【小さな山旅】見晴らせない見晴台…熊野山(1) | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【小さな山旅】見晴らせない見晴台…熊野山(1)

オピニオン コラム
下小川駅から熊野山へ向かう途中にある平山橋。橋から眺める奥久慈の風景がたまらない。
下小川駅から熊野山へ向かう途中にある平山橋。橋から眺める奥久慈の風景がたまらない。 全 10 枚 拡大写真
新緑の季節、5月。
虫もまだそれほど多くなく、暑さもそれほどでもなく、新しく生まれた木の葉の緑がとても気持ちがいい。そんな季節だから、低山に登るのにはちょうどいい。

近頃、近所の山にばかり登っていたものだから、同じ茨城県内でもちょっと遠出をしたい気分になり、奥久慈地方の山に登ることにした。

目指すは奥久慈・熊野山。知り合いが以前にこの山に登った際に、SNSで「橋」の写真をアップしていた。久慈川をまたぐ、小さな橋(平山橋)。何故だかその橋の写真がとても印象に残っており、この橋を渡りたいがためにこの山を選んだ。

標高は300mほどの小さな山で、イワウチワという野草が有名だとか。相変わらずの少ない予備情報をもとに、国道118号線で大子方面に向かった。

出発地点はJR水郡線・下小川駅。こぢんまりとした可愛らしい田舎駅で、ここに車を駐車して歩き始めた。駅に車を停めるなら電車で来ればよかった。そうすればもっと旅情感が出たのに…と後悔するが、当然時すでに遅しである。

駅から少しばかり歩くと、お目当ての平山橋に出る。なんてことのない小さな橋なのだが、不思議と渡っていると気分がいい。思わず、シャッターを切る回数が多くなる。

それからしばらく続く、田舎道。これが案外長くて、案外急である。いつもなら、うんざりしてしまうところであるが、今回は違う。里山の風景がとても美しく、歩くのを飽きさせない。

自然の美しさはもちろんのこと、そこに住む人々の生活感が家々からダイレクトに伝わってくる。よく整備された広い庭。その庭に長い鎖でつながれた犬。ベランダに干された布団。農作業をする人々。祝日であったため家の玄関には国旗が掲げられ、それとともに小さな鯉のぼり。それらを眺めて歩くだけで、心が穏やかになった。

地図にあった見晴台に行けば、もっと素晴らしい景色が広がっているだろう。そんな期待を抱いて登山道に入る。しかし、歩いても歩いても、周囲を見渡せるほどに視界が開けた場所はない。地図上ではとっくに見晴台に到着してもいい頃なのだが。

そう思った矢先に現れたのが、標高261m地点にある三角点。おかしいなと思い、地図を見返すと見晴台を通り過ぎてしまっていた。

今来た道のりを振り返り、それらしい場所があったかどうかと思い返す。すると、あった。ベンチが不自然に設置されていた場所が。しかし、その場所からの展望はまるでなかった。周囲は木々に囲まれて、見えるはずの盛金富士の姿がやっと見えるかどうか。

「ここが見晴台かな?」とその時友人に尋ねたが、「いや、何も見晴らせないのに見晴台はないでしょ」とあっさりと通り過ぎていたのだ。

見晴台、されど見晴らせない。それでも、(まぁいいか)という気分にさせてくれるのは、春の奥久慈の空気がとても健やかであるからだろう。

《久米成佳》

≪関連記事≫
≫貴重な水着ショットも披露!「もはや高校生には見えない」大人っぽい池江璃花子、沖縄・石垣島の海を満喫

≫ケンブリッジ飛鳥と滝沢カレンが似てる?リオ五輪時から密かに話題だった

≫レアル所属・中井卓大ってどんな選手?…「リアルキャプテン翼」と呼ばれた少年時代

関連ニュース