大日方さんは3歳で交通事故により右足を切断、左足にも重度の障害を負った。高校2年生でチェアスキーを始める。現在は(株)電通パブリックリレーションズで、「オリンピック・パラリンピック部」に在籍。日本パラリンピック委員会運営委員、日本パラリンピアンズ協会副会長も務めている。
その1:アスリートのキャリアと"戦略力"
その2:「自分じゃなきゃできないこと」を追い求めて
その3:オリンピックの「レガシー」とは?
大日方邦子さん
■オリンピック、パラリンピックでの日本の強み
---:「スポーツ文化の醸成」にあたって、モデルケースのような例はあるのでしょうか?
大日方:ひとつは、ドイツですよね。それぞれの地域でスポーツ文化が根付いていて、ちょっと話を聞く機会がありましたが、よくぞこんな手厚い形が100年も続いているな、と感じました。「100年かけてこの形を作った」というわけですから、醸成された社会システムです。
ただ、ドイツと同じ形に日本がなるかといえば、それはなかなか難しいかもしれません。また、よくモデルとして言われているのはロンドンのパラリンピック。成功したと言われていますね。
でも結局、まったく同じようにはいかないので、「ジャパン・モデル」を作り上げていかなくてはなりません。
---:「ジャパン・モデル」の形成にあたって、「ここは日本の強みだ」と感じるポイントはあるのですか?
大日方:日本人はお祭りが大好きなので、オリンピックに対する関心も非常に高い。ここはすごくいいことだと思います。
---:オリンピックが盛り上がらない国もありますか?
大日方:開催都市に行けば盛り上がっているところばかりが目に入るものですが、それでもあんなにオリンピック一色の報道で埋め尽くされるのも日本くらいだと思います。お祭り好きというのは追い風になる。ただ、2020年まではですが。
大事なのはその先であって、「スポーツがどのように、より多くの人が幸せを感じる社会になるように貢献できるのか」という視点だと思っているんですね。スポーツ嫌いな人は大勢います。
そういう人たちも巻き込みながら、スポーツをすることの社会的意義、価値を感じてもらったり、あるいは応援することを、面白いと思ってもらったり。これらを伝えていくのは、スポーツが好きで、スポーツを通じて成長させてもらった我々の義務だと思っています。
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