【小さな山旅】吾国山のプチプチ雪山ハイク …吾国山(2)
オピニオン
コラム

それは、登山家にとって最もハードな部類に入る山行である。
自然との命を削る戦い、それに勝った者だけが見ることのできる荘厳な雪景色。ハイリスク、故にハイリターン。まさに、キング・オブ・トレッキング。初心者ハイカーならば誰しもが憧れ、そして恐れおののく存在である。
茨城県に住む筆者にとって、雪自体が縁遠い存在だ。滅多に積雪のない地域ゆえに、遠出をしなければ雪にすら出会えない。いざ遠出を決心したとしても、初心者では太刀打ちできないリスクが伴う。それほど危険な場所に行くには、それなりの装備も必要だ。「いつかは雪山に」と毎年夏には思うのだが、結局行けた試しがない。
遠出をするだけの時間もなければ、装備を整える金もない。そもそも行ける要素が整わないのだから、行けるはずがない。それでもやっぱりハイキングを趣味にしている身であれば、雪山には登ってみたい。そのような天邪鬼な人には、積雪の少ない茨城県の低山がもってこいなのである。
という訳で、関東地方に雪が積もった1月某日の翌々日に、山に登ろうと決めた。行き先は吾国山である。平地の田畑はうっすらと雪化粧を施し、入山前から雪のある風景を楽しませてくれる。山に登れば登るほど雪は深くなり、ざっくざっくと足を運ぶたびに愉快な音を聞かせてくれる。
踏み跡はほとんどなく、木々に残った風雪のあとが雪国感を演出し、雪に陽の光が反射してのまぶしさも雪山感を強調している。
その光景を見て、吾国山が必死に"雪山感"を表現しているように見えた。(冬だからって、雪山雪山言ってるんじゃねぇよ。低山だってそれなりに雪山っぽくなるんだぜ。だから俺に登ってくれ! 頼む! 頼む…後生だから)痛切な吾国山の叫び声が、登っている最中に聞こえた気がした。
吾国山の願いに応えるべく、筆者は山頂を目指し歩いた。慣れない雪道のせいか、いつもよりも体力の消耗が激しい。雪に足を踏み入れるたびに、雪が靴の中に入り込んでくる。
冷たいよ、吾国山…。どういうことさ、こんなに必死に登ってあげているのに。吾国山に問いかける。(こんなものは序の口さ。本当の雪山はもっと厳しいんだぜ。とやかく言わずに次の一歩を踏み出しな)いつの間にか吾国山の態度が横柄になっていた。
ヘンテコな妄想に浸りながらプチプチ雪山登山をしているうちに、山頂にたどり着く。山頂から見えるのは、一面真っ白な雪景色…のはずもなく、いつもとそう変わらないのどかな里山の風景が広がっていた。
アイゼンも、スノーシューもいらない。普段の登山靴で充分歩ける。ホワイトアウトに遭う危険もなければ、遭難する危険もない。だから、装備も軽いし、お金もかからない。その代わり見られる景色はのどかさあふれる里山の景色。それでも、それなりの感動を得ることができた。
それなりの積雪、それなりの寒さ、それなりの景色にそれなりの感動。それなりのフィールドで得られるものは、すべてが"それなり"かもしれないが、今の筆者にはそれなりで充分なのだ。身分相応の楽しみが、そこにはあった。
《久米成佳》
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