ジャパンカップの観戦方法は大きくふたつに分類される。勝負所となる古賀志林道の上り坂やゴール地点などココと決めた場所で観戦する「定点派」と、気分や状況に応じて場所を変えながら観戦する「移動派」だ。
古くからジャパンカップ観戦に訪れているぼくの友人には「定点派」が多い。いつも決まった場所にいるため、特に約束をしていなくてもそこに行けば毎年会える。ジャパンカップでしか会えない遠方に住む友人もいて、「久しぶり」の挨拶とともにお互いの近況報告をしながら選手を待つ。
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古賀志林道のヘアピン。各チームの応援団が並ぶ
ぼくは昔から移動派だった。スタートを観たら古賀志山の山岳ポイントを目指し、途中で定点派の友人を見つけては立ち止まる。レースが5周目に入ったころに山岳ポイントにたどり着く。かつて観客として来た時は、毎年山岳ポイントに満足したら来た道を戻り鶴カントリークラブの上りを目指していた。
ジャパンカップを取材するようになり、報道陣向けプレスカーでの移動が可能になった。選手たちが走り去ったあとにやってくるプレスカーに手を挙げて、席が空いていたら乗せてもらう。そして希望するコース上で下ろしてもらう。今年は山岳ポイントでプレスカーに乗車した。
コンビニが角にある田野の交差点で下ろしてもらった。そこから少しコースを逆に歩き、適当な場所で選手たちが来るのを待つ。選手が猛スピードで駆け抜けていくド平坦の場所だ。色鮮やかなジャージがひとつになって迫ってくると、集団のスピード感を肌で感じることができる。
集団を見送ったらゴール方向へ歩く。田野の交差点を曲がって間もなく小さな上りがある。高台からコースを見下ろす形になるので選手たちが来る様子もよく分かり、連続するカーブでスピードが落ちているためお気に入りの選手も見つけやすい。
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田野の交差点を越えるとアップダウンが始まる
どの観戦場所でも2、3周は腰を落ち着け、次に移動する。ゴール地点に着いたころには、レースも残り4周になっていた。スタート&ゴール地点周辺から古賀志山の山岳ポイントにかけては観客も多く、移動するのが困難な場合がある。しかし、それ以外はどこでもゆったりと観戦ができる。
ジャパンカップは例年レース展開にさほど変化がない。スタート間もなく日本人選手を中心に何人かの逃げ集団が形勢され、後続のメイン集団に数分差をつけてしばらく落ち着いた状況が続くことが多い。そしてゴールまで残り数周となると逃げがつかまり、脚をためていた有力選手がカウンターアタックを仕掛け、一気にレースが活性化する。
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萩手前の平坦区間
展開に変化が少ないことを利用してレースの先を読み、観戦ポイントを変えながら観てみると「いつもと違うジャパンカップ」を感じられる。2015年は大会直前の台風18号の影響でコースの一部が被害を受け、例年は1周14.1kmのコースを利用するところを通常ラスト1周のみで使用される10.3kmのショートカットコースを14周する大会となった。
鶴カントリークラブの上りを通らなくなり、そのおかげでこれまでスルーしていた地点で観戦する時間を作ることができた。同じジャパンカップであっても、平坦、丘、山と観る場所が変わると印象も変わる。定点派の人も来年は「いつもと違う場所」で観戦してみると、新しいジャパンカップの魅力を発見できるかも。