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ベルギー国境にあるフランスの街、Roubaix (ルーベ) は、荒々しい石畳の上を駆け抜ける過酷なクラシックレース、パリ-ルーベのゴール地点。その地にちなんで命名された快適系フルカーボンロードバイク、スペシャライズド・ルーベをロングライドで試す。
(text:安井行生 photo:我妻英次郎/安井行生)
スペシャライズドのカーボンロードモデルには2つのラインがある。一つは動力性能を重視したターマックシリーズ。前傾姿勢がきつく、フレームも固め。レースユースには最適だが、快適さよりも速く走ることに重点を置いている。
もう一つが、長距離を快適に走るために設計されたルーベシリーズ。フレームの各所に振動吸収樹脂 「ゼルツ」 が挿入されており、路面からの衝撃を効果的に吸収する。ホイールベースも長く (ターマックに比べてルーベシリーズは、サイズ49で13mm、52で19mm、54で22mmもホイールベースが長い)、機敏性よりも安定性を重視して設計されていることが分かる。長距離でライダーを疲れさせないことがルーベに課せられた最重要課題だ。
このルーベエリートコンパクトは、FACT 6rトリプルモノコックカーボンフレームに、シマノ・105、FSAのコンパクトクランク、MAVICのリムを使用した手組みホイールを組み合わせた完成車で、S-WORKSを除いたルーベシリーズの4thグレードとなる。シートステーに振動吸収材 「ゼルツ」 を仕込んだフレームはもちろん、パーツも快適性を重視したものとなっており、フォークとシートピラーにも 「ゼルツ」 が挿入され、ハンドルには衝撃吸収ダンパーが挟み込んである。さらにはソフトなサドルを装備し、25cのタイヤを履かせ、ハンドルバーのバーテープ下にはゲルパッドまで敷くという念の入れようである。ここまで振動対策を徹底したフレームも珍しい。乗らずとも振動吸収性が高いのは分かる。注目すべきは “ロードバイク本来の性能をどれだけ残せているか” であろう。
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
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フレームとの対話を楽しみ、心地よい緊張を強いるバイクではなく、ライダーに (良い意味で) なんにも考えさせないバイクである。イージー。穏やか。重心は低く、扱いやすく、異常に乗りやすい。
同じスペシャライズドでも、前回試乗したターマックSL2だとそうはいかない。軽量な車体とホイールによって重心は高め。岩のように硬いフォークをこねくり回し、脚でハンガーの反発を必死で押さえ込み、機敏なハンドリングに修正を加え、コントローラブルとは言えないブレーキフィールに注意しながらタイヤグリップのご機嫌を伺い、前方の風景と刻々と変化する路面状況、そしてヒラヒラと敏感なバイクの挙動に神経を集中させ続けなければならない。体力も精神力も消耗するが、そのかわりバカっ速。
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対してこのルーベは、ポカーンと口を半開きにしたまま乗れてしまう。ライダーに優しく、ホッとするような乗り味だ。長いホイールベースが効いているのか安定性も高い。ハンドルを軽く振りながらダンシングで加速しても、タイヤと路面がコンタクトしていないかのようなふわりふわりとした乗り味。
しかし (この種のバイクにしては、というエクスキューズが付いてしまうが…)、加速やヒルクライムで、もどかしさが少ないのには驚いた。
ここまで快適性が高いフレームはもっと進まなくてもいいものだと思っていたが、スペシャライズドの技術レベルは高いのだろう、走行性能と快適性を予想以上の高いレベルで両立させている。売りが快適性だけ、というコンフォートロードバイクが多い中で、ルーべは決して運動性能を諦めてはいないのだ。
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