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▼アルティメットとは?
日本アルティメット協会公式ホームページ より
"アルティメット(Ultimate)は、各7人からなる2チームが100m×37mのコートでディスクをパスしながら運び、敵陣エンドゾーン内で味方からのパスをキャッチするとポイント(1点)となります。球技にはないディスクの飛行特性を遣い、またスピードや持久力を必要とすることから究極(Ultimate)という名前がつけられました。ゲームではスピリット・オブ・ザ・ゲーム(Spirit of the game)という紳士的な基本理念に基づき、審判を置かずに選手同士の判断によるセルフジャッジを採用しているのも特徴といえるでしょう。"
参考動画
◆世界大会でも「セルフジャッジ」
---:藤岡さんがアルティメットをはじめたきっかけを教えてください。
藤岡あゆみ選手(以下、敬称略):小中高とバレーボールをずっとやっていたのですが、体育大学に進学してからは、本格的にバレーボールを続けていくことが少し難しいレベルにいたので、何か新しいスポーツをはじめたいな、と思っていたんです。
そんな思いで色々なスポーツを探していたある日、アルティメットのオリエンテーションに参加する機会がありました。そこで、直感的に、「なんか面白そうだな」と感じたんです。それが全てですね。
---:藤岡さんの感じるアルティメットの魅力は。
藤岡:遊びで使う用具であると思っていた、「フリスビー」が競技になるという斬新さと、セルフジャッジ。つまり、選手同士でジャッジし合うという点に魅力を感じています。世界大会ですらセルフジャッジなので、そこでも相手選手とコミュニケーションをとっていかないといけないんです。この点に、難しさと面白さが存在していると思いますね。
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---:世界大会まで…もめることはないのですか。
藤岡:もちろんもめますよ(笑)。まぁ、もめて話し合いが長引くようであれば、前のプレーに戻すという取り決めがあるので、そこまで喧嘩になることはないですけれど…。
◆アスリートの根本を尊重するルール
また、スピリットを評価しあう「スピリット・オブ・ザ・ゲーム」という制度があるのも大きな魅力だと思います。
▼スピリット・オブ・ザ・ゲームとは
日本アルティメット協会公式ホームページ より
”Japan Ultimateでは「スピリット・オブ・ザ・ゲーム(Spirit of the game)」を推奨し、公式戦ではスピリット・オブ・ザ・ゲーム賞(SOTG賞)を採用しています。この賞は試合毎に対戦チーム同士で相手チームを評価することにより、互いを研鑽し合い、すべてのチームがスピリット向上に努めることを目的としています。
スピリット・オブ・ザ・ゲーム賞は世界フライングディスク連盟が公認するワールドワイドな大会で表彰されています。アルティメットという競技スポーツを象徴する「スピリット・オブ・ザ・ゲーム」の精神を称えるこの賞を受賞することは、優勝する事と同等の称賛を得るほどの価値ある賞です。”
また、男女混合でやることができるのもアルティメットならではの魅力です。「女性が得点すると2倍」などの加点はありません。
---:マイナー競技という点で、アルティメットを続けていくうえでどのような苦労があったのでしょうか。
藤岡:最近は認知度も高まってきたけれど、まだまだ競技としては知られていないので、趣味や遊びと見られてしまうのが苦労といえば苦労ですね。
また、普段の練習も、皆社会人として仕事をしながら土日集まるという感じなので、土日休める仕事を見つけることや、そういった状況を周囲、職場に理解していただくということも必要です。海外遠征の時は有給という形ですが長くお休みすることとなってしまうので…。(国内で、実業団として活動しているチームは男子1チームだけ、彼らも平日は仕事をしている)
---:資金面などでの苦労などはあったりしますか
藤岡:海外への遠征費も自分で工面しなくてはいけなかったり、仕事も土日を休める仕事を優先して選んできたことなどもあって、なかなか収入面では安定していない部分もありますね。一時期は借金まみれで動いていました(笑)。
◆アルティメットをはじめるには
---:アルティメットをはじめるにあたって敷居の高さなどはありますか。
藤岡:初心者の人にも敷居が低く、すぐにある程度のレベルまでは上達します。アメリカンフットボールとバスケを足して割ったような感じと説明されることが多いように、空間をうまく使うスポーツなので、サッカーやバスケをやっていた人などは上達が速いように感じます。
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---:競技人口、世代ごとに盛り上がりなどはありますか。
