【THE INSIDE】テーマは“見ながら動く、考えながら動く”…シーズンオフの「高校野球研究会」 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE INSIDE】テーマは“見ながら動く、考えながら動く”…シーズンオフの「高校野球研究会」

オピニオン コラム
パネルを用いての講演
パネルを用いての講演 全 14 枚 拡大写真
高校野球は11月末(実質的には、最終週の週末)を終えると、翌年の3月の1週目が過ぎるまでは、対外試合が禁止という規定になっている。これは、雪などで試合ができない地域が出てくるので、その格差をなくすためという目的もあるようだ。

もっとも、この時期は比較的温暖な地域でも、やはり風が冷たかったりということもあるため、無理をして試合をしない方がいいのであろう。

チームとしても、この間は基礎体力作り、身体づくりとしてトレーニングメニューを作っているところがほとんどだ。あるいは、2度のティーバッティングでの打ち込みやフォーム固めに終始するというところもあるようだ。

指導者たちも、それぞれにテーマに沿った練習メニューを組んだり、外部の人間のアドバイスを聞いたりということも多い。

そうした時期だが、東京都では都立校の指導者たちが集まって、任意に「高校野球研究会」を開催している。毎年12月の第2週の週末、都内の学校を会場として実施。近年は、神宮球場にほど近い都立青山高校が会場となっている。

熱心に耳を傾ける参加者たち

毎年のことだが、そこには新規の参加者も出席する。あくまでも任意団体なので、特に出席を強要することもなければ、拒否することもない。だから、指導者と交流のあるファンなどが参加するケースもある。そうした人たちからの傍目八目が、指導の際に役立つこともあるという。

今年で32回目になるが、今回は筑波大体育系の木塚朝博教授を招いての講演と質疑応答がメインとなった。日本体育学会、バイオメカニズム学会、日本体力医学会、日本運動整理学会などに所属している教授だ。

講師となった木塚朝博教授

そして、講演後は伝達確認事項や、場合によっては、スポーツ用品メーカーなどの出席者が、新しい機能のトレーニングマシンを紹介する時間も設けられる。

今回の講演は、「見ながら動く、考えながら動く」がテーマとなり、デュアルタスク(二重課題)について語られた。簡単に言えば、「○○しながら、××する」ということだ。野球で言えば、「考えながら打つ」「状況を見ながら送球する」ということである。ラグビーやサッカーで言えば、「考えながら走る」ということにもなるだろう。

そして、そのためにはどういったトレーニングと、どういった日常での意識が大切なのかということが説かれる。

しかし、今の子どもたちには、デュアルタスクの行動能力の芽があまり育てられていないことが多いといい、そのことが青少年期の運動能力、スポーツ活動のさらなる発展を妨げ、マイナスの連鎖を呼んでいるのではないかと指摘されていた。

「見ながら動き、考えながら動く」ことの原点は、鬼ごっこのような遊びの中から生じることも多いわけで、このことによって、走り方もコース取りなども、自然に身についていくものなのだ。

今の子にまっすぐ走れない子が多いのも、そうした遊び感覚からで自然な形で学ぶ機会が少なくなっているからかもしれない。社会環境なども含めて、今の時代はなかなか育まれにくいのではないかという。そうした問題を解決するための手法の一つとして、走りながら的当てをする「流鏑馬(やぶさめ)ゲーム」のようなものが、能力を発見・向上させやすいというような話もあった。

野球に置き換えてみると、例えばバントのシーンで、どこに転がしていくのが一番いいのかということになると、相手の守備陣形や動きを見ながら、投球と走者の動きを判断して転がしていくということになる。また、一塁線のゴロで投手がベースカバーに入っていく、いわゆる“3-1のプレー”と呼ばれているものだ。これらの状況認知能力を高めていくことが大事になるというわけだ。

そして、「一つのタスクの容量を小さくしていくことで、いくつものタスクを利用することができる」という考え方は、特化した能力を高めるのではなく、同時に様々なことを行っていく能力を高めていくということになる。

「右手で二拍子の指揮をして、左手で三拍子の指揮をする」ということや、バスケットボールのドリブルで、「高い位置と低い位置でのドリブルを同時に行う」なども、デュアルタスクの一つである。

大学の教授であるがゆえ、知識や技術を活用する能力=リテラシーや複数の技能を適切に統合させる力=コンピテンシーなどと言う、少し難解な言葉も多く用いられた。

栗橋北彩・鈴木学監督のように、都外からの出席者も多い

それでも、多くの参加者は「少しでも何かを吸収して、チーム作りに生かして行こう」という姿勢があり、熱心に聞き入っていた。質疑応答も、「それほど高い能力を有しているわけではない選手たちに対し、何をどのようにしていくことから始めたらいいのか」ということを意識しながらの質問が多かった。

研究会の後は、情報交換や親睦を深めることを目的とし、近くの場を借りた懇親会も開催された。こうした場で、新しい交流が生じ、同じ境遇でどのような工夫をしているのかということを語り合ったり、練習試合が組んでいこうという話に発展するケースも少なくないという。

指導者たちの熱い思いは、オフも冷めることはないということを改めて確認した。

《手束仁》

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