ザッカーバーグの野望…途上国50億人をつなげる「貢献ビジネス」 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

ザッカーバーグの野望…途上国50億人をつなげる「貢献ビジネス」

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マーク・ザッカーバーグ
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先日、中国の清華大学での学生とのディスカッションで、フェイスブックのザッカーバーグCEOは見事な中国語を披露した。フェイスブックが禁止されている中国での出来事として、世界中のニュースになった。妻のプリシラ・チャン夫人が中国系アメリカ人ということから、かなり以前から勉強をしていたということらしい。

その前には、フェイスブック愛好家でもある安倍総理にも表敬訪問しており、さらには、インドのモディ首相、インドネシアのジョコ大統領とも会談をしている。これらの名前だけを見るとオバマ大統領のアジア訪問かと思ってしまう。


◆時価総額はすでにトヨタやコカ・コーラ以上

先月のフィナンシャルタイムズ紙(FT紙)によるとフェイスブックの株価時価総額は、2000億ドルを超え、トヨタ、コカ・コーラ、バンクオブアメリカなどまでも上回ったという。その理由として、ザッカーバーグが、巧みに将来の脅威となりえるスタートアップ企業を見抜き、早期に買収して、そのアイデアや技術を自社に取込んでいるところを投資家が評価していると分析している。

しかし、私は、それだけではないと思う。各国の政界のトップと会談を持ち、持論を述べて回る手法は、これまでの若手経営者にはあまりなかった戦略だ。ビルゲイツ夫妻も2006年に私財を投じて財団活動を始め、政治家とも交流を深めたが、現役を離れてからのことだ。


◆新組織「Internet.org」とは

ザッカーバーグの野望は、この8月に発表した新組織「Internet.org」に表れている。この組織は、世界でまだインターネットの恩恵にあずかっていない約50億人(恩恵にあずかっているのは約20億人)にインターネットを普及させるためのパートナーシップ組織である。この組織には、サムソン電子、ノキア、エリクソンなど6社が名を連ねている。

このサイトに行くとザッカーバーグが、自ら動画で語り掛けてくる。「インターネットで知の共有をしよう。インターネットの利用しやすさを100倍にしたい。そのためには、2つことをする。1つは、インターネット利用のコストを10分の1に安くすること、もう一つは、データの量を10分の1に小さくすること」という。

具体的には、遠くまで信号を飛ばせる大規模インフラを構築して、小さな携帯発信タワーを減らす。実際、ザンビアでは、ドローン(無人飛行機)を飛ばしてターミナルとし、医療や教育に関するインターネット接続を無料で提供しだしている(フェイスブックも無料アクセス可能)。データ量を減らすことについては、極力アプリケーションから、ユーザーが必要情報を自動受信するようにして、それを圧縮データで送れば6割を減らすことができると述べている。

そして、ザッカーバーグは、「Internet.org」紹介動画の最後で「自分もインターネットの恩恵にあずかり、あとは、わずかなツールだけで、世界のためにフェイスブックを立ち上げた。我々はこのプロジェクトを達成し、世界の全ての人が、インターネットを通じて、イノベーションやアイデア、人の努力による功績をシェアできるようしたい」と述べている。


◆貧困国にこそインターネットは必要

確かに、インターネットの貧しい地帯での普及は、世界の貧困問題の解決にいくつかの貢献が期待できる。天気予報を瞬時に入手できれば、農業の収穫量に影響を与えることができるし、雨水の貯め方を学べば渇水を避けることができる。また、蚊帳の作り方を学べれば、マラリアは防げる。学校の授業では、世界中の先生から学ぶことができる。ビジネス面でもファミリービジネスのマーケティングツールとして、販路を世界に広げることもできるはずだ。インターネットは貧困地帯の生活を激変させることができる大きなツールである。

各国のトップが、「Internet.org」の活動に賛同することは当然であろう。

フェイスブックの全世界でのユーザーは、8億2900万人(デイリー・アクティブユーザー)と公表している。インドでは、1億人を超え、米国に次いで2位の会員数となっている。しかし、広告収入はほとんど皆無ということだ。インドの広告マーケット全体が極めて小さい(日本の約6分の1)ということと、そのほとんどがテレビに流れているということなどが理由である。よって、途上国や貧困国に攻めてもフェイスブックの利益にはつながらない。しかし、ザッカーバーグは、この当面は利益にならないプロジェクトを勢力的に推進している。


◆貢献から機会を生み出すビジネスモデル

ザッカーバーグが進めるプロジェクトが完成すれば、途上国だけに恩恵を与えるものではない。アクセスへのコストダウンの技術は、いずれ、全ての場所でフリー・アクセスを実現していくだろう。デバイスもどんどんと変化していくと思う。将来は、電話も必要なくなるのかもしれない。(本年2月にフェイスブックが買収したWhatsAPPは、電話番号からのショートメッセ―ジをインターネットで無料配信する)

しかし、絶対に変わらないのは、人と人との繋がりに対する欲求、そして、人間の知に対する欲求だ。ザッカーバーグは、この普遍的なところに目をつけている。そして、貧困国や途上国に貢献することで、新たなビジネスチャンスを見つけようとしている。50億人の新たなマーケットで、この人と人との繋がりを量でおさえることが、30年後の利益に繋がるとザッカーバーグは理解している。彼の野望は、まだまだ大きくなっていきそうだ。

<土井正己 プロフィール>
クレアブ・ギャビン・アンダーソン副社長。2013年末まで、トヨタ自動車に31年間勤務。主に広報分野、グローバル・マーケティング(宣伝)分野、海外 営業分野で活躍。2000年から2004年までチェコのプラハに駐在。帰国後、グローバル・コミュニケーション室長、広報部担当部長を歴任。2010年の トヨタのグローバル品質問題や2011年の震災対応などいくつもの危機を対応。2014年より、グローバル・コミュニケーションを専門とする国際コンサル ティング・ファームであるクレアブ・ギャビン・アンダーソンで、政府や企業のコンサルタント業務に従事。山形大学工学部 客員教授。

【土井正己のMove the World】ザッカーバーグの野望…途上国50億人をつなげる「貢献ビジネス」とは

《土井 正己@レスポンス》

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