■「早く50歳になりたいね」
実は十数年前に、カズに引退時期について聞いたことがある。返ってきた言葉はこうだった。
「いつかは訪れることだけど、できる限り近づけないようにしたいね」
「永遠のサッカー少年」と「4度目の年男」を絶妙なバランスで共存させる作業も、30歳を越えてから絶えずトライしてきた、現役でいられる時間を伸ばす不断の努力の一環なのだろう。
「48歳だと何だか中途半端で面倒くさいから、50歳と書いていよ。50歳のほうが皆さんも区切りがいいでしょう。早く50歳になりたいね」
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三浦知良(2005年)
長崎戦後の取材エリアにおけるひとコマ。いたずら小僧のような笑顔を浮かべながら取り囲んだメディアを爆笑させた言葉は、まだまだできるという意思表示にも聞こえた。
人間である以上は誰でも老いを迎える。そうした現実から決して逃げることなく、目の前にそびえる高いハードルを乗り越えていく。その過程でサッカーを心から愛し、無我夢中で楽しんでいる姿勢が伝わってくるからこそ、カズはいままでも、そしてこれからも誰からも愛され続ける。