【小さな山旅】低山アート…茨城県・西金砂山(3)
オピニオン
コラム

今までこのコラムの取材で散々山に(ほぼ低山)登ってきたが、あまりにそこいら中に、当たり前に生えている”木”に対し、特別な感情を抱くことはなかった。
だが、ツリークライミング(R)で木に触れ、登るなどして親しみを持つようになり、林業を取材する機会もあって、(生半可な)知識を得たことで木に対してがぜん興味がわいた。それから、環境問題にまで意識が及び、里山系のセミナーを一人で受けに行くまでになった(意識高い系)。
そして、木という存在の偉大さに気付くのであった。
根っこは大地を支える礎になる。木陰に入れば、雨や陽の光から守ってくれる。木の実は、人や動物たちの食べ物になる。木の葉は落ちれば、土を肥やす。
木の幹は、加工をすれば道具になる。家具にもなるし、家にもなる、紙にもなる。燃やせばエネルギーにもなる。
そうして、何より、その姿自体が、アートである。
太くて長い根っこを、地面に広く、地中に深く伸ばして、幹をぐいぐいと天高く伸ばして、太くして、枝葉を広げ、大地と太陽から栄養をたっぷり吸い込んで、育ちに育った木の姿は時として、人には想像しがたい姿形を成すことがある。
■西金砂山の豊かな自然と木の種類
その姿は、まさに芸術そのもので、神秘そのもの。長年生きてきた大きな木が、「御神木」として崇められるのも納得がいく。西金砂山には、そんな魅力あふれる木がたくさんあった。
二の鳥居にでんと構えるのは、高さ29mのイチョウと、同じく30mのサワラ。ともに根回りが12mあり、2つ並んで生えている姿は圧巻である。山の南側の斜面には、スダジイ、タブノキ、シラカシなどの暖帯林。北側の斜面には、イヌブナ、イヌシデなどの温帯林。
これらの木々が立っている姿はもちろん素晴らしいのだが、朽ちて倒れた姿もまた素晴らしい。登山道を遮る姿さえ、芸術的なのだ。
西金砂山にて、自然(nature)が創りだす芸術(art)作品を眺めていたら、亡き父のハゲ頭が思い浮かんだ。
《久米成佳》
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