【澤田裕のさいくるくるりん】自転車に対する考えも、科学の裏付けがあってこそ | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【澤田裕のさいくるくるりん】自転車に対する考えも、科学の裏付けがあってこそ

オピニオン コラム
ハードカバーで仕立てられた本書は、ページ数192の総カラー。これで2800円+税なら文句なし
ハードカバーで仕立てられた本書は、ページ数192の総カラー。これで2800円+税なら文句なし 全 3 枚 拡大写真
1年ほど前に河出書房新社から、「サイクル・サイエンス 自転車を科学する」が刊行されました。タイトルにあるとおり自転車にまつわるさまざまな事象を、科学の視点から取り上げたものです。

◆わかりやすさが特徴

そういうと「堅苦しい中身なのか」との声が聞こえてきそうですが、写真をご覧になればおわかりのように、図版がふんだんに使われているうえ、文章は簡潔明瞭。それぞれのトピックが見開き単位でまとまっていますから、ちょっとした空き時間を使って少しずつ読み進めることができます。ちなみに、私は毎朝恒例となっている“儀式”の時間を利用しました。もちろん、自分が興味を持ったところから拾い読みしてもかまいません。

著者のマックス・グラスキンは科学ジャーナリストとして、幅広い分野の出版物で健筆をふるっています。その一方でサイクリングを愛好し、ヒマラヤ山脈を越えたりMTBのクラブを設立したり、はたまた自転車の全国大会を催したりと、こちらでも幅広いご活躍。本書が取り上げるトピックも、「自転車はどのくらいの負荷に耐えられるのか?」「なぜ自転車は立っていられるのか?」といった物理に関わることから、「楽に走るにはどうすればいいのか?」といった人間の生理に関わること。さらに「自転車は安全な乗り物なのか?」といった社会に関わることまで多岐にわたっています。

本書には物理の世界で使われる数式も出てきます。たとえばF(求心力)=[m(質量)×v(速度)の2乗]÷r(カーブの半径)。これぐらいなら「速度が2倍になれば求心力は4倍になるんだな」とか、「カーブがきついほど求心力は増えるんだな」と理解できますが、これがフロントフォークの形状に関わる数式のように、三角関数が使われるともうお手上げです。

でも安心してください。そんなところはごくわずかで、多くのデータはわかりやすい図に置き換えて示されています。とはいえじっくり眺めることで理解が深まる図も多いので、そこは臨機応変に。

◆著者がイギリス人という前提を踏まえて

難点は著者がイギリス人ということ。当然ながら標準的な体形など体に関するデータは欧米人のものですし(身長や体重、肺活量など日本人のデータが併記されているものもあります)、何より参考文献が欧米のものということで、言葉の壁があったり入手が困難だったりすることです。たとえば「フルサスペンションに乗ったライダーはハードテールに乗ったライダーに比べ、30%少ない酸素量で同じコースを走れた」(58ページ)という記述は「Experimental Evaluation of Mountain bike Suspension Systems(MTBのサスペンションシステムの実験的評価)」という論文に基づいて書かれているのですが、この論文自体はネット上に公開されているものの、読みこなすにはそれなりの語学力を必要とします。

本書はあくまで一般の読者を対象に書かれたもので、これまでの常識を覆す知見が披露されているわけではありません。それでもなんとなく理解していたことや感じていたことの裏付けがされることで、自身の判断が明確となり、考えに奥行きが生まれてきます。これが本書の醍醐味といえましょう。

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