藤岡:競技としてはユース世代が充実してきていることを感じます。最近学習指導要領が変わって、フライングディスクがニュースポーツとして授業の体育などでも扱われることが増えてきたりしているんですね。先日も先生(体育の授業でフライングディスクを教えることとなった先生)たち向けの講習会に行ってきました。
---:教育の観点から、どういった点が評価されているのでしょうか。
藤岡:手軽に誰でも取り組める点をはじめとして、セルフジャッジなのでお互いを尊重し合わないと競技が進んでいかない点などでしょうか。生徒の自主性を育むという目的においては、とても向いているスポーツだと思います。また、肉体的接触は禁止という点で安全性も高いということもあると思います。
---:アルティメットの競技人口で男女差はありますか。
藤岡:「人口的には男性の方が多いが、大学卒業後はやめてしまう…。」という、上を目指すというところまでいきつかないという現状があるんですね。ただ、U20、U23、ユースとヒエラルキーが少しずつできているので、構造の改善は進んでいると思います。
まだまだチーム数は多くはないのですが、日本では関東地域がアルティメットのチーム数は多いですね。私は関西の出身ですけれども、上京してくるまでは4年間毎週夜行バスに乗り続けて、関東のチームの練習に通っていました。金曜の夜に出発して、月曜の朝帰ってきてそのまま仕事みたいな…。
◆選手の立場から、マネジメントまで
---:チームでの立ち位置は。
藤岡:幹部は若い人に任せて、チーム運営などをしてもらっているので、口出し役という感じですね。
---:スポンサーとの付き合いなどに関しては。
藤岡:スポンサー企業の「商品を使ってなにかできないか」という要望などをいただいていながら、なかなか取り組めていないのが現状ですね。成績の要求というのは特にはないです。
アルティメットだけではなく、様々なマイナースポーツアスリートの競技資金難およびPRをサポートしている一般社団法人「アスリートエール」 代表理事の岩田一美さんは藤岡さんについて以下のように分析する。
岩田代表:アルティメットは、一般入社で選手をやっている人は少なく、たいてい派遣、バイトをしながら選手活動を続けています。藤岡選手のようなビジネス的な感覚をもっている人が増えないとマイナースポーツを盛り上げていくのは厳しいと思います。
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---:他の業界のスポーツ選手で例えるとすると、ご自身の立ち位置はどのような選手にあたると思いますか。
藤岡:うーん…難しいですね…。ただ、澤穂希さんは同い年でもありますので、とても親近感があります。個人としても、アルティメットの日本代表暦は長く、2000年から2012年まで代表でやっていたということもあります。
---:現時点での目標は。
藤岡:できるところまで競技を続けていきたいというのがありますが、目の前の大きな目標は、2年後のマスターディビジョンクラスの世界大会で世界一をもう一度とる、ということですね。(アルティメットは、代表、ユースなど含め30以上のクラスで世界大会がある。女子日本代表は2012年の世界大会で優勝している)
ワールドゲームズを筆頭に、国別対抗の世界選手権、世界強豪クラブチームによる世界クラブチーム世界選手権、年齢別の世界選手権など、毎年世界各国で国際大会が実施されています。
2012年大会は国別で優勝したことからもわかるように女子はメダルを狙える位置にあります。男子は3~5位くらいでとどまっているのが現状ですね。ワールドゲームズはミックス(男女混合)2013年は銀メダルだったので、優勝が目標です。
日本ワールドゲームズ協会 ホームページ より
“ワールドゲームズとは「第2のオリンピック」ともいわれ、国際的トップアスリートによる総合競技大会です。国際ワールドゲームズ協会(IWGA:International World Games Association)主催、国際オリンピック委員会(IOC)後援で4年に1度、夏季オリンピック競技大会の翌年に開催されます。
国際スポーツ団体総連合(SportAccord)と国際ワールドゲームズ協会(IWGA)加盟競技の中で、オリンピック競技種目に採用されてない種目で、世界の4大陸40カ国以上に協会があり、かつ、3回以上の世界選手権等が行われていることが条件となります。また、ワールドゲームズ競技種目は、オリンピック競技種目との入れ換えも行われています。“
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▼編集後記
世界最高峰のスポーツの祭典オリンピック。その対象競技となるには、ワールドゲームズに参加し、認知を積み上げるという、決して簡単ではない取り組みを継続する必要がある。
一般入社の正社員として、働きながら長年アルティメット業界をけん引してきた藤岡選手。大学のサークル活動、体育の授業でも扱われ始め、少しずつ知名度も上がってきたこの競技が、メジャー競技になる日はそう遠くないかもしれない。
アスリートエールで藤岡選手を応援!