建築関係者に聞いた新国立競技場問題…建築サイドからの分析
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
話を聞いているうちに、建築関係者ならではの問題の捉え方が見えてきた。「建築関係者」とひとくくりにできない、建築関係者の中でもそれぞれの立場があることがわかる。
---:今回の新国立競技場の問題について、意見を聞かせてください。
まずはじめに「建築業界にも複数の立場がある」ということを説明しておきます。もし建築学科の学生が就職するとしたら、おおよそ3パターンあります。ひとつ目は、「アトリエ事務所」に就職すること。ふたつ目は、「設計事務所」に就職すること。そして最後は、いわゆる「ゼネコン」に就職することです。
アトリエ事務所に所属する建築家は、建築の元となるアイディアを出すことに関しては本当に一流で、優れた人々です。設計事務所は具体的な設計を行いますが、施工作業はクライアントが他の企業を選択するという流れになっています。ゼネコンは、設計から施工まで一式に直接引き受ける建設業者です。
ゼネコンは日本特有の建築システムだともいわれています。というのも、昔から日本は、大工さんに依頼して、そこの棟梁が設計から建築まですべてを担当するといった流れで建物が建築されてきた歴史があるので、その名残だということです。
ひと世代前に、ギルド、分業、西欧的な「職の分離体型」が評価されるような流れがあり、設計と施工をいち建設業者がすべて引き受けるゼネコンが批判されたこともありました。しかし、だんだんゼネコンのメリットがクライアントにも浸透してきました。特に「設計の段階で施工者サイドと話ができる」といった点は大きなメリットです。設計側の都合ですべてが進んでしまうことを避けられます。
今回、新国立競技場を建てるにあたって問題が起こってしまった原因のひとつは、「分業体制」にあると私は考えています。先程も申しましたが、アトリエ事務所に所属する建築家は、建築の元となるアイディアを出すことに関しては本当に一流で、優れた人々です。
しかし、お金のことに関しては、詳細までつかむことに長けてはいないのです。設計事務所も具体的な設計図を描くことはとても上手ですが、最終的なお金のことをつかむことはなかなか難しい。特に、今回の「キールアーチ」という特殊な設計を実行するには、施工的配慮が求められます。
今回の新国立競技場の予定地ですが、立地的にも、周りに建築に必要な材料をストックするスペースの余裕もありませんでしたし、仮設工事など前段階の費用が、標準の基準で弾いた計算とは大きく異なるであろうことが予想されました。建築段階ではじめてゼネコンに仕事がまわってきたようですが、予定された予算では建築が不可能だということをおそらくはじめから理解していたのはゼネコンでしょう。
ここで1625億円規模の修正案が、2520億円の予算に跳ね上がったと言われていますが、具体的なお金の計算をするのに長けているゼネコンサイドからすれば、当然の要求だったといえると思います。
《編集部》
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