【THE SPIKE】侍ジャパン、命運を握るセットアッパー問題…WBCへ向けて | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE SPIKE】侍ジャパン、命運を握るセットアッパー問題…WBCへ向けて

オピニオン コラム
則本昂大のマウンドに集まる
則本昂大のマウンドに集まる 全 4 枚 拡大写真
プロ野球は現在日本シリーズの真っ只中だが、11月10日~11月13日に強化試合を控える侍ジャパンの動きも活発化してきた。

10月18日には強化試合に出場する28名のメンバーが発表され、小久保裕紀監督が「負けられない試合を前提とした試合運びをイメージして臨む」と意気込みを語った。来年3月に開催される第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)までの準備期間は少ない。


■プレミア12で露呈された最大の問題

「あの日の悔しさを忘れた日はない」

18日のメンバー発表の会見で小久保監督が神妙な面持ちで話している。あの日とは、昨秋に開催された世界野球WBSCプレミア12の準決勝・韓国戦。逆転負けを喫した歴史的惨敗の日を指す。

8回終了時点で侍ジャパンが韓国を3-0でリードしていたが、9回に4失点で大逆転を許した。当然、勝負を決して捨てることのなかった韓国打線の粘りは評価されるべきではあるが、問題となったのは「継投ミス」であり「なぜ、セットアッパーを一人も招集していなかったのか?」という事に集約された。

特に、この試合で先発した大谷翔平(日本ハム)が7回無失点と韓国打線を完璧に抑えていただけに、継投ミスがより一層クローズアップされた。試合後に小久保監督は継投ミスを認め、試合中に考えていた策について語った。

小久保監督率いる侍ジャパン (c) Getty Images

「大谷が7回を投げ終えた時点で、則本昴大(楽天)を2イニングと決めていた。しかし、1点返された後の無死二、三塁の場面で松井裕樹(楽天)という選択肢もあったと思う」

実際、8回からマウンドに上がった則本は、球威のある直球を中心とした組み立てで韓国打線をあっさりとねじ伏せた。そのため9回にクローザーを送り出すのではなく、則本続投は妥当な流れに見えた。戦況を見守っていた多くの人が納得し、9回のマウンドに向かう則本の姿を見つめていたはずだ。

しかし、問題は走者をためてしまった場面だろう。前述した松井にしろ、増井浩俊(日本ハム)、澤村拓一(巨人)、山崎康晃(DeNA)にしろ、所属チームではクローザーだ。9回頭、走者がいない場面で出ていくのが常であり、走者を背負った場面でマウンドに上がる経験はほとんどしていない。

則本昴大 (c) Getty Images

継投のタイミングの遅さなども指摘されていたが、そもそも走者を背負った場面を切り抜けてきた“火消し役”がひとりも招集されていなかった。根本的な問題はメンバー選考の段階にあったのだ。

小久保監督はこうも語っていた。

「クローザーを集めて、7回から9回をつなぐ考えだった」「今回こういうメンバーを集めた僕の責任」

松井裕樹 (c) Getty Images

■ピッチングコーチに権藤博と斎藤隆が就任

プレミア12の敗戦を受け、新たにピッチングコーチに就任したのが、1998年に監督とエースという立場で横浜ベイスターズを38年ぶりの日本一に導いた権藤博と斎藤隆だ。

敗れた直後、小久保監督と電話で話したという権藤。「野球は勝つか負けるかなんだから」と球界の後輩に声をかけていたそうだが、そんな会話の最中に小久保監督から直々に「権藤さん、ピッチングコーチをお願いできませんか」との打診があった。

権藤は77歳という年齢で受けた大きな打診に、「この年で必要とされる。それも日本代表。こんな光栄なことはない」と侍ジャパンピッチングコーチの大役に身震いしたという。権藤氏は小久保監督から依頼を受けた翌日、快諾した。

権藤は幾多の球団でピッチングコーチを歴任。手取り足取り指導するコーチが多い中、選手の自主性を尊重する。超一流の選手が集う侍ジャパンに相応しい指導者と言えるかもしれない。

横浜ベイスターズを優勝に導いた年には、絶対的クローザーの大魔神・佐々木主浩をはじめ、セットアッパーの島田直也、五十嵐英樹らで強力なリリーフ陣を形成。特に先発だけでなく中継ぎにもローテーション制を導入するなど、投手起用には独自の理論を持っている。

その権藤のもとでエースとして活躍した斎藤隆は、日本球界のみならず、メジャーリーグでの経験も豊富。ロサンゼルス・ドジャースやボストン・レッドソックスなどでクローザーも務めた。第4回WBCで予選ラウンドを勝ち抜き、決勝ラウンドで米国に渡った際には、投手陣としてこれ以上に心強い兄貴的存在はいないだろう。

■セットアッパーを3人選出

18日の時点で選出されていたセットアッパーは、右の変則サイドスローで今季もリーグ1位の70試合に登板した秋吉亮(ヤクルト)と、左のサイドスローで58試合に登板し39ホールドを挙げリーグ優勝に大きく貢献し、いまや日本を代表するセットアッパーとも言える宮西尚生(日本ハム)だった。そして24日に左腕の岡田俊哉(中日)が追加招集された。

岡田は今季57試合に登板し、3勝1敗13ホールドの成績。シーズン途中から勝ちパターンのセットアッパーとして起用され、6月は月間防御率1.08を記録し、8月11日のヤクルト戦では6者連続三振を奪うなど一定の活躍を見せたことが侍ジャパンコーチ陣の目にとまった。

糸を引くような軌道で、空振りのとれるキレ味抜群のストレートが特徴だ。中日には今季59試合に登板し、18ホールド17セーブを挙げた実績としては岡田を上回る田島慎二もいるが、秋吉と似たタイプとも言える。左腕の岡田の選出は投手のバリエーションを増やすことにもなるし、左腕が少ない中で左の枚数を増やすあたりが権藤ピッチングコーチらしいところか。

リーグ戦では幾多の修羅場を経験してきたセットアッパーたち。強化試合ではイニングの頭からではなく、走者を背負った場面でぜひ見たい選手たちだ。

■第二先発とのすみ分け

メジャーでは特にそうだが、セットアッパーはクローザーと同じように、れっきとした専門職だ。日頃先発を務め、いくら驚異的な球を投げる投手でも、走者を背負った場面でマウンドへ向かうことはまた別次元の話で、決して簡単な仕事ではない。

球数制限のなかったプレミア12とは違い、投球数に厳しい目をもつMLB主催のWBCでは球数制限がある。第3回大会では、第2回大会の時よりもラウンドごとに定められた球数が5球ずつ減り、一次ラウンドは65球、二次ラウンドは80球、準決勝と決勝は95球に制限された。

日本ではWBC特有のこの球数制限を踏まえ、第1回大会の時から「“第二先発”が必要だ」という考え方が浸透している。過去の大会を見ても、先発投手を数多く招集し大会に臨んでいる。第3回大会でこそ、山口鉄也(巨人)、森福允彦(ソフトバンク)、今村猛(広島)と3人のセットアッパーが選出されていたが、第2回大会では山口ひとり、第1回大会では藤田宗一、薮田安彦(ともに当時ロッテ)の2選手だった。

もちろん、第二先発は必要だ。しかし、それを担う投手とは別にセットアッパーの存在も必要不可欠。第二先発がセットアッパーを兼ねる…などという考えが通じるような甘い戦いではない。

11月10日から東京ドームで行われるオランダ、メキシコとの強化試合。権藤・斎藤両ピッチングコーチが、ベンチとブルペンでリリーフ陣をどうコントロールするか注目したい。

《浜田哲男》

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