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【THE REAL】なでしこジャパンはなぜ輝きを失ったのか…マンネリ化を招いた危機感の欠如

オピニオン コラム
なでしこジャパン 参考画像(2016年3月2日)
なでしこジャパン 参考画像(2016年3月2日) 全 5 枚 拡大写真
■不足する実戦

なでしこを取り巻く状況に対する危機感を、選手たちも覚えていたのだろう。銀メダルを携え、カナダから凱旋帰国した昨年7月7日。記者会見の席で、宮間は切実なる思いを明かしている。

「ワールドカップへ向けて数は少なくても充実した合宿、試合に臨めた。それとは裏腹に、もう少し試合をこなせていたらまた違った経験ができて、新たな力になったと思う」

カナダ大会までの軌跡に対する選手たちの総意を代弁するとともに、カナダ大会以降の強化スケジュールの見直しを暗に訴えた。キャプテンの意を決した行動も、残念ながら日本サッカー協会には届かなかった。

フルメンバーで国際親善試合に臨めたのは、1‐3で敗れた昨年11月下旬のオランダ女子代表戦だけ。ヨーロッパにまで遠征し、2試合を組める余裕があったにもかかわらず、カナダ大会前から内定していた1試合だけにとどまった。

実戦の機会が少なすぎると批判されていた男子のU‐23日本代表ですら、昨年12月の中東遠征で2試合を実施。アジア最終予選が開催されたカタールに入った後も、2試合の国際親善試合を組んでいる。


キンチョウスタジアムでサポーターに一礼する選手たち

翻ってなでしこの準備期間は、量と質のすべての面であまりにも不足していた。事前合宿には若手選手を多く招集していた佐々木監督としても、最終的には新戦力をFW横山久美(AC長野パルセイロ・レディース)とGK山下杏也加(日テレ・ベレーザ)の2選手にとどめざるを得ないと判断したのだろう。

その意味で、日本サッカー協会のバックアップ体勢は万全だったのか。アジア最終予選の大阪開催こそ誘致したが、空席が目立ったキンチョウスタジアムのスタンドを見る限りは、地の利を生かすための動員作戦が展開されていたとは言い難い。

振り返ってみると、ロンドン五輪出場をかけたアジア最終予選も、2011年9月に今回と同じ短期決戦で中国において開催された。首位で五輪への切符を手にしたなでしこだが、オーストラリア、韓国、中国からあげた白星はすべて1点差の辛勝であり、北朝鮮とは引き分けている。

女子ワールドカップ・カナダ大会出場をかけた2014年6月の女子アジアカップでも、なでしこは優勝こそしたものの、中国との準決勝、オーストラリアとの決勝はともに1点差。後者とはグループリーグでも顔を合わせていて、2点のビハインドから何とかドローにもち込んでいる。

■「冬の時代」だけは避けなければいけない

アジアのライバル勢のレベルが確実に上がり、肉迫されている現状を、日本サッカー協会を含めた全体で共有していたのだろうか。今回の予選へ向けてもオーストラリアは1カ月におよぶ徹底強化を図ってきたし、2位で出場権を獲得した中国は国際親善試合で女王アメリカの胸を借りている。

日本サッカー協会が危機感を募らせ、中長期的な強化の青写真をしっかりと描けていたのならば――。チーム内の「マンネリ化」を防ぐ意味でも、ロンドン五輪の直後を含めて、然るべきタイミングで佐々木監督を勇退させる決断を下せていたのではないだろうか。

なでしこの強化を現場任せ、さらに言えば栄光を極めた選手任せにしてきたツケが、五輪出場を3大会連続で途切れさせる最悪の結果を招いた。アジアにおける神通力をも失ったいま、かつて男子が味わわされた「冬の時代」に足を踏み入れる事態だけは避けなければいけない。

次の大舞台となる2019年の女子ワールドカップ・フランス大会まで、3年もの時間が空く。なでしこの再建に困難を伴うような事態が生じれば、女子サッカー界全体の地盤沈下をも招きかねない。その場合には、予選免除で出場できる2020年の東京五輪にもネガティブな影響をもたらす。

韓国と引き分け、自力による出場権獲得が消滅した直後。宮間をはじめとする選手たちは、いまにもこぼれ落ちそうな涙を必死にこらえ、小さな背中にすべての責任を抱え込みながらサポーターたちに頭をさげていた。あまりに痛々しい彼女たちの姿に、後味の悪さを覚えずにはいられなかった。


深く頭をさげる宮間あや

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《藤江直人》

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