【THE SPIKE】侍ジャパン、守護神不在の危機を乗り越える3つの打開策 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE SPIKE】侍ジャパン、守護神不在の危機を乗り越える3つの打開策

オピニオン コラム
侍ジャパン、山崎康晃(中央)のもとに監督らが集まる(2016年11月10日)
侍ジャパン、山崎康晃(中央)のもとに監督らが集まる(2016年11月10日) 全 9 枚 拡大写真
11月10日~11月13日にかけて行われた野球日本代表・侍ジャパンの強化試合。来年3月に開幕する第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)前の最後の国際試合ということで、大きな注目が集まった。

諸々の課題が浮き彫りになったが、なかでも深刻なのが投手陣だ。打撃陣は2試合目以降はつながりを見せ、本番に向けた期待感を持たせる部分を垣間見ることができたが、4試合で29失点は強化試合とはいえ予想外だった。

先発・第2先発で登板した8投手は軒並み崩壊し、WBC公式球に対するアジャストへの不安を露呈した。

さらなる問題が絶対的な守護神の不在だ。4試合行われた強化試合で、最後にマウンドに上がったのは岡田俊哉(中日)、秋吉亮(ヤクルト)、千賀滉大(ソフトバンク)の3投手。千賀に関しては追試の意味合いが強い登板であったため参考にはならないが、岡田と秋吉はクローザーではなく、本来はセットアッパー。それでも走者を背負った場面ではシーズン同様の安定した投球を見せて、首脳陣からの信頼をつかんだ。

所属チームでクローザーを務める投手として唯一招集されていたのが山崎康晃(DeNA)だったが、現在までの起用法を見る限り侍ジャパンの最終回を任せるだけの信頼は得られていない。

今回は、守護神不在の危機を乗り越える3つの方向性を考察してみる。

山崎康晃 参考画像
(c) Getty Images

■一番良い投手をクローザーに据える

これは侍ジャパンのピッチングコーチを務める権藤博の考え方だ。権藤コーチは昨秋に行われたプレミア12終了後に就任。その際に、「一番良い投手をクローザーにもっていくというのが自分の考え」「最後を任せる投手は三振がとれなければいけない」と熱弁した。

これは国際大会だからというわけではなく、ペナントレースを戦う上でも同じ考えだという。その顕著な例が1998年だ。横浜ベイスターズの監督としてチームを38年ぶりの日本一に導いたが、そこには絶対的な守護神・佐々木主浩がいた。権藤コーチは「当時、チームで一番良い投手が佐々木だった。三振もとれる。だから最後を任せた」と語っている。

権藤博コーチ 参考画像
(c) Getty Images

権藤コーチはこうした考えを踏まえた上で、「侍ジャパンでいえば、大谷翔平(日本ハム)、菅野智之(巨人)、あと調子が良ければ藤浪晋太郎(阪神)が候補になる」と就任当時に語っていた。

強化試合後の会見では小久保裕紀監督がクローザーについて言及している。

「今シーズンは各チームのクローザーが一様に苦しんでいた。だから今回の強化試合では、この選手がクローザーというように決めることはしなかった」

第2回WBCでは準決勝のアメリカ戦、決勝の韓国戦ともに、最後のマウンドに上がったのは当時日本ハムのダルビッシュ有(現テキサス・レンジャーズ)だった。ダルビッシュは守護神として期待されていた藤川球児(阪神)の調子が上がらないことを受け、当時のピッチングコーチの山田久志に説得されて急遽抑えに配置転換された。権藤コーチはこの時の首脳陣の判断を高く評価している。

「一番良い投手をクローザーにもっていく」という信念を持つ権藤コーチであれば、最後に大谷や菅野を守護神としてマウンドに送ることもあるかもしれない。

■あえてクローザーを特定しない

強化試合でもそうだったように、あえてクローザーを特定せず状況に応じて対応する方向性も現実的だ。絶対的な守護神が確立できていない現状であれば尚さらだろう。

強化試合で先発陣が不安を残す一方で、岡田と秋吉、そして変則左腕の宮西尚生(日本ハム)の3選手は安定した働きを見せた。走者を背負った場面でマウンドに上がってもシーズン同様の落ち着いた投球で乗り切り、自身が走者を出してしまっても自分の尻は自分で拭い、ホームは決して踏ませない投球を見せてくれた。

秋吉は所属するヤクルトで今季、途中からセットアッパーからクローザーにまわり活躍した。岡田は強化試合で予想以上に安定した投球を見せ、宮西は百戦錬磨の風格が漂っていた。絶対的な守護神がいるに越したことはないが、いないものは仕方がない。

状況に応じた対応力が高く、幾多の修羅場をくぐり抜けてきたセットアッパー経験者の枚数を増やすことも、ひとつの打開策なのかもしれない。

岡田俊哉 参考画像
(c) Getty Images

■打者の目線を変える

プレミア12の準決勝・韓国戦。先発した大谷の前に韓国打線は手も足も出なかった。しかし、その後に登板した則本昴大(楽天)をとらえて集中打を浴びせた韓国の打者は一様にこう語っていた。

「大谷の後で、則本の球が遅く見えた」

実際、則本も球は速い。プレミア12初戦の韓国戦で登板した際には自己最速の157kmをマークしている。しかし、大谷という異次元の速さを体感した打者にとっては打ちごろの球に見えたのだろう。

プレミア12にはアンダースローの牧田和久(西武)が招集されていた。牧田でいくべきだったというわけではないが、地面すれすれの地点から浮き上がってくる球で目線を変えられることが、打者にとってどれほど嫌なことか。

実際、牧田は第3回WBCではクローザーを任され、第1ラウンドのブラジル戦で1回を無失点に抑えてセーブを挙げ、1勝1S、防御率0.00という成績を残し、打者が不慣れなアンダースローは国際大会で有効であることを示した。同じくアンダースローの渡辺俊介(元ロッテ)は、第1回WBCの第2ラウンド韓国戦で6回を無失点に抑えるなど3試合に登板。防御率1.98の好成績を挙げている。

牧田和久 参考画像
(c) Getty Images

打者の目線を変えるという観点から、時代をさかのぼって例を挙げる。1980年代後半~1990年代前半にかけて、無敵と呼ぶに相応しい黄金時代を築いた西武。1990年代前半に試合の終盤を任されたのは、「サンフレッチェ(3本の矢)」と呼ばれる杉山賢人・潮崎哲也・鹿取義隆から成る鉄壁のリリーフ陣だった。

左腕の杉山はアーム式の投法から繰り出す重い球質が特長で、潮崎は右のサイドスローから投じる150キロ近い速球と50センチ近くも沈むシンカーが武器だった。そして、右サイドスローからの多彩な変化球を操る鹿取。このタイプの異なる3投手が7、8、9回と次々に出てくるのだから相手打者はたまらない。

強化試合では右の変則サイドスローの秋吉、左の変則サイドスローの宮西が結果を残した。試合の終盤に打者の目線をいかに変えて幻惑することができるか。そういう視点に立った継投には安心感がある。侍ジャパンでも、バリエーションに富んだリリーフ陣の構成を期待したい。

《浜田哲男》

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