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e-Sportsの裏側…夫婦格闘プロゲーマーの次なる挑戦

スポーツ まとめ
【e-Sportsの裏側】夫婦格闘プロゲーマーの次なる挑戦―「スタジオスカイ」設立や「Echo Fox」移籍まで
【e-Sportsの裏側】夫婦格闘プロゲーマーの次なる挑戦―「スタジオスカイ」設立や「Echo Fox」移籍まで 全 9 枚 拡大写真
e-Sportsに携わる「人」にフォーカスを当てて、これからの日本のe-Sportsシーンを担うキーパーソンをインタビュー形式で紹介していく【e-Sportsの裏側】。

前回の連載ではNEXON KOREAのe-Sportsチームを率いるファン・ヨンミン氏に海外e-Sportsの潮流と日本が取り組むべき課題について熱く語ってもらいました。

■e-Sportsとは?
e-Sports(Eスポーツ)とはElectronic sportsの略で、コンピュータゲームやビデオゲームで行われる競技のことです。高額な賞金のかけられた世界的な規模で行われるプロフェッショナルな大会から、アマチュアまで競技が行われており、ジャンルやゲーム毎にプロチームやプロリーグが多数あります。現在e-Sportsの対象となっているゲームを遊ぶ人の数は、全世界で5500万人を超えています。
(ゲーム大辞典参照:http://game-lexicon.jp/word/e-Sports
第10回目となる今回は、プロゲーマーとして情報発信やファンが集まるイベントを定期的に開催している『ウルトラストリートファイターIV』世界王者(EVO2015ウルトラストリートファイターIV世界王者)のももち氏、日本初の女性プロゲーマーチョコ(ChocoBlanka)氏。2015年11月4日に株式会社 忍ism(シノビズム)(以下: 忍ism)を起ち上げ、2016年は「世界で1番になれる後進の育成(プロゲーマーの育成)」プロジェクトや積極的なメディア露出などを行い、夫婦二人三脚で国内外に限らずe-Sport市場ひいてはゲーム業界に貢献をする活動を精力的に行ってきました。

今回そんな二人が「ゲームと人を繋ぐ」という忍ismの事業をさらにドライブさせるために「手軽に、気軽にゲームの配信が出来る場所・ゲームと人の接点となる場所」を目指して「スタジオスカイ」を設立。Game*Sparkでは、スタジオ設立の背景、2017年の活動について独占インタビューを実施。チョコ氏・ももち氏の熱い企業ビジョンを本稿ではお届けします。また電撃発表されたプロゲーム団体「Echo Fox」の移籍についてもお話を伺いました。

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――改めて、お二人の自己紹介を改めてお願いします。

ももち: Echo Fox所属のももちです。忍ismの代表を務めています。

チョコ: Echo Fox所属プロゲーマーのチョコブランカです。忍ismの取締役を務めています。

――忍ism自体は2015年の11月設立、約1年ほど経ちますが2016年はどうでしたか?

ももち: 自分自身がプレイヤーとして活動しながら、イベントの運営、後進の育成をメインで活動していたのですが、すごく大変でした。今までは、自分がトーナメントに参加して、自分の結果がどうこう、ということだけだったのですが、教えている弟子達がトーナメントに出て、弟子達のトーナメントの結果もヒヤヒヤしながら見たりということもしました。すごく勉強になった1年ですね。

――たしか2016年の年始に弟子募集をしたんですよね。

ももち: そうですね。1月末ぐらいに募集をかけて、3~4月ぐらいからスタートしました。最終的に面接を通過して、弟子としてジョインしてくれたのは3名ですね。

――応募自体はどれぐらいあったんでしょうか?

ももち: 約100名です。20歳以下限定で募集をかけていたのですが、中には「今22歳なんですがどうしてもやりたいです」という方や、自分より年上の熱意のある方からの応募もありました。

――以前インタビューさせていただいた時は、最初は書類選考、その後にオンライン面接というフローということでしたが、そのフローで最終的に3人を選抜したんですか?

ももち: 書類選考をして、直接会って面接をして、そこから絞って実技試験で3名ですね。実技試験は公開実技試験という形でストリーム配信を行いながらやるという形でした。

――ジョニィ氏、ハク氏、ヤマグチ氏の3名は2017年も忍ismの育成プロジェクトとして動いていく感じでしょうか?

