ボッテキアが目指すもう一つの「理想の走り」 vol.2 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

ボッテキアが目指すもう一つの「理想の走り」 vol.2

オピニオン インプレ
ボッテキアが目指すもう一つの「理想の走り」 vol.2
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踏んだ分だけ実直にパワーを出すフレーム
トルクをかけると即座に高負荷対応モードに移行する
試乗車を箱から出すと、シマノの失敗作67系アルテグラ (しかもコンパクトクランク) で組まれていて思わず溜息がでそうになるが、気を取り直し、ハンドル、サドル、ホイールを付け替えて走り出す。2012モデルの異常なまでの過激さは影をひそめてしまったかもしれない。そのかわり、バランスがよくなった。あらゆる要素が高いレベルに達している。
剛性感の表面に皮一枚の薄さでソフトな層があり、その範囲内でトルクが推移する低負荷域では、踏みやすくてスムーズで軽快。しかしいったんトルクをかけて踏み込むと、即座に高負荷対応モードに移行して、鮮やかな機動を見せてくれる。その移行の仕方も実に自然。今風のエンターテインメント性を重視した剛性チューニングではない。計算高い演出の臭いなど微塵もしない。踏んだ分だけ、実直にパワーを出すフレームである。
誰にでも乗りこなせる融通性は持っていない
演出は無駄だ、素人騙しだ、と言っているわけではない。愉しむために乗るロードバイクには必要なものであり、それこそが操る愉しみにつながることが多い。しかし、EMME2からは 「安易に演出には走りません」 という愚直なまでの強い意思を感じる。ビギナーを喜ばせることはないかもしれないが、淡々とパワーを吐き出すことで玄人を唸らせることができる。ただのエンターテイメントとは一線を画す仕上がりになっているのだ。「プロの特別な要求に応えるべく」というインタビューの回答からも分かるように、EMME2の設計においてボッテキアは、ライダーの脚力レベルを相当高く想定していると思われる。“気持ちよさ” とか “操る快感” という乗り手によって変わってしまう不確定な要素を鼻で笑い飛ばし、踏めるヤツだけがきっちりと踏めるフレームを作ってきたのだ。
興味深いのは、姉妹車となるEMME695との差異である。695は、しなりを美しく活かす剛性感に仕立てつつ、モデル名の通り695gという軽さにまとめて、しなやかな脚を動かして山を泳ぐように走り回った。軽やかでスムーズで極めて洗練された世界を持っていたのだ。
かたやEMME2は、ガッシリとした骨太感が強く、踏み応えが異常なほどに重厚だ。路面の凹凸もドスッバシッと上げてくる。高負荷で使われることを前提としてフレーム剛性が仕立てられており、基本的にマジになって踏んで火花が散るような領域で走らせないと、美味しいところが味わえない。誰にでも乗りこなせる融通性は持っていないのだ。ビッグブランドのハイエンドモデルがもっと安く買える市場において、あえてボッテキアを選ぼうという人達はただの素人ではない可能性が高いから、これでいいのだろう。
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同ブランド内で鮮やかな対比を描く2台の旗艦
しなやかさを活かして走るクライマーには向かない
また、EMME2はしなやかさを活かして登るタイプの体重の軽いクライマーにも向かない。彼らにピタリとフォーカスしたのが、EMME695である。ただ、同じ登坂でもトルクで押し切ってしまうような走り方、例えば短い緩斜面をアウターのまま一気にかけ登るような場面では、EMME2の剛性が活きる。そんなときのEMME2は本当に速い。乗り手の意識に応えるように力を一滴たりとも無駄にせず、後ろ脚で路面を轟然と蹴り飛ばすのだ。
EMME695の記事では 「スプリンターが踏み倒すような超高負荷域では、EMME695が持つ魅力は薄れてしまうだろう」 と書いたが、そんな場面でこそ活きるのがEMME2なのである。そういう意味では、EMME695とEMME2は、互いに上手い具合に補完しあう関係性にある。かたや優しくソフトで女性的。かたや古風でハードコアで男性的。男女のようにお互いがお互いの美点を引き立たせる関係なのだ。変に人工的な味付けがされていないという点においては、この2台は同質だが。
Q:EMME695は比較的ソフト、EMME2は分かりやすく高剛性、と性格がかなり違いますが、どのように作り分けたんでしょうか?
A:EMME695は極めて軽量で、プロライダー達にはいささか軽すぎると同時に、6.8kgというUCIルールの重量制限にも抵触します。EMME695の設計においては、我々はあらゆる生産工程を見直し、EMME2の特長をできる限り盛り込みつつ、なおかつ究極の軽量化にチャレンジしたのです。
Q:フレームを設計するうえで重視していることを教えてください。剛性、快適性、軽さ、操縦性…これらの優先順位は?
A:プロライダーを対象にしたトップレンジのバイクを語るのであれば、優先順位は剛性、重量、操作性 (特にダウンヒル時)、コンフォート性、となるでしょう。快適性は最後に挙げましたが、重要な要素です。
Q:では、ロードバイクのフレームにしなりは必要ないのでしょうか。剛性は高ければ高いほどいいのか、そうではないのか。考えをお聞かせください。
A:もちろんトップレンジのロードフレームは高剛性でなければなりません。かといって硬ければ硬いほどいいというものではなく、パワーを失わないためには適度のしなりも必要です。結局、ベストなフレームとはどんな状況下でもベストな反応をしてくれるもの、ということです。
斬新な機構で時代を開くような存在ではないが…
彼らが考える優先順位を忠実にトレースすると、EMME2になるというわけだ。乗ってみても、本国の担当者に話を聞いても、EMME2は従来のロードフレーム設計方法論の延長線上に位置していることが分かる。決して斬新な機構で時代を開くような存在ではない。走りにも、派手さや新しさはない。しかし、これまで書いてきたように、これはこれでとても素晴らしい。至極真っ当なレーシングフレームである。EMME2の敵は、ピナレロやコルナゴのハイエンドラインだ。EMME2は踏んでいる間中ずっと正直にトルクを出し続けるタイプなのに対し、ピナレロの上位機種はペダリングの後半でグワッと押し出すタイプ、という性格の微妙な違いはあるにせよ、方向性はかなり似ている。
一方で、EMME695はしなやかさを前面に押し出すフレームだ。ライバルはスーパーシックスEVO。最後に、個人的に一番聞いてみたかった質問を。
Q:では、EMME695のしなやかさは意図したものなのでしょうか?それとも軽量化の結果?
A:EMME695の軽快さは軽量化の結果生み出されたものですが、その剛性感と操作性には、我々自身驚かされています。
この回答から、今まで彼らが持っていなかった超軽量車EMME695の開発と成功が、ボッテキアに多くのもの (剛性感の仕立て方におけるノウハウ、新しい思想と方向性、可能性) をもたらしたことがうかがえる。これから、このブランドのさらなる飛躍が期待できるだろう。
EMME2とEMME695。性格が大きく異なる2台。しかしどちらも魅力的な2台。それはボッテキアというブランドに、鮮やかな対比と未来のヴィジョンを描かせた2台なのである。
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