「正直、入ったと思ったので。歴史に残るスーパーゴールになるのかなと」
浦和レッズのホーム、埼玉スタジアムで11月28日に行われたJリーグチャンピオンシップ準決勝。1対1のまま両者ともに譲らず、PK戦突入の気配も漂ってきた延長後半13分だった。
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遠藤保仁
自陣でボールをもったDF丹羽大輝が、FWズラタンの執拗なチェックを受ける。味方のフォローもない状況で、丹羽は仕方なくGK東口順昭へのバックパスを選択する。
もっとも、セオリーならばピッチ上に転がすはずのバックパスが、東口の頭上を越える軌道を描いていくではなか。必死に背走し、空中で必死に伸ばされた東口の右足をボールがかすめていく。
まさかのオウンゴールで死闘に決着がつくのか。数秒間の刹那にガンバの選手たちは最悪の結果を覚悟し、レッズの選手たちは天からの贈り物に心を躍らせはじめる。
ほんの一瞬ながら、両チームともに動きが止まる。もちろん遠藤も状況を見入っていたひとりだった。
「運があるのかどうかわからないですけど、実際にあれから始まっているし、あの瞬間に完全にフリーとなった選手が出てきてもいた。何とも言えないですけど、やはり運にも助けられていたんですかね」
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ボールが左ポストに弾かれた瞬間に、ズラタンをはじめとするレッズの選手たちは思わず天を仰いだ。ひるがえって、ガンバはどうだったか。ほんのわずかながらつま先にかすらせ、ボールの軌道を変えていた東口のスイッチは、すでに攻撃へ切り替えられていた。
目の前に転がるボールを追いながら、右タッチライン際でフリーとなっていたDFオ・ジェソクへ素早くパスを通す。このとき、遠藤はゴールへの青写真を描いていた。
「(オ・ジェソクから)パスが来る前の時点で、ダイレクトで前へというのは頭に入っていました。僕がボールをもらう前にパト(FWパトリック)の位置も確認していましたし、パトも上手く感じてくれた。あれば最良の策だったのかなと」
【MF遠藤保仁が稀代のプレーメーカーと呼ばれるゆえん 続く】