ももち: はい、そうですね。当初は1年間育成の過程を通じて、年末で総括、その後によさそうな選手に対しては会社として支援を考えたり、育成企画としての継続を考えていたんですが。結果的に3名とも良い選手だったのと、やはり「1年じゃまだ”育成”とはいいきれんだろう、折角だから選手たちともっとじっくりと向き合ってみたい。」という”やってみてこそ”わかった自分たちの思いもありまして「これはもう3名とも継続で」という話に社内でもなりました。また、新たに追加の募集も考えていまして、この企画というか、試み自体をもっと大きくして行きたいので、新たに募集をして新しい子達も育てていこうかなと、そう思っています。


――トーナメントに出場して結果を出すというのは当たり前だと思いますが、自分が見ていると、チョコさんはもちろん、弟子のみなさんもTVに出演している印象も強かったです。具体的にはどういうことをしていたのでしょうか。

ももち: 実際の試合(トーナメント)に関しては、基本的に自分が技術的なことを教えています。TVのオファーというのは、人を通じての御紹介や、会社のホームページに直接TV局の方からお問い合わせ頂くなど、様々なケースがあるのですが、ありがたいことに我々の「育成企画」に興味を持ってくださっている事が多いです。

スマホゲーム全盛の時代に「(プロゲーマーに弟子入りして)ゲームに真剣に取り組んでいる若い子達の存在を広めたい」というのをTV側の方々も言ってくださっていて、そういった作り手側の方々の思いと、日本国内でもキーワードとして注目され始めている「e-Sports」というものが重なって、様々なお話を頂く機会が増えてきています。

我々にとっては企業活動をサポートしてくれている提携企業や所属チームの宣伝にもつながるという側面は無くもないのですが、お仕事やそういった機会をお受けする際の判断基準として「世の中に対して、ゲーム業界の外側の世界に対して、そのお仕事がプラスに成り得る機会かどうか」という所に気を付けて、TVやマスメディアへの露出についてはやらせて頂いてきました。やはり、自分たちのやっていること、やっていきたいことを業界の外に広めるためにはTVや新聞は最高の手段の一つだと思いますし、「ゲーム」そのものに対して少しでも世の中的にポジティブなイメージに繋がればと思い、自分もチョコも日頃から活動していますので。

チョコ: 弟子については、月に2~3回、日曜日に集まって、ももちと各自3人で配信後に練習すると言う形を取っています。個別の質問や相談、日々のコミュニケーションは随時SNS等を通じて行っています。日本国内の大会は出れるものは基本的に全て出るという方向で、各自の意思とスケジュールを尊重しています。大きな大会では毎年夏にアメリカで開かれている世界最大級のゲーム大会「Evolution」に弟子を含めた忍ism全員で出場しました。ジョニィについては経験を積んでもらう為、シンガポールの大会に出場をしてもらいました。

ももち: ハクとヤマグチは、まだ15歳で学業との両立があるので、親御さんへのご相談、ご報告などはもちろんのこと、バランスを取りながら進めてきたつもりです。

――事業として2016年はどうでしたか?

チョコ: 投資する年でしたね。弟子企画、イベント、私たちの活動。それぞれに対して、支援をしてくれる方々や企業様もいたのですが、実際のところは、多くの自分たちの時間と資金を投資してきました。それが今のEcho Fox移籍という結果に繋がったということもあるのですが、まずは「やらねば」という気持ちで、その時、その時で決断し、やり続けてきたつもりです。そういった限られた資金を投資する決断をする際でも、弟子たちは勿論、イベントに来てくれるコミュニティの皆さんのことや、ゲームに関わる多くの人たちの未来を想像して、常にポジティブに、自分たち自身も希望を描きながら決断をすることが出来たと思います。

――満足度はどうでしたか?

ももち: それはもちろん満足です。自分としてはもっとやれたというところはありますが、こうして良い形で2017年に繋げられたので、起業1年目にしては上出来かなと言う感じです。

チョコ: 今回Echo Foxから声をかけていただいた時に、ももちの選手としての実績を評価していただいたこともあるんですが、その一方で「ももちとチョコはコミュニティに対してすごく貢献する活動をやっていると思っている」と言われました。更には「忍ims」としての後進の育成や定期的なイベントの開催をすごく評価していただいて、プレイヤーとしての実績+会社としての活動の両方を評価して頂いた上で「契約したい」ということだったので、それがすごく嬉しかったです。

――ではお二人が今までやってきたことは正しかったということは、ある意味実感できた年であったわけですね。

ももち: そうですね。また今年も、今年が終わってみたらどうなるかなというところではありますが。

チョコ: 逆に上手く行き過ぎた感はありました。弟子企画も上手くいくかわからない、正直「人来るの?」という段階から始めてみて、1年経って終わってみると合格した3人以外にもすごく良い可能性に何人も出会えましたし、ゲーム業界、私たちのやっている格闘ゲームという種目に対して希望を持つことが出来ました。TOPANGAさんのはじめリーグ(若手リーグ)にもヤマグチが出場させていただき、結果として優勝できましたし。なんだかんだこう”流れ”が来ている感じで来ています。

ももち: Tokyo Offline Partyも参加人数がどんどん増えていて有難いかぎりです。とはいえ、毎回不安なんですけどね…「人来るかなぁ」と思っていますし、弟子もあらたに追加で募集をするんですけど「上手くできるかなぁ」と流れを感じている一方で常に不安はつきまとっています。


――『ストリートファイターV』(以下:『ストV』)自体はどうですかね?やっていますか?

