【スポーツテックの未来】「スポーツのエンタメ性拡張が大切」為末大さん 3/3
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◆シニアのスポーツ分野に可能性
…為末さんが手がけている法人、アスリートソサエティは、アスリートの能力を社会にうまく取り込んでいこうという狙いがあるとみています。アスリートたちが軸足を置く、スポーツ分野にビジネスの可能性はありそうですか?
為末大氏(以下敬称略):これまでの話からすると、アスリートとビジネス、スポーツとビジネスに分けなければなりません。アスリートとビジネスの関係でいうと、僕が関わっているアスリートソサエティが人材バンクやベンチャーキャピタルのようになっていくのか。これはまだ成功例がないので未知の世界ですね。
一方で、スポーツとビジネスでいうと、将来的に医療費を抑制するためにも、国として心身の健康につながるスポーツを奨励していかないといけないはずです。今のスポーツ業界は40代以下の人にフォーカスしたり、あるいは20代以下の部活動を狙っていることが多いのですが、僕としては60歳以上の領域のスポーツをどうするかという部分に注目しています。
…現役を引退した世代の方々が、スポーツクラブに通うことも増えています。
為末:それでも数パーセントという世界だと思いますね。そういう人たちは放っておいても運動する人たちなんですよ。それ以外に、まったくスポーツしない人が沢山います。そして、誰もがいずれは高齢者になり、その医療費が莫大になる。医療費の軽減のためには健康維持を意識してもらうことです。そのための適度なスポーツを推奨しても、押しつけることはできませんからね。シニア層が前向きにスポーツに取り組んでもらわないといけない。そういう時期がくると思います。
◆年齢とスポーツ
…なぜ年齢を重ねるとスポーツをしなくなってしまうのでしょうね。
為末:一つは、日本のスポーツ文化にあると思うんです。学校でやっている部活動や体育は、自発的ではなく、やらされている子どもたちも多くて“あれがスポーツだ”と思うと面白くないですよね。僕には、“球技も仲間とやるにはいいんだけど、先生から教えられると面白くない”と感じる性格があって、人生の中で一番面白かったのがハードルとゲームだったんです。
…特に子どもたちのスポーツの世界には、努力!根性!気合い!というような精神論が蔓延してます。
為末:スポーツは本質的には「遊び」なんですよ。僕は、どうやって“スポーツをユルくするか?”というのを大きなコンセプトとして活動していて、スポーツを教育に持ち込んでしまうと本質が歪んでしまうのを危惧しているところがあります。今後、文部科学省の下にスポーツ庁ができるみたいですが、“どうやって教育色を消すのか”というのが重要になってくると思います。
しかもスポーツが教育になってしまうと、60歳以上の方がないがしろになってしまうんです。今、ランニングとかヨガに人が集まるのは、努力とか根性といった世界観を強制されないところに、入り込みやすさがあると思います。
◆スポーツをいかに遊びとするか
心身を育成するのがスポーツと考える人だと、スポーツのライバルは塾だとか考えてしまいがちです。しかし、スポーツは「遊び」。楽しむことがもっとも大事と考えると、見える世界が変わります。つまり、スポーツは、ゲームをはじめとするエンターテインメントの世界にあると考えることができて、エンターテインメントの一つとしてスポーツが位置づけられることを望んでいます。
…努力、根性、気合いも時には大切ですしね(笑)。スポーツの世界に新しいテクノロジーを持ち込むことで、スポーツをする楽しさが広がるかもしれません。
為末:そうですね。僕は子供の頃からゲーマーだったんですが、いままでは任天堂が作り上げたTVゲームの世界が凄すぎて皆そこに収まっていたんですね。でも、最近ではゲームの世界にもフィジカル性が伴ってきていて、この方向はスポーツの可能性としてありだと思うんです。Wiiの発展系にはすごく興味をもっていて、ゲームの世界からスポーツの世界に拡張していくことで、オリンピックが一つ作れるのではないかと想像してしまいますね。
◆ITがないと成り立たないスポーツ競技があればすごく面白い
牛の睾丸をボールにして始まった競技がサッカーで、それも1800年代のことなんです。そう考えると、ボールがないと成り立たないサッカーと同じように、ITがないと成り立たないスポーツを開発してオリンピックに持ち込むと、すごく面白いんじゃないかと思っているんです。
…もし為末さんが、2020年の東京オリンピックをプロデュースするとしたら、どんなテーマやコンセプトを掲げますか?
パラリンピックの方では、ウェアラブルをはじめとしたテクノロジーを使い放題の競技を作りたいですね。オリンピック/パラリンピックを開催すると、その後の財政負担が大きくて経済が苦しくなるパターンが繰り返されていますが、都市を全てバリアフリーにして、観光をはじめ、都市の価値を上げる、というモデルを東京で示してみたいです。
オリンピックの方は、“共有”をテーマに、国立競技場のスクリーンやクラウドを使って観戦者同士を繋いだり、選手の心拍数など競技者の体感をシェアできたりしたら面白いですよね。
《文責:椿山和雄 まとめ/構成:土屋篤司》
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