「もっと自分に対して強ければ」
「もっと意志の強い人間であれば」
もっといい成績、もっと思い通りのことになると思っているからこそ、出る言葉だと思う。
ただ、ちょっと待ってほしい。そんなに「自分」という人間はクソなのかということだ。
例えば、「自分に負けてしまった」という言葉だ。自分が自分に負けるとはどういう意味なんだろうか。負けたということは、誰かが勝ったということだ。自分が自分に負けたということは、負けた自分と勝った自分が、自分のなかに存在するということになる。
私たちが、「自分に克つ」とか「自分に甘い」とか、メンタル的な言葉を発するとき、必ずと言っていいほど「自分」という人間は弱くて、甘くて、怠惰で、もうどうしようもない人間だと見なしている。
ポジティブシンキングと言っている割に、「頑張れ」とか「まだ行ける!」とか、自分に言えば言うほど、自分を信用してないことにならないだろうか。自分を叱咤激励しないと、自分というやつは怠けるんです、堕ちるところまで堕ちるんです。そういう意味にならないだろうか。
究極のポジティブシンキング、つまり自分自身を信じている状態というのは、「自分自身に対して何も叱咤激励しないこと」なんじゃないかと思う。
この前、ダイエットができないという女性がいた。スポーツジムの会員になり、行けばいいのに、行かない。走れば痩せるのに走らない。本当に自分は自分に甘い人間だと、自分自身に嘆いていた。
ただ、話を聞いているうちに、その女性は「自分が太っていることで、いわゆるデブキャラとして職場の雰囲気が良くなり、自分自身の体型より職場の雰囲気が大事にするから、痩せようとしない」ということが判明した。
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その人にとって自分が痩せることよりも、雰囲気の良い職場で働くことのほうが大事だったのだ。
つまり、自分が自分の希望を叶えるために、痩せなかったのであって、「自分に甘い」というのは関係がなかったということ。むしろどんな叱咤激励にも耐え、自分を貫いたのだから、むしろ「自分に強い」と言える。
彼女が抱えている解決すべき問題は、職場の雰囲気を保ちながらいかに痩せるかであり、体型以外で職場の雰囲気を保つ方法であり、ただ痩せたら彼女のためにならないことは、彼女「自身」が知っている。ただ、自分自身への理解が足りなかったことが、このダイエット問題の起因だ。
私たちは、意志の力で何とかなると思い込んでいる。そうかもしれないが、そうじゃないかもしれない。もし、「何度言っても自分は動かない、動いてくれない」ということがあれば、逆に考えてみてほしい。「何度言っても貫きたい自分がいる」と。その自分は何かと。
自分は、本当にしたいことをしている可能性が高い。どんな自己批判にも耐えてそれを貫き通していること自体、「意志が強い」のだ。その理由、その目的を、私たちは知るべきだと思う。
自分に強くならなくていい。自分が何をしたいのか知るべきだ。言うほど、人間は弱くないし、したいことをしているんだと思う。それを理解してあげること。
自己否定したところで何も始まらない。死にたくなるだけだ。自分に叱咤激励する必要はあるのか、なぜ叱咤激励しないとしないのか、そもそもしたくないからなんじゃないか。
そう考えたほうが、自分の抱える問題はもっと楽に発見でき、解決できるんじゃないかと思う。