この会議の初日第一部となる説明会、そこでは国土交通省の奥田秀樹さんが「自転車施策の取り組み」について解説。その中で自転車の通行空間整備について、これまでは歩道を歩行者用と自転車用に視覚的に分離した自転車歩行者道が優先され、結果多くを占める事実が示されました。
■自転車対歩行者の事故が横ばい
ただ、この歩道上での分離は実効性に乏しく、歩行者にしろ自転車にしろ通行区分を守らない例が大半を占めるのは、僕にかぎらず多くの人が実感していることでしょう。何より自転車事故の総数が減っているなかで自転車対歩行者の事故が横ばいという事実は、歩道上での分離が対歩行者の事故抑止に寄与していないことの証左です。
やはり自転車は車道左端の通行という原則を踏まえつつ、歩道は歩行者のものであり、その安全が自転車によって脅かされてはならない…。この当たり前のことを基本に据えるべきで、もちろん奥田さんの話もこの考えに沿ったものでした。
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自転車対歩行者の事故は横ばい(警察庁資料より)
縁石などで構造分離された自転車専用空間である自転車道。これは昨年時点でも全国の総延長が500km余りと、道路の総延長127万3000kmの、わずか0.04%にすぎません。
そのためさまざまな制約により自転車道の整備ができないところでは自転車専用通行帯(交通規制により指定された、自転車が専用で通行する車両通行帯。自転車と自動車を視覚的に分離)を設置し、道路幅員が限られてそれもかなわないところでは、自転車の通行空間を明示する路肩のカラー化や矢羽根、ピクトグラムを設置(一括して車道混在と呼称)。
今はこれらの整備に重点が置かれ、自転車専用通行帯は2012年に257kmだったものが2015年には415km、車道混在は119kmだったものが844kmと、近年においては目立った増加を見せています。
一方で前述した歩行者用と自転車用に視覚的に分離した自転車歩行者道は1446kmmだったものが1736kmと、増加しているとはいえ伸びは鈍っています。さらに2012年に国土交通省が定めた「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」では、自転車道が整備できない場合の暫定形態として自転車歩行者道を示していましたが、改正ガイドライン(案)では自転車専用通行帯と車道混在を提示。ここでも自転車は歩道から車道へという流れが明確となっています。
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自転車道と自転車専用通行帯、車道混在のイメージ
とはいえ自転車専用通行帯や車道混在、特に車道混在を免罪符のように使われては困ります。これまでの道路行政は自動車をいかにスムーズに通行させるかを第一義とし、自動車の通行空間を確保することが優先されてきました。
今後は現状の通行空間の配分を金科玉条とするのではなく、たとえば片側3車線であれば左端の車線を自転車専用あるいは路線バスと共用にするぐらいの思い切った施策が必要となるでしょうし、自動車の速度制限も強化すべきでしょう。