前回までのサイドバック編、センターバック編、セントラル・ミッドフィールド編に続き、今回はビック6クラブのストライカー・フォワードについて、英国紙ニュースの流れと共に注目したい。チームの顔とも入れるポジションだけに、有名選手の名が並ぶ。
まずは、スタートダッシュにつまずきながらも、怒涛の13連勝で独走態勢に入りつつあるチェルシーから注目したい。
シーズン当初、ベルギー代表ミシー・バチュアイをマルセイユから獲得。いち早く攻撃陣の強化に力を入れたが、英国紙の5段階評価で「4」と、満点とはならなかった。さらに残念なことに、加入したバチュアイは、今シーズンほとんど出番がない。その大きな理由は、ジエゴ・コスタの復活である。
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復調したジエゴ・コスタ
昨シーズンのチェルシーの失速を象徴するように、エースのプレミアリーグのゴール数は12で止まってしまった。しかし、今シーズンは21節を終えて14ゴールと、得点ランキング1位(1月17日時点)に君臨している。
そして、2014-2015シーズンのプレミアリーグ最優秀選手のエデン・アザールの復活。スピード溢れるプレーとボールコントロール、そして希有な攻撃センスを持つ彼を止めることは至難の技だ。
また、ここまでプレミアリーグでインパクトを残せていなかったペドロが、コンテ監督のシステム変更で躍動。盤石と言える攻撃陣が、チームの快進撃を牽引している。
次に、5段階評価で「5」の最高評価を獲得したマンチェスター・シティに注目したい。
グアルディオラ監督率いる新生マンチェスター・シティの攻撃陣の中心は、セルヒオ・アグエロ。プレミアリーグに参戦して6シーズン目のアグエロは、すでにプレミア・リーグ100得点を記録し、リーグを代表するワールドクラスのストライカーだ。
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プレミア屈指の点取り屋 セルヒオ・アグエロ
さらに、爆発的なスピードと左右に揺さぶるドリブルが魅力のイングランド代表、ラヒーム・スターリング。
また、グアルディオラ監督とも縁があり、今シーズン加入したスペイン代表のノリートこと、マヌエル・アグード。
アグエロの控えには、シティのユースで頭角を現し、今ではナイジェリア代表にまで成長した、ケレチ・イヘアナチョ。若干20歳の若者はプレミアリーグ40試合で12得点と実勢も十分である。
ここまで、エースのアグエロが11得点しているものの、警告などのために15試合しか試合に出場していないのが、勝ち点を今一つ伸ばせていない大きな理由かもしれないが、プレミアリーグを代表する攻撃陣であることは間違いない。彼らの調子が上がれば、今後のチームの巻き返しと比例するだろう。
続いて、首位チェルシーを猛追するリバプールの攻撃陣が5段階評価で「4」の評価を獲得。
昨シーズン途中、リバプールの監督に就任したユルゲン・クロップが掲げるのがゲーゲン・プレス。高い位置でボールを奪うことで失点のリスクを減らし、得点チャンスを増やす彼の理論を実行するために、フォワード陣にも守備のプレスが要求される。
そのプレスからの攻撃を可能にするのが、リバプールの3選手。まずは、ビッククラブからのオファーの噂が絶えない、フィリッペ・コウチーニュ。繊細なボールタッチと緩急のあるドリブルで突破し、放たれる強烈で精度の高いミドルシュートが特徴の選手だ。
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ブラジルの至宝 フィリッペ・コウチーニュ
そして、コウチーニュと同じブラジル人のロベルト・フィルミーノ。本来はストライカーの後ろでプレーするフィルミーノだが、リバプールでは1トップを担う。
守備時に戦線から相手にプレッシャーをいち早くかけるフィルミーノがいるからこそ、リバプールは高い位置でボールを奪い返すことができている。
クロップ・リバプールの真のキーマンは彼だろう。この強力コンビに、今シーズン新たにスピードスターのサディオ・マネが加わった。セネガルで「小さなダイヤモンド」と呼ばれる彼は、開幕戦でゴールを挙げるなど、チームのサッカーにすぐフィットした。
何よりも、クロップ監督がドルトムントを指揮していた時に、マネを獲得しようとしていたことを考えれば、クロップの求める戦術には欠かせない選手になり得ることがうかがえる。
この3人に加え、ベルギー代表のディボック・オリギと、イングランド代表のダニエル・スターリッジが、リバプールの攻撃の幅を広げる。今シーズンのリバプールの躍進には誰もが驚かされているが、失速することなく、この勢いでリーグタイトルに挑戦できるかが、シーズン後半戦の楽しみである。
