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国内のロードバイクブランドでは唯一気を吐いている感のあるアンカーのトップモデル、RHM9。科学的解析とプロチームの開発協力により誕生したこの新型カーボンフレームを、旧型のオーナーであるライター・安井が徹底的にテストする。プロも認めるというその実力やいかに。
(text:安井行生 photo:我妻英次郎/安井行生)
レース会場にいるアンカーはなぜか速く見えてしまう。生意気そうなコーコーセーが高価なイタリアモノに乗っていたりすると 「ちょっと勝負してみっか」 という気にならなくもないが、コンガリと日焼けした彼がボロボロのフルアルミのアンカーに跨って現れるともう勝てる気がしなくなる。勝負する前に心が折れてしまう。
それがアンカーというイメージ。大和魂の日本男児がねじりハチマキ腕まくり。黒髪の小柄な選手が世界で奮闘する姿。好戦的でなぜか誇らしく、でもやっぱりどこか垢抜けない。そういうイメージ。
エアロパーツで飾り立てたような形状のカーボンモノコックフレーム、アンカー・RHM9がフルモデルチェンジして現在の形状になったのは2007年。新しいRHM9はフレームがフロント三角+シートステー+チェーンステーの3ピース構造となり、モノコック時代の強烈な個性だったダウンチューブのフィンやシートチューブのエアロ形状はあっさりと姿を消してしまう。
フレーム素材はハイモジュラスカーボン。トップ&ダウンチューブから続く4本のリブがヘッドチューブを巻き込む 「ドラゴンクローヘッド」 が大きな特徴だ。複雑な菱形断面の各チューブや極太長方形断面のチェーンステーがいかにもアンカーお得意の科学的解析感を醸しだす。現在では決して軽いとは言えない1100gというフレーム単体重量(490mm/カタログ値)も、かえって高性能や高耐久性を予感させるもの。08モデルではフロントフォークの形状を見直し、40gほどの軽量化を実現している。
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
そんな僕も、実は06年カーボンモノコック最終モデルのRHM9を所有している。踏み出しが軽く、登坂での絶妙なしなやかさが僕の脚にピッタリで、ヒルクライム決戦用として今も活躍させている。フルモデルチェンジした07モデルに乗ったときも、しなやかながら走行感が抜群に軽く、思わず購入を考えてしまったほどに好印象だった。
しかし、07モデルのRHM9を事故で潰してしまい、08モデルのRHM9が新たに納車された知り合いによると 「07と08とでは別物になっている」 らしい。07→08で設計変更されたのは、フォークである。08版のフォークは軽量化のため全体的にボリュームダウンしているが、ブレード全体がリブによって補強されている。
年間3万km以上を走るベテランサイクリストであるその彼曰く、「07に比べて08はフォークの縦剛性が低下した印象。反応性は落ちているしブレーキングもコントロール性重視の味付けになった。だけどリブによってねじり剛性がアップしたのかハンドリングは明らかに鋭くなってる。快適性もかなり向上しているけど、レーシーな味付けを好むライダーには07モデルの方が合っていたかもしれない」 とのことだ。レースバイクとしてはあまり期待しないほうが良いのだろうか…
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深みのあるワインレッドが印象的なこのRHM9の08モデル。その彼が言うように、踏み出しではしなやかさが支配的である。グッと踏み込むとググッとしなり、上質なカーボンフレームらしく滑らかに加速を始めるが、反応性は一般的なレベル (レスポンスが悪いのではなく、ワンテンポ遅れる感じ)。しかも 「新型のコンフォートバイクです」 と渡されても納得してしまうほどの快適性を持っているのだ。確かに、形状変更された新型フォークは僕の06モデルのフォークとは比べものにならないほど快適性が向上している。ピュアレーシングマシンというキャッチコピーに反して時代が求めるコンフォート方向に振ってきたのか。
その答えは、500kmを走った後にはっきりとする。
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