【小さな山旅】雨を引く山…雨引山(2) | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【小さな山旅】雨を引く山…雨引山(2)

オピニオン コラム
雨引山 標高409.3メートル。低いながらも登りがいのある山だった。
雨引山 標高409.3メートル。低いながらも登りがいのある山だった。 全 10 枚 拡大写真
その日の茨城県の天気予報は曇りだった。前日夜から降り続けていた雨は朝方には上がり、午後からの降水確率は20%。午前中は予定があったので、午後から御嶽山経由で雨引山に登ることに決めた。

雨引山(あまびきさん)。弘仁12年の干ばつの際に、本尊である延命観世音菩薩(国指定重要文化財)に雨乞いをしたところ、7日7晩も雨が降り続いたという。それを境に、それまでの呼び名であった「天彦山」から「雨引山」に変わったらしい。要するに、雨引山は「雨を引く山」なのだ。

しかし、いくら雨引山が雨を引く山であったとしても、現代の天気予報学には敵わないようである。降水確率20%とは、簡単に述べればその地域に1ミリ以上の雨が降る可能性が100回に20回あるということ。逆に考えれば、20%の降水確率が100回予報されて80回は降らないということになる。その予報通り、御嶽山山頂までは梅雨空が上空を占有しつつも、雨は降っていなかった。

「雨を引く山」ならぬ、「雨が引く山」か。御嶽山山頂で、ひとりごちた。早朝まで降っていた雨が、筆者の雨引山登山に合わせて見事に引いてくれた。そのように受け取ることもできたからである。

だが、雨引山の雨を引く力はそれほど甘くはなかった。御嶽山から雨引山へ向かう途中、ポツリポツリと雨が落ちてきたのである。

「天気予報のウソつき!」

ドラマなどでよく言う女優のセリフを思わずつぶやく。つぶやきながら近くの大きな木まで走り、木陰で雨宿りをしている最中、想いを寄せる異性と偶然に出会い、そのままふたりで雨が降り止むの待った…というシチュエーションがその先に待っているかと思いきや、そうではない。

ここは山である。周囲は木陰だらけであるし、足元は今朝まで降っていた雨でぬかるんでいて滑る。女優ばりの小走りをしようにも、つるつると滑って転ぶのがオチだ。

そもそも山の中は、木の葉が傘になって雨粒が落ちてこない。レインウエアを着る必要がないくらいだ。雨粒は落ちてこなくとも、雨粒が木の葉に当たる音がパタパタと聞こえる。外を歩いているのに、まるで建物の中にいるような感じ。山の傘に守られながら、しばらくは雨音を楽しみながら歩みを続けた。

そうこうしている内に、雨引山の山頂に着く。東屋で休んでいると、雨足が強くなってきているのがわかった。雨天の登山中にカメラを雨に濡らして壊した経験があったので、下山時にはレインウエアを着込み、そこにカメラをたくしこんだ。

雨のハイキングは、何かと不便が多いことを思い出した。レインウエアを着るととにかく暑いこと。足元がぬかるみ滑ること。靴が汚れること。カメラを雨から守らねばならないこと。撮影しようにも、カメラのレンズが曇ってしまうこと。

だが、不便の反面、雨のハイキングでしか味わえない楽しみもある。木々とその葉が、雨に濡れてより美しく見えること。雨音を聞きながら歩くのが、妙に楽しいこと。

降り始めは不満ばかりをこぼしていた筆者であったが、次第に雨のハイキングが楽しくなり、鼻歌交じりで陽気に下山道を歩いた。

雨引山はやはり「雨を引く山」だった。

《久米成佳》

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