アデレード・フリンジの歴史…南オーストラリア州がフェスティバル州と名前を確立できた秘密 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

アデレード・フリンジの歴史…南オーストラリア州がフェスティバル州と名前を確立できた秘密

オピニオン コラム
スピリット・フェスティバルでの民族舞踊
スピリット・フェスティバルでの民族舞踊 全 36 枚 拡大写真
オーストラリア大陸の南側に位置する南オーストラリア州。ここでは毎年1月に開催される自転車ロードレースの「ツアー・ダウンアンダー」で新年がスタートし、その後は各地で開催されるフェスティバルで街がにぎやかになります。

特に2月~3月半ばまでにかけて行われるふたつのフェスティバル「アデレード・フリンジ」と「Womadelaide」はオーストラリアでも有名なイベント。このふたつの特徴を交えながら南オーストラリア州がフェスティバル州としてなぜ確立できたのか、また多くの人にフェスティバルが愛されている魅力を探ってみます。

今回はアデレード・フリンジに注目。まず「フリンジ」とは何か、歴史をひも解いてみましょう。フリンジというフェスティバルは1940年に英国でスタートしたと言われています。このフリンジのいいところは、アマチュア・プロ問わずにさまざまなアーティストが発表できること。

現在は、米国・欧州各国・カナダ・オーストラリア・ニュージーランド・アフリカなどで開催されています。南半球ではアデレード・フリンジが一番大きなイベント。他州でもフリンジは行われているのになぜ南オーストラリア州のイベントがここまで大きなフェスティバルとして成功を遂げたのか、色々な秘密があるようです。

●その1 コンパクトな街のサイズ
南オーストラリア州はヒルズと海に囲まれた州、州都アデレードを中心にイベントが開催されます。市内から空港までも車で約15分、ビーチもヒルズもいずれも30分圏内で移動できてしまうコンパクトさ。人が集まりやすい理由にもなっています。

●その2 観たい劇場だけのチケットを購入する仕組み
フリンジ期間中はアデレード中心部にイベント会場が終結。イベント会場への入場は無料で劇場それぞれにチケットを買う仕組みになっています。今年のチケット販売数は60万枚、州民のふたりにひとりがチケットを買った数字です。「大都会に比べるとチケットが安いのが魅力」と他州のフリンジに行った友人は話してくれました。

●その3 行政などを巻き込んでのイベント
アデレード・フリンジは1960年にスタート、当時はローカル・アーティストの発表の場だったそうです。その後、参加アーティストが少しずつ増え、1975年に州のバックアップにより南オーストラリア州独自のカルチャーを伝える場として大きく変化していくことになります。

1988年に海外アーティストを呼ぶことでボーダーレスなアーティストイベントに発展。2012年には約4億円、2014年には約7億円もの経済効果をもたらしました。スタートから56年目を迎え、今年は開催期間の1カ月間で1100のイベントが行われ、参加アーティストは5000人にもなります。

●その4 参加者も観客もボーダーレス
アーティストは幅広く参加していることから、観客は年齢も性別もボーダーレス。今年はさらに大きくなったイベントのひとつとして、アボリジニコミュニティーのスピリット・フェスティバルが同時期に開催されました。

これはオーストラリア・アボリジナル・カルチャー協会によるもので、アボリジニのカルチャーや歴史を披露。ワークショップで注目を浴びたのはindigiearthブランドによる調味料の試食会です。アボリジニにより設立されたこのブランドは、子どもの頃から食べているブッシュ・フードの体験をもとに食の原点に戻ることを目的に作られているもの。イベントブースには香辛料の香りが漂います。

「私たちが小さい頃から食べなれているナチュラルハーブなどを手軽に使えるようにしたもの。人間の身体と自然との調和を戻したい」

製品への想いを語ってくれたのは、indigiearthディレクターのシャロン氏。使ったハーブをそのまま観客にプレゼントする場面もありました。これらのイベントはアボリジニとオーストラリア人の間にあった距離を確実に縮めています。

他にも民族舞踊や手芸、また自然のハーブのワークショップなど、人工的に作られたものを使っている私たち現代人に自然に戻るためのノウハウを伝えてくれた時間となりました。

●その4 ワインとのコラボレーション
イベントで目に付くのがワインバー。フェスティバルではワイナリーがスポンサーとなってイベントを盛り上げます。ワインを楽しむという理由でフェスティバルに来る人も多いようです。

コンパクトサイズな街に多くの人が集まり、また色々なものとコラボレーションしたイベントにすることでさらに人が集まる、それが今のフェスティバル州として確立できた理由なのでしょう。

《Australia photographer Asami SAKURA》

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