝達効率をキープしつつ、路面とタイヤの状況を伝えつつ、振動の残響をしっかりと殺してくれるフレームのことである。エクスカリバーは合格だ。
http://cyclestyle.net/impression/>>続きへ
