つまり、予選での戦力でそのまま本大会でも戦うことになる。そこに都市対抗とは違った、単独チームで“真の日本一”を競うという意味合いがある。
■連続出場が多い日本選手権
大会としては都市対抗の優勝チームと、日本野球連盟(JABA)が日本選手権出場対象大会と指定した春の東京スポニチ大会や静岡大会、京都大会など公認のJABA大会の優勝チームと、先の全日本クラブ選手権の優勝チームには自動的に出場権が与えられている。
だから、日本選手権では地区によっては予選免除をされているチームもいくつかある。関東地区では東京ガス(四国大会優勝)、日立製作所(日立市長杯優勝)、JX-ENEOS(東北大会優勝)、NTT東日本(ベーブルース杯で、中日二軍に次いで準優勝)が予選免除で本大会出場を決めている。
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新日鐵住金鹿島の選手たち
9月中旬から下旬にかけて大田スタジアムで行われた関東地区予選でさらに関東5代表が決まり、代表32チームが出そろった。
特徴的なのは、都市対抗野球以上に連続出場が多いことだ。間隔が空いてもせいぜい2大会、3大会ぶりというところである。今年の大会での最大間隔でも東海地区代表の王子で5大会ぶりだ。連続出場はパナソニックの22大会連続37回目をはじめとして、都市対抗優勝のトヨタ自動車の13年連続16回目、日本新薬と日本通運がいずれも9年連続19回目の出場を果たしている。
初出場は、先のクラブ選手権で優勝したビッグ開発ベースボールクラブ(沖縄)の1チームのみだ。
このように同じ顔ぶれが多くなる背景には、前述のようにJABA大会での優勝チームに出場権が与えられることもある。そこで、有力地区のその年の強力なチームが優勝を果たせば、企業チームとしては出場枠が広がって出やすくなっていく。
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深谷組の円陣
それでも関東地区と東海地区は比較的激戦となる。ことに関東は東京都と北関東、南関東、神奈川県などの都市対抗とは地区割りが異なり、関東地区での5枠となる。だからJABA大会で関東勢が多く勝っていれば楽になるが、そうでないときはより厳しくなる。
埼玉県の深谷組や千葉県のJR千葉、茨城県のJR水戸なども予選に参加して、強豪チームに食い下がるなどしており、激化している。
特に深谷組は、今年の大会でも新日鐵住金鹿島に7回まで競り合って「あわよくば大金星」という健闘ぶりだった。最後は底力の差を見せつけられた感があったが、こうした新しい参入チームの活躍は、ますます予選も激化させていくことになるはずだ。
■企業スポーツのあり方
社会人野球を取り巻く環境は2000年頃になって、伝統のあるチームが多く休部廃部となるなど、危機的状況に陥っていた。それでも新しい形での登録チームの健闘などで維持してきた。そして、ここへ来てある程度はチーム数も落ち着いてきた。
日本の高度成長期を支えてきた鉄鋼や化学産業、石油といった大手企業をベースとしたチームが華やかに活躍して盛り上げていた社会人野球。時代の流れのなかで、チームの顔ぶれが変化を示しつつも、それでも連続出場が多いということは、企業努力のひとつの表れではないかと信じている。
野球だけではなく、かつては日本リーグという形で企業スポーツが引っ張ってきたバレーボールやバスケットボール、サッカーなども随分と形態が変わってきている。企業スポーツのあり方そのものが時代の流れとともに、その時代に即した形でいかに定着するのか。そんな興味も含めて社会人野球を見つめていきたい。
今年の社会人野球日本選手権は、10月29日から京セラドーム大阪で開催される。