スポーツは続く。一喜一憂しない。朝日健太郎さん…連載 五輪への提言 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

スポーツは続く。一喜一憂しない。朝日健太郎さん…連載 五輪への提言

スポーツ 選手
朝日健太郎さん
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朝日健太郎氏。バレーボール日本代表。ビーチバレーボールで北京、ロンドンの五輪出場と、現役時代は日本人として未踏のレベルで世界と戦った。

朝日さんに五輪を改めて振り返ってもらった。バレーボールからビーチバレーへ転向したタイミングがターンングポイントだったという。30歳で迎えた転機、どのような心境の変化があったのだろうか。

---:バレーボールは20代まで、30歳くらいのタイミングで心境の変化があったと。

朝日:そうですね、心境の変化は30歳前後と記憶しています。本当に自分がやりたいことと、やるべきことが合致し出したのが30歳くらい。為末くんも書かれていましたが(朝日氏はこの直前に為末大氏の文章に目を通していた)、スポーツって「教育」的な側面を持った状態で取り組むと、義務的な要素が発生してしまうのですね。なので本当に自分の欲求に合致しない。

簡単にいうと「やらされている」スポーツになっていく。例えば目標が「甲子園」というのも、なんとなく高校で野球やっていたら、目標が甲子園になっているという。言ってみれば、社会の空気感があって、知らず知らずのうちに「洗脳」のような形で目標設定されてしまう。でも、もしかしたら、甲子園出場よりも150mのホームランを打つことが本当に自分がやりたいことかもしれないわけですよね。極端な例ですけれど。

自分を振り返ると、オリンピックはもちろん強い記憶として残っていますけれど、それよりもオリンピックに向けた1年半。あの半年間、海外をはいつくばって回って。そっちの記憶の方が僕の中には強く残っています。

---:オリンピック出場された最中の心情というのはどのようなものでしたか。

朝日:「お祭り気分」ですよ。僕らについては、オリンピックで結果を出すこと、メダルを獲得する準備というのはしていないので(朝日氏は北京五輪で日本男子ビーチバレー史上初の勝利をあげた。北京五輪では9位だった)。こんな言い方変ですけれど、オリンピックの舞台に立てた時点で成功という。さすがにオリンピックでメダルを獲得するまでの準備をシミュレーションするまでにはありませんでした。だから負けても全然悲観することなく「すごいやったねー」みたいな。

---:日本人としては未踏のレベルに足を踏み入れた瞬間でした。

朝日:そうですね、ですからノープレッシャーでしたよ。僕は北京とロンドン五輪に出ていますが、ただひとつ覚えているのは、北京の開会式スタジアムで、日本の選手団としてトラックを行進するわけですが、あのときの記憶は強烈でした。「うわっ、ココが!」と。そのとき初めて、本当に五輪に来たのだなというリアルに感じた瞬間でした。試合とかよりも強烈に。オリンピックにでてよかったなと思いましたね。あとはそれに付随するものであって。ロンドンのときは2回目でしたので、北京に比べると余裕はありました。

---:バレーボールの代表選手から、ビーチバレーで北京、ロンドンと五輪に出場しているという実績を振り返るに、トップアスリートとして息が長く、緊張感の維持という面ではどのような取り組みをされていましたか。

朝日:あまり入れ込む方ではないのですね。長く続かない原因を考えたときに、息が詰まるとか、やる気が下がるとか、もちろんスポーツなのでケガをするとかいろいろな要因がありますよね。物理的なところではまず体が強かったというのがひとつ、あとは勝った負けた、成績出る出ないというとことに一喜一憂していなかったというのはあります。そこはやはり競技者として自分の納得すること、満足することを追い求めていっているので。

「スポーツは続く」という言葉を見聞きしました。これは勝っても負けても、また試合ができるという。この言葉がとても腹落ちしましたよね。勝って嬉しい、負けて悔しい、それでもスポーツは続くという。スポーツというのはレベルはどうあれ、練習ができて試合ができて、やり直せるという。

---:朝日さんの考えでは、アスリートのプロとアマチュアの線引きというのはされているのでしょうか。

朝日:スポーツは続く、という観点では、プロもアマも関係ないですね。プロの競技者としてやるべきことはアマチュアに比べればボリューム的には増えると思いますが、根本はあまり変わらなくて、引退した今も、根本のやり方とかはあまり変わらないですね。いまスポーツをやっていないので試合はしていないのですが、いろいろなものにトライして、ある程度結果、評価はでるわけですが、あまり気にならない。それよりも常に何かにトライしていくという姿勢ですね。

---:朝日さんにとってはバレーボールという競技はどんなものなのでしょうか。

朝日:人生だ、命だと言ってしまうと重いものになってしまうのですが、前向きに何かに頑張る、日々やりがい、生き生きといられる。そのためのツールがバレーボールでしたので、メインは日々生き生きいられるか、ということで、たまたまバレーボールがフィットしたということですね。そう考えても、オリンピックにいくために生きているということではないのですよね。

《土屋篤司》

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