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【THE REAL】ガンバ大阪・今野泰幸が実践する哲学…センターバックに抱いたトラウマを乗り越えて

オピニオン コラム
今野泰幸 参考画像(2014年6月9日)
今野泰幸 参考画像(2014年6月9日) 全 5 枚 拡大写真
転機は2009年シーズンの序盤。ポゼッションサッカーを志向する当時の城福浩監督が、攻撃の起点を兼ねられるセンターバックとして今野を指名した。城福監督の今野評を再現するとこうなる。

「ボールがあるところの守備の上手さで、今野を上回るセンターバックはJリーグにはいない。そして、ただ単に相手ボールをクリアさえしていればいい、というレベルでは納得しない監督であることも、今野は理解しているので」

■センターバックのプレッシャー

2010年夏に発足したザックジャパンでも、今野は岡田ジャパンから継続して招集される。イタリア人のアルベルト・ザッケローニ監督も、今野のボール奪取術とフィードの上手さを評価。ボランチではなくセンターバックで、吉田麻也と不動のコンビを組ませた。


吉田麻也(右)と今野

しかし、アジアでの戦いはともかく、世界の強豪と対峙するうえでは178cm、73kgのサイズはハンデになった。183cmの森重真人が台頭してきた2013年秋には、こんな言葉を残してもいる。

「森重は呼ばれるべくして呼ばれたと思う。高さも強さも巧さもある選手なので」

迎えた2014年。自身2度目のワールドカップとなったブラジル大会が迫るにつれて、センターバックを務める自分への不安がプレッシャーへと変わり、ガンバでのプレーにも大きな影を落とす。

ブラジル大会で中断するまでの14試合でスタメン落ちする試合もあれば、キックオフからわずか37分でベンチへ下げられた試合もある。今野自身も「あのころがどん底でした」と振り返ったことがある。

肝心のブラジル大会もグループリーグで敗退。コロンビア代表との最終戦では不用意なファウルからPKを献上するなど、自身の信条に反するプレーを露呈してしまう。試合後にはこんな言葉を漏らしている。

「次の代表は考えられない。もう一生、先へ進める気がしない」

傷心のまま帰国した日本。しかし、ガンバには原点に立ち戻れるポジションがあった。代表でのセンターバックから一転、ボランチとしてプレーする日々。今野はいつしか長く、暗いトンネルを抜け出したと実感する。

■楽しくてしかたがない

中断明けの20試合で15勝3分け2敗の快進撃を刻み、リーグ戦にナビスコカップ、天皇杯を合わせた国内三冠を独占した過程を、今野はこんな言葉で振り返ったことがある。

「僕のところにどんどん攻めてこい、それでも何もやらせない、逆にボールを奪ってやると。負ける気がしない、と念じながらプレーするのが僕のいいところだし、後半戦は自分本来の姿を出せたと思う。ボランチでプレーしていて、いまは楽しくてしかたがない」

「チームに生かされているし、僕自身、何かをつかんだ気がする。何か起きたときにはセンターバックをやると思うけど、基本的にはボランチで勝負していきたい。得点やアシストが増えれば、もうひとつ上のレベルへいける。僕を守備だけの選手と思っている人がたくさんいると思うので、そういう人たちを見返していきたい」

そして、2016年シーズンの初陣となったサンフレッチェ戦を前に、今野の言う「何か」が発生した。岩下敬輔、西野貴治とセンターバック陣に故障者が相次いだ事態に、長谷川監督はボランチとしての能力を高く評価していた今野の配置転換を決断する。

期間限定のコンバートなのか。あるいは、シーズンを通じてセンターバックで固定されるのか。指揮官が思い描く青写真はわからないが、サンフレッチェ戦に限れば、自分自身に及第点は与えられない。

「寿人さんに決められた1失点目に代表されるような、細かなポジショニングのミスがまだまだたくさんある。そういう課題を修正しながら戦っていくことが、長いシーズンでは求められる。結果が結果なのでもちろん悔しいけど、ここから巻き返していかないと。まだまだこれからです」



サンフレッチェ戦後の取材エリア。努めてポジティブに捲土重来を期す今野の姿からは、かつてセンターバックに対して抱いていたネガティブな思いは伝わってこない。

休む間もなく24日には敵地・韓国で水原三星とのACLグループリーグ初戦に臨み、28日には新本拠地・市立吹田サッカースタジアムに鹿島アントラーズを迎えた、ファーストステージ開幕戦が待っている。

日本代表戦でJ1が中断されるまで、24日からの25日間でACLを含めた7試合を戦う過密日程。けが人の状況を考慮すれば、決して低くはない確率で今野が再びセンターバックとして指名されるだろう。

プロ人生で常にテーマにすえ、これから先も追い求めていく「いい選手」になるために。長谷川監督が求める守備の安定をガンバにもたらす意味でも、たった一度の敗戦で下を向いている時間はない。
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《藤江直人》

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