4月12日に都内で開催された、JALが、日本ウィルチェアーラグビー連盟(JWRF)とオフィシャルパートナー契約締結した際の記者会見においてだ。
ウィルチェアーラグビーは、四肢麻痺者がチームスポーツを行う機会を得るために1977年カナダで考案され、欧米では広く普及している国際的なスポーツ。2000年シドニーパラリンピックから公式種目になっている。
ウィルチェアーラグビー日本代表チームは、2015年に初のアジア・オセアニアチャンピオンの座に輝くなど、現在世界ランキング3位とメダル獲得の可能性が高い団体競技として注目を集めている。
池崎選手は、競技をするための条件について初めに口にした。「全ての人がウィルチェアーラグビーをできるわけではない。四肢、つまり両手と両足に障害があることが条件となる」
しかし、その激しさは障がいがあるとは信じられないほどで、ぶつかり合う姿はラグビーそのもの。あまりの激しさに、かつて「マーダーボール(殺人球技)」と呼ばれていた事もあるという。
車椅子ラグビー「ウィルチェアラグビー」イギリス戦にて、激しくぶつかり合う両選手 https://t.co/Y282OPbzMu
— CYCLE-やわらかスポーツ (@cyclestyle_net) 2015年5月23日
ラグビーというと外で行われるイメージが強いが、車椅子ラグビーはインドアスポーツだ。体育館で行われる。
コート上には4名が出場。その4名の選出方法にもルールがある。それは、「ポイント制度」だ。ウィルチェアーラグビーは、障がいの程度によって各選手に持ち点が設定される。障がいが軽いほど点数が高く、重いほど低くなる。最小0,5点~最大3,5点の幅で配分される。
コート上に出ている4名の合計点が8点以内になるようにチームを編成しなければいけない。つまり、3点など比較的高いポイントを所持している、障がいの軽い選手のみでチームを構成することができないということだ。
また、競技用車いすも選手によって異なる。2種類に分かれている。主に障がいの程度が軽い選手は、「攻撃型」の車いすを使用する。小回りが利くようコンパクトで丸みを帯びた形状をしている。
その点、障がいの思い選手が主に使用するのは「守備型」の車いすだ。相手の動きをブロックするためにバンパーが飛び出ている。
「ローポインターとハイポインターの動きに注目してほしい」と話す池崎選手。
この、役割分担がウィルチェアーラグビーにおける“みどころ”を生み出す。試合は、障がいの軽い選手が攻撃型の車いすを巧みに操作し得点をあげるシーンを目にすることが多いが、その裏では、「守備型」の車いす選手の活躍がある。
車いす前方より飛び出たバンパーを使い空いて守備陣を“壁”となって抑え、味方選手をゴールまで導く。障がいが重い選手が軽い選手を封じ込めるプレーは、ビッグプレーとしてチームを盛り上げる。
池崎選手は、この競技は「選手だけではなかなか成り立たない」と話す。手足に障がいを抱える選手たちでは、まず車椅子のメンテナンスができないということだ。そのため、献身的なスタッフたちの存在が欠かせない。
車いす同士のぶつかり合いなどでタイヤがパンクすることもしばしば起こりうる試合。この際、タイヤを交換するのがメカニックのスタッフだ。スムーズにパンクを修理する。
また、タイムアウト中など、選手がベンチに下がる間、アイシングやマッサージをするトレーナーの役割も重要だ。車いすラグビーに参加する選手の多くは脊髄損傷であり、体温調整が難しいという障がい特性が存在する。そのため霧吹きで水をかけるなどの対応が要せられることもある。
激しいタックルにより試合中に転倒する選手を見ることもある。そんなときに、選手を起こすスタッフの存在も忘れてはならない。「チームが機能しなければ成立たない、奥の深い競技」だという。
今後、競技については「まだまだ普及していない部分もあるので、まずは見てもらうこと。そして、試合会場で行われることもある体験会にも参加してほしい」と訴え、競技の魅力について「タックルをはじめ、車いす同士がぶつかったときの衝撃音はすごい。誰でもわかる競技の激しさがあり、一度見れば十分に感じてもらえると思う」と続けた。
日本代表チームの世界ランキングは現在3位。メダル獲得の可能性が高い団体競技として注目されているが、「メダルを確実に取れるかといえばそこまでいっていないと思う」と池崎選手は話す。強豪チームを倒すにあたってやらなくてはいけないことは山ほどあるということだ。
しかし、2015年には初のアジア・オセアニアチャンピオンの座に輝いたことについては「オーストラリアを破り、チャンピオンの座に輝いたことは誇りにもっていいし、世界に通じる自信を獲得した」と口にし、チームメイトについても「ローポインターの選手の相手の選手のコースを切る力、ポジションの取り方は確実に上がってきている。ハイポインターの選手が活かされるには彼らの活躍が欠かせない」と評価する。
池崎選手は、メダルを獲得するために必要なことについて問われると、「今やっていることの、精度をあげる」と力強く発言した。
会見ではウィルチェアーラグビーのデモンストレーションも行われ、その激しさに報道陣は大きくどよめいた。
JAL会見にて pic.twitter.com/R7GZwnWXcz
— CYCLE-やわらかスポーツ (@cyclestyle_net) 2016年4月12日