そんな台詞を受けて、「別にプロくらいなれるし!そんな言うならなったるわ!」と高校卒業後プロとしてやっていくことを決意したという北沢麗奈選手。圧倒的実力差を感じてはじめて、競技をはじめようとしたという理由からも、謙虚な姿勢に潜む負けず嫌いの精神が、北沢選手の実力を日々磨いている。
◆海のない長野県出身のサーファー
---:サーフィンをはじめたきっかけは。
北沢:父と母がサーフィンをしていて、それについていったのがきっかけです。初めは泳ぐこともできず、見ているだけだったのですが、中学1年生の時に初めて25メートル泳げるようになって、そこから水への恐怖心が消え、(サーフィンを)はじめてみたいと思うようになりました。
---:サーフィンの魅力は何ですか?
北沢:多くのスポーツのように固定された地面で行うのではなく、足場が常に変動している海で行うというのが特徴だと思います。自然と一体になることができますし、そこが魅力だと感じています。また、サーフィンをしている人は仲間意識が強く、「サーフィンをしている」という一点で仲良くなれたりするので、そこもいいところだと思っています。技が年々増え続けるのも面白いですね。
---:スポーツをはじめる際の敷居というのはどのくらいの高さなのでしょうか。
北沢:初めはみんな立ち上がるのが難しいと感じるのですが、長いボードからはじめると、安定しやすいのですぐに立ち上がることができます。短いボードは安定しないので、いきなりこのボードからはじめると難しいかもしれません。長いボードからはじめた人は1回で成功したりする人もいるくらいです。このボードを使えばみなさんできると思います。
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---:北沢選手の背景をお伺いします。まずご出身を教えてください。
北沢:長野県出身、在住です。
---:練習はどちらへ行くのですか?
北沢:週に2回程度ですが、新潟や静岡に行ったりしますね。波が少ないときは千葉に行ったりもします。
---:引越しはしないのですか?
北沢:年に何カ国も海外を回っているとあまり日本に帰ってくる時間がなく、それなら家賃などももったいないし、行ける時に好きな海に行って練習した方がいいかな、と考えています。
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---:サーフィンをはじめてからどのくらいになるのでしょうか。
北沢:中学1年生の頃からですね。勝負に向いている性格でもないし、試合に出ようとかまったく思っていなかったのですが、「いつも練習している静岡県で大会がある」ということで父と母が勝手に私をエントリーしてしまったんです。
大会にいざ出てみたら、なんと不戦勝で1回戦勝ち上がってしまって…。その後2回戦で当たった選手が「日本で負け無しのスーパーガール」だったんです。…本当に天と地の差で。試合でも色々な技を繰り出していて、「格好いいな、私もああいう風になりたいな」と思わされたのが、本格的にサーフィンを競技としてやろうと思ったきっかけでした。
---:打ちのめされたのではなく、「次は勝ってやるぞ」に近い気持ちになったわけなんですね。
北沢:そうですね。その時までは練習場所でも自分と同じくらいの年の女の子を見たことがなかったのですが、初めて大会に出場して、自分と同じ年くらいの女の子が活躍をしているのを見て、すごくびっくりして。
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---:いま、その方との親交というのは。
北沢:私も世界をまわって大会に出場しているのですが、一緒にまわったりしています。
---:競技として続けていくというのは覚悟のいることだと思います。
北沢:長野県出身のサーファーとして活動していると、「長野県からはすごい選手も輩出されたことないし、海もないし、プロなんて無理なんじゃないの?」という声も聞こえてきて。
そこから、「別にプロくらいなれるし!そんな言うならなったるわ!」みたいな対抗心が湧いてきたのがきっかけですね。自分でも「プロとしてやっていく」と周りに宣言していくようになると、だんだんと応援してくださる方が増えてきて。そういった方の支えもいまは本当に力になっています。
---:資金面ではそこまで苦労はないということでしょうか?
北沢:スポンサーにはついてくださっているのですが、それでも世界をまわっていくのは大変です。私も一般家庭の育ちですし、プロ選手を育てようとしてきた家庭でもないので、やはり金銭面は厳しいです。父にコーチをしていただいているのですが、父と一緒に移動すると費用も2倍かかってしまいますし…。
---:SNSなど、ネットを介した個人スポンサーの方からの支援というのは。
北沢:そうですね、アスリートエールを見て、個人スポンサーになってくださっている方もいらっしゃるので、大変感謝しています。
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---:ご自身の課題というのは現在どういった部分があるのでしょうか。
北沢:基本的なパワーでしょうか。技術的には結構近づいてきたと感じているのですが、世界で活躍している選手に比べると私は背丈もないし筋力、体重もないので、そういった部分が自分に足りていないと思います。「スプレー」という、ターンをしたときに出る水飛沫のようなものがあるのですけれども、その量が少なかったりするので…。
---:そのしぶきが多い方が加点になる?
北沢:そうですね、点数になります。体重が重いほうが水しぶきがあがるのですが、(例えるなら)石きりがわかりやすいと思います。大きい石だと水しぶきをあげて水を切っていきますが、小さい石で水しぶきをあげようとするためにはその分スピードを出すしかないです。
---:なるほど。スピードでカバーするわけなんですね。
北沢:そうです。ですから、ウェイトを上げるのはもちろんなのですが、スピードを余計にかけたりする技術の部分もなかなか難易度が高い部分だと感じています。
---:小柄な体型ならではの戦法というのはあったりするのですか。
北沢:スピードをつけたりとか、スピンを多めにしたりとか、小回りの効くことがしやすいのはメリットだと思っています。
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---:世界の選手はどうやった形で海外をまわっているんでしょうか。
北沢:インドネシアの選手はスポンサーがすべて準備してくれて、飛行機代も宿代もスポンサーが出してくれるから「自分は現地に出かけて試合をするだけ」といった状況で活動できたりもするんです。日本はまだ競技面でのサーフィンの認知度も低く、なかなかそうは行かず毎年海外遠征には苦労しています。私たちは飛行機代も宿代も、基本的には自分たちでなんとかしなくてはいけないので…。
---:大会の賞金は?
北沢:国や大会によりますが、ジュニアでのアジア大会は優勝しても3万円とかでした。そのままホテル代、チケット代に消える、みたいな(笑)。世界で一番上のランクの大会は、優勝したら100万円くらいもらえるみたいです。
---:ご自身が最終的に獲得したいタイトルというのは。
北沢:世界ランキングで上から17位までの選手しか参加できないワールドツアーという大会があるのですが、そこに出場して優勝するのが目標です。
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