◆山を歩いて県をまたぐ。
鶏足山のハイキングコースには、茨城県と栃木県を「またぐ」コースがある。鶏足山~焼森山の縦走路がそれである。鶏足山は茨城県東茨城郡城里町、焼森山は栃木県芳賀郡茂木町にそれぞれ位置している。
県境に看板がある訳ではなく、いつの間にか「越えている」といった感じである。それでも、県境を意識することで、いつもの登山とは違う味わいがあった。
◆赤沢富士~鶏足山へ。県境を歩く。
鶏足山の県またぎハイクは、赤沢富士へと続く急勾配な登りから始まった。時間にすると20分ほどの登り道。クライマーズ・ハイになる前の準備運動としては、少々長くて急かもしれないが、この最初で最後の難関を越えると赤沢富士の山頂に出る。ひと汗かいて小休憩するには丁度よいタイミングだ。
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歩き始めて20分ほどで最初のポイント・赤沢富士山頂に到着する。
赤沢富士山頂から、更に15分で三角点(分岐・2等)へ。そこから鶏足山へは5分ほどの距離。鶏足山から鶏石へは10分弱。鶏石で昼休憩。鶏冠の形をした岩と景色を交互に眺めながら、カップラーメンを食す。ちょっと歩いては見所となるポイントがあり、歩くのを飽きさせない。
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鶏足山山頂。見晴らしは最高。山頂からは茨城県北部の山、同じく南部の山、そして、栃木県の那須連峰や日光連山の姿が見える。
その後、三角点の分岐まで戻る。地図を見ると、丁度県境のあたりにいることがわかる。鶏石、鶏足山、三角点、弛み峠といったポイントを歩くコースは、県境を縦断する道になっていた。県境の上を歩いていると思うと、何ともいえない不思議な感覚に陥った。
◆茨城県から栃木県へ。
分岐を焼森山方面に折れて弛み峠を越えると、いよいよ本格的に栃木県へ入る。境界を意味する標識はない。そのため、「せーのっ!」などと言いながら、県境の向こう側に足を一歩踏み出すような楽しい試みもしようがない。それでも、県境越えを成し遂げた達成感を何となく味わうことができた。
ゆるやかな登山道を歩いていくと、焼森山の頂上へ辿り着いた。ここは完全に栃木県に位置している。普段は車や電車で通過する県境を、山を歩きながら通過したのだ。栃木県へ足を踏み入れたことで、栃木県の山々が先ほどよりも少しだけ近くに、そして綺麗に見えるような気がした。
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焼森山山頂まであと少し! 写真は同行者の高萩さん。詳細は次週にて。
山を歩いて県をまたぐ。日本の領土の約7割は山間部だというから、今回の鶏足山のような県をまたぐハイキングコースは全国にも多数存在しているはずだ。全国の県境の山を登り尽くしてみるのも、また一興だろう。鶏足山に登って、筆者のハイキング観に新たな楽しみが加わった。