【小さな山旅】日立の大煙突を神峰山から眺める旅に出る…御岩山~神峰山(3)
オピニオン
コラム

石碑の向こう側は景色が開けており、日立の街や海がよく見えた。そして、街の傍らの小さな山に、小さな煙突が煙をもくもくと噴き上げ立っているのが見えた。この煙突こそが、石碑に描かれている「日立の大煙突」の今の姿である。
■日立の大煙突
この「日立の大煙突」は、1914年に日立鉱山が煙害対策に建てた煙突である。日本を代表する工業都市であった日立市。街を発展させてくれた工業ではあるが、どうにも煙は厄介ものだ。ならば、高い煙突を造って、煙害を防いでしまおうではないか。という経緯で造られたのが、155.7mという当時世界一の高さを誇る大煙突であった。
市内のどこからでも見ることができたという大煙突は、たちまち工都・日立市のシンボルになり、新田次郎氏の小説「ある町の高い煙突」のモデルにもなった。
実を言うと、今回の山旅はこの大煙突を眺めるのが最たる目的であった。であるから、御岩山の山頂に達した時点で、時間的都合から「花の百名山」高鈴山と神峰山のどちらかしか登れないという状況において、神峰山を迷わずに選んだ。
そのくせ、筆者は大煙突の存在を何となくしか理解していなかった。その名を聞いたことはあったが、車で通り過ぎる時にちらりと見た程度のもの。大煙突がどういう目的で造られたとか、当時世界一の高さであったとか、それが今では倒壊してしまい1/3ほどの高さになってしまったとか、小説の題材になっていることとか、そのような知識はまるでなかった。
それでも、「大煙突」という言葉の響きに魅せられた。大団円に大辞典、大接戦、大横綱、大リーグ、大観覧車……。そして、三大夜景に、三大美人。”大”という言葉には、心が強く惹かれるようなものが多い。
自宅の本棚を見てみると、コリン・フレッチャーの遊歩大全、水木しげるの妖怪大百科、黒田硫黄の大日本天狗党絵詞、踊る大捜査線のDVD、アクアタイムズの「等身大のラブソング」のCD、大島優子の写真集…などなど、”大”という文字のつく本やらDVDが多いことに気付く。
”大”煙突。それはどれほど魅力的なものなのか。この目で見て確かめたくなり、神峰山まで足を運んだ次第である。
頂上に備え付けられたベンチに座り、ぼんやりと煙突のある風景を眺めながら、ぼんやりと飯を食う。
倒壊して”大”が付くほどの大きさではなくなってしまったが、それでもどこか威厳に満ちた風貌である。石碑に描かれた過去の大煙突と見比べても、威厳という点においては遜色がない。
長年人々に愛されてきた歴史が、世界一の高さという記録の代償に、この威厳を与えてくれたのであろう。
《久米成佳》
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