健康経営ニーズ開拓へ、地方のヘルスケア産業を創出 経済産業省
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この神奈川県の取り組みは、政府も注目している。会議に招聘された経済産業省(以下、経産省)の藤岡雅美氏は、「健康経営推進施策の現状と展望」をテーマに講演を行った。同省では、ヘルスケア産業の創出に向け、需給両面からアプローチを行っている。そのひとつが需要面の健康経営であり、今回の会議にもつながるところだ。また供給面では、地方創生を踏まえたヘルスケア産業の創出を狙っている。
国内では医療費や介護費が伸び、社会的な問題になっていることは周知のとおりだ。藤岡氏は「生活習慣病が医療費の30%を占める。現状では年齢とともに医療費が伸びていく。日々の不摂生から、やがて高齢者が病院の世話になる。いかに病気になる前に予防するか、これが医療費削減につながる」と語る。
未病には2つのポイントがある。1つ目は誰もが利用してくれる健康サービスをつくること。もう1つは健康に金を使う意識を持ってもらうこと。藤岡氏は1つの事例として糖尿病を挙げ、「地域医療では通院が3日坊主になってしまう。しかし糖尿病が悪化し、透析になると医療費が跳ね上がる。健康サービスによって通院を持続させるインフラが必要だ。そのために、ある程度はエンターテインメント的な要素も求められる」と述べた。
地域では包括的ケアがなければ医療が成立しない。経産省では、これを健康サービスで補完し、健康コンテンツと連携することで、新しい地域産業を創生したい意向だ。ほかの政策として、同省内でメディカルユニットを立ち上げ、医療・健康への対策を練っている。「社会システムをいかに現状に再適用させるかという点が重要。高齢者が増えるなか、生涯現役として社会活動に参画することが病気の予防につながる。そういった社会設計が今後の課題だ」(藤岡氏)。
同省では、この課題を「次世代ヘルスケア産業協議会」にて推進中だ。ユニークな点は、経産省と厚労省(厚生労働省)がタッグを組み、ヘルスケア分野の課題に切り込んでいること。この協議会では、需給両面から対応し、医療・介護・地方創生という3つのアクションプランをまとめている。医療分野では、医療費の伸びを抑え、需要側で健康に投資してもらう。そのキーワードとなるのが「健康経営」だ。
健康経営は、健康管理を経営的な視点から戦略的に実現すること。従来まで社員の健康は安全衛生法上で最低限守るべきものだった。「しかし、人的資本に対する積極的な投資を行うことで、組織が活性化し、業績も向上する。副次効果で医療費や保険料も削減される。これは経営者にも従業員にもメリットになる。特に大企業では、株価の上昇がインセンティブとして現れる」(藤岡氏)。
実際に経産省では今年3月、健康経営に積極的に取り組む企業を評価するために、東京証券取引所と共同で「健康経営銘柄」を22業種22社ほど選定した。この銘柄に選ばれた企業の平均株価はTOPIXを上回る水準で推移し、高い評価を得ており、経団連など経済界主体の取り組みも出てきた。
一方、中小企業では株価はあまり関係ないが、資金が調達しやすくなり、人材も取りやすくなるメリットもある。「今年は中小企業まで含め、ボトムアップで取り組みたい。健康経営ハンドブックでノウハウを共有し、具体的に何をすべきか、指導と助言を行う健康経営アドバイザー制度を創設する。同時に健康保険事業を強化し、健康経営の優良企業にインセンティブを付与することも考えている」(藤岡氏)。
健康経営アドバイザー制度では、コストをかけずに、健康経営に取り組めるよう普及・啓発活動を進め、メリットを訴求する方針だ。新しい資金調達として「ソーシャル・インパクト・ボンド」のような方法も考えられる。これは予防的施策により、社会的コストを削減する事業に対し、数値化した成果に応じた報酬を民間企業経由で支払う仕組みだ。ニューヨーク市などが取り組んでおり、こういったスキームも整備するという。
健康経営ニーズを開拓し、地方のヘルスケア産業を創出……経済産業省
《井上猛雄》
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