【THE SPIKE】菅野智之、繊細さと豪快さを備えた「PERFECT PITCHER」へ | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE SPIKE】菅野智之、繊細さと豪快さを備えた「PERFECT PITCHER」へ

オピニオン コラム
菅野智之 参考画像(c)Getty Images
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入団以来、毎年二桁勝利を挙げるなど安定した成績を残し、今や巨人のエースと呼ばれる男・菅野智之投手。今シーズンは既に4勝し、例年以上に安定感のある投球を見せている。何よりも、エースとしての自覚や風格がより一層増しているように見える。


■初志貫徹、巨人へ入団

菅野といえば、母方の祖父が元東海大相模高校野球部監督の故・原貢氏。伯父は巨人前監督の原辰徳氏。また、それに伴うドラフト時のエピソードが記憶に残る。当時、明大・野村祐輔投手(広島)、東洋大・藤岡貴裕投手(ロッテ)とともに、大学ビッグ3と称されていた東海大・菅野は、原辰徳氏が当時監督を務めていた巨人入りを熱望し、巨人の単独指名も濃厚とされていた。しかし、日本ハムも菅野をドラフト1位で指名。抽選の末、交渉権を獲得したのは日本ハムだった。

菅野は日本ハム入団を拒否する意向を表明し、浪人することを選択。東海大の卒業延期制度を利用し大学に残り、大学で自主トレーニングを継続しつつ翌年のドラフトを待つことになった。結果は巨人の単独1位指名。ドラフト会議後には、伯父であり当時巨人の監督であった原辰徳氏が東海大を訪れて指名挨拶。晴れて、夢の巨人軍入りを果たした。



菅野智之 参考画像(c)Getty Images


■ブランクを感じさせず、1年目から躍動

東海大に在学しての浪人であったため、対外試合に出場できなかった菅野には、実戦から遠ざかっているというブランクが懸念されていたが、2013年3月30日のプロ入り初登板で広島相手に7回を投げ、9奪三振1失点と好投を披露した。その後の登板でも安定した投球を見せ、1年目は13勝(6敗)を挙げた。

2年目は12勝(5敗)、3年目は10勝(11敗)。先発ローテーションの一角として定着し、3年連続で二桁勝利を挙げた。勝ち星は年々減少しているが、完投数は1年目が1回、2年目が3回、3年目が6回と増加。防御率は1年目が3.12、2年目が2.33(最優秀防御率のタイトル獲得)、3年目が1.91と年々良くなっている。失点も減少している。2015年は打線の援護に恵まれずに負け越したが、進化していることは間違いない。


■コントロールで困ったことは、ほとんどない

菅野の最も優れている点は制球力だ。四球から崩れることシーンはほとんど見られず、本人も「ボールをコントロールできずに困ったことは、ほとんどない」と言い放つ。制球力を示す与四球率(2015年)は1.97とリーグ1位。今シーズンは制球力にさらに磨きがかかり、これまで7試合に登板(55イニング)し、与四球はわずか2個。開幕から3戦連続無球を達成した後、4月13日のヤクルト戦で2つの四球を出したが、それ以降に再び3戦連続無球を記録。また、4月6日の阪神戦、13日のヤクルト戦と2試合連続で完封勝利を挙げている。巨人では2007年の高橋尚投手以来の快挙だ。文字通り、エースとして絶対的な存在感をマウンド上で放っている。



菅野智之 参考画像(c)Getty Images


また、スリークォーター気味の投球フォーム、多彩な変化球、優れた制球力といった菅野の特長を踏まえると、速球派のイメージが先に立つことはあまりないが、最速は157km/hを誇る。第1回WBSCプレミア12の3位決定戦・メキシコ戦でリリーフで登板した際には、155km/hをマークしたほか、コンスタントに150km/hの速球を連発。多彩な変化球を操りながら、豪腕ぶりを垣間見せた。


■ルーキーイヤー以来、魔球・ワンシームを解禁

今シーズン、圧倒的な投球を見せる大きな要因が、魔球・ワンシームの解禁だ。オフの期間に指先を念入りに鍛えたことが、結果的に解禁につながったという。ルーキーイヤーでは多投していたものの、2年目、3年目はツーシームを重視。しかし、指先を鍛えたことでツーシームが引っ掛かるようになってしまい、逆にワンシームの握りがフィットしたという。変化の予測が不可能なワンシームは、打者にとって非常にやっかいな球種。菅野が投じるワンシームの軌道はもちろん、今シーズンの菅野にはワンシームがあると相手に思わせることで心理的な効果がある。自身もワンシームを「投球の軸にしたい」と話す。

昨シーズン、15打数9安打と打たれた阪神の福留孝介外野手には、4月6日の対戦時にワンシームを多投。最終的にはスライダーで打ち取ったが、ワンシームとのコンビネーションが成果につながった。また、3月5日に行われた侍ジャパンの強化試合で先発した菅野は、3回を投げて4奪三振。決め球に加え、カウント球としてもワンシームを効果的に投じ、台湾打線に的を絞らせなかった。ワンシーム解禁の効果は随所で発揮されている。


■侍ジャパンの中心となる選手へ

侍ジャパンの絶対エースとして目されている大谷翔平投手(日本ハム)が、今シーズンは開幕から苦しんでいる。5月1日のロッテ戦で今季初勝利をようやく挙げたが、昨季までの圧倒的な投球が影を潜めている。また、大谷と並んで、プレミア12では先発の柱だった前田健太(ロサンゼルス・ドジャース)は海を渡った。



菅野智之 参考画像(c)Getty Images


2017年3月には第4回ワールド・ベースボール・クラシックを控える侍ジャパン。国際大会では過去の実績にとらわれず、その時々のコンディションが良い選手を使うのが定石となる。気は早いが、圧倒的な投球を見せて一段とスケールアップした菅野の現状を見る限り、このままの状態を保ち怪我なくシーズンを乗り切れば、侍ジャパンでも投手陣の中心を担う存在となるはずだ。侍ジャパンで投手コーチに就任した百戦錬磨の権藤氏は、「良い球を投げる。どう見ても侍ジャパンの中心となる選手」と話すなど、菅野に対する評価が高い。

前述した前田のほか、ダルビッシュ有投手(テキサス・レンジャーズ)、田中将大投手(ニューヨーク・ヤンキース)、岩隈久志投手(シアトル・マリナーズ)など、日本のエース級はメジャーリーグのチームに所属しているため、WBCへの参加はある意味で不透明。NPBでは、これまでの実績から、大谷をはじめ、藤浪晋太郎投手(阪神)、則本昴大投手(楽天)、武田翔太投手(ソフトバンク)、金子千尋投手(オリックス)らがローテーション候補として挙がるが、3月の強化試合、開幕以降の投球内容を見れば、菅野の成績と存在感は突出しており、投手陣の中心としての期待がかかる。

巨人のエースから侍ジャパンのエースへ。繊細さと豪快さを併せ持った菅野の大いなる飛躍に期待したい。

《浜田哲男》

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