続いて、5段階評価で「3」の評価を獲得したチームが2チームある。
まずは、長年リーグ20得点を決められるストライカーを見出せない、アーセナル。今シーズン初めも多くのストライカー獲得の噂が飛び交ったが、結局はスペイン人ストライカーのルーカス・ペレスの獲得で落ち着き、即戦力獲得とはならなかったことが、この評価になった理由だろう。
チームのストライカーであるオリヴィエ・ジルーが、夏のヨーロッパ選手権参加のためにシーズン当初不在の間、代わりにそのポジションを担ったのが、アレクシス・サンチェス。
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前線からのプレスに定評 アレクシス・サンチェス
プレミア屈指のアタッカーにとってはポジション変更は全く関係なく、豊富な運動量で幅広いプレーエリアでアーセナルを牽引。スピードとスキルに加え、前線からのプレスでチームに勢いをつける彼のプレーは、サポーターからの指示も高い。
現在、14得点とゴールランキングで首位のサンチェスは、ストライカーを獲得しないベンゲル監督へのサポーターの不満を抑え込んだ大きな要因である。
そして、スピードスターのイングランド代表セオ・ウォルコット、アレックス・オックスレド=チェンバレン。テクニシャンで知られ、プレミア・リーグでも人気の選手だったオーガスティン・オコチャの甥っ子で、若干20歳のアレックス・イウォビ。
そして、今季加入したルーカス・ペレスや、1月に怪我から復帰したイングランド代表のダニー・ウェルベックと、プレミア・リーグのクラブの中で1番豊富なオプションを持っているのは、実はアーセナルかもしれないと思わせる面子が並ぶ。
もう1 チームは、今シーズンも大補強を行った、マンチェスター・ユナイテッド。
攻撃陣の補強で注目を集めたのは、35歳になっても未だ衰えを感じさせないズラタン・イブラヒモビッチの加入だろう。
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プレミアでもゴールを量産 ズラタン・イブラヒモビッチ
数々のリーグで得点王を獲得してきた彼に、プレミアリーグの激しさも関係なかった。これまで20試合に出場して14ゴールと、プレミアリーグを代表するストライカーのコスタやサンチェスと並び、ゴールランキング首位と存在感を見せつける。
これまでチームの主柱であったウェイン・ルーニーは、先日クラブのレジェンドでもあるボビー・チャールトンが持つ、クラブレコードの249得点に並ぶゴールを記録。しかし、年齢とともにスピードの低下を指摘される彼は、ここ数年シーズンを追うごとにが出場機会が激減。今シーズンは試練のシーズンとなるだろう。
また、昨シーズン大型移籍で加入した若手有望株のアントニー・マーシャルにも、ゴールが必要だろう。昨シーズン彗星のごとく現れたイングランド期待の新人、マーカス・ラッシュフォードはイブラヒモビッチ加入で出場チャンスが激減しているのが残念だ。
さらに、ジェシー・リンガードといった期待の若手も豊富に要するが、イブラヒモビッチに続くスコアラーが少ないのが、マンチェスター・ユナイテッドの問題である。
最後に、2シーズン続けて20得点以上ゴールし、昨シーズンプレミアリーグ得点王になった、ハリー・ケインが所属するトッテナム。
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昨シーズンのプレミア得点王 ハリー・ケイン
プレミア・リーグを代表するストライカーを要するトッテナムだが、5段階評価で「2」の評価と、6チーム中最低の評価である。
理由は、ハリー・ケインの代わりがいないこと。昨シーズン大きく成長した韓国代表のソン・フンミンや、今シーズンが始まる前に、昨シーズンのオランダのエール・ディビジョン得点王フィンチェント・ヤンセンを獲得したが、ケインの代わりとまではいかない状況が続く。
プレミアリーグを4位以上で終えるためにも、明確な課題を乗り越える必要がある。
多くのビッククラブが凌ぎを削るプレミアリーグ。屈強なディフェンダー人を抜き去り、点を奪うことは至難の技でありながらも、誰もが興奮するゴールの瞬間を演出し、チームを勝利へと導くストライカー達。
私も某チームのスタジアムで、ゴールの度に周りのサポーター達と幾度となくハイタッチやハグを交わし、ゴールに酔いしれてきた。今後も、多くのゴールを我々に見せてくれるストライカー達に注目していきたい。