ももち: シーズンも変わってPC版も最近は売れてると聞いていて、全体の流れは変わってきているかなとは思っています。自分の中では新たな気持ちでプレイできていますね。

――アーケードがなくなった影響は大きそうですか?

ももち: プレイヤー人口という面では元々アーケードが好きだった人達は「アーケードが好き」なので、そこまで『ストV』に熱くなれないという人はいらっしゃるとは思います。ただ、普段あまりゲームセンターに行かず、元々”オンラインが好き”だとか、近所にゲーセンがないけど”格闘ゲームは好き”という人たちはネット対戦のインフラが整っているこの状況で、熱狂してプレイしていると思います。

――e-Sports全体としてはどういう年でしたか?お二人は格闘ゲームメインだとは思いますが、それ以外のジャンルについても。

ももち: 国内でも「e-sports対応のタイトル」とその大会なんかも増えてきましたよね。とはいえその一方で、どうしても海外の「e-sports市場」と比べてしまうと、「これからなのかな」という印象は受けます。やはり視聴者も関連企業も、動くお金の金額含め海外の方が母数が大きいので、現段階ではプロプレイヤーたちは海外の市場での活躍を目指す方が合理的ですし、スター選手みたいな存在もタイトルに依存する部分はありますが、やはり海外での活躍と言うのはまだまだ必須かと感じています。
日本はこれから(日本のルールに則った)独自路線で盛り上がりが出来ていくのかな、という印象を受ける1年でした。

チョコ: 自分や周辺のことで言えば、TVに多く出させていただけたこともあり、個人的には実感をしているのですが「e-sports」というキーワードを通じて、それに関わる人たちや周辺の企業様などがゲーム業界外の方々から注目していただけたなと、感じています。かなりリーチが広がったみたいで、全然ゲームに興味がない友達のお母さんが見ていて連絡が来るとか、そういったところも変わってきたというのはありましたね。やはりTVやマスメディアに「e-sports」というキーワードが注目されたということは大きな出来事だったのではないでしょうか。

――2017年の忍ismとしてはどういうことを考えていますか?

チョコ: 2017年からは所属チームも変わりましたので、チームと協力してプロゲーマーとしてだけでなく、日本での忍ismとしての活動も強化していきたいというところです。まずは「スタジオをやる」ということで。

次ページ: 新たなスタジオ「スカイ」立ち上げの理由、由来は?



――スタジオスカイ設立の背景を教えてください。

ももち: 「ゲームと人を繋ぐ」という事を掲げて活動をしてきた中で今までは「国内イベント」という形でその「場所」をつくってきたつもりなのですが、新たに「手軽に、気軽にゲームの配信が出来る場所・ゲームと人の接点となる場所」をリアルに作ることで会社として掲げているコンセプトがより強く実現できるのではないかと考えました。

スタジオスカイのコンセプトの1つとして「日本のゲームコミュニティをこの場所から海外に発信する」ということがあります。この場所は日本の皆様に色々な用途で使って頂きつつも、その一方で 1 つの軸として「日本人が海外に発信をしていく場所」になったらいいなぁと思っています。

現在私たち自身も大手動画プラットフォーム等で動画配信をしておりますが、視聴者の方々は海外の方も少なくありませんし、また新たに所属することになった EchoFox もアメリカ(LA)のプロゲーミングチームです。こうした日本の外にいるけれども、日本のゲームコミュニティに興味を持ってくださっている方々にその様子をより伝えていけるようになればいいなぁと思ってます。

――この場所ではまず配信は行っていくという形ですよね。パーティーもやったりするんでしょうか?


ももち: そうですね。基本的には配信です。

チョコ:Tokyo Offline Partyという大きいイベントは別の大きい場所でやりますが、忍の会(対戦講習会)など小規模なイベントはここでやろうかなという感じです。もっとそういった「人が集まる機会」を増やしていきたいです。

――タイトルは『ストリートファイター V』をメインに考えていますか?

ももち: そういうことはないです。スマホゲームやボードゲーム・カードゲーム含め、広義でのゲームに関わる全てのものを歓迎し、応援します。

――例えば、ゲームの大会をしたいので、スタジオを貸してください!という人もレンタル可能ですか?

チョコ: ももちが言った通り、ハードやゲームタイトル・ジャンルに限らず、ゲーム全般を盛り上げようとしてくれている、コミュニティの拡大に繋がるような方には是非お貸ししたい、使って頂きたいです。

――一般・法人は問いませんか?

ももち: はい、もちろんです。一般・法人問いません。

チョコ: 基本はレンタルスペースみたいなイメージなので。

ももち: 本来の目的としてはそっちですね。

チョコ: 機材はひととおり揃えておりますので、配信で使って頂く場合と、あとはイベントスペースとして使って頂く場合と2つの使い方を考えています。


――スタジオスカイ設立の狙いは?

ももち: 今まで「配信場所・収録場所」といいますと、クライアント様や案件に関係する企業様のオフィスや関連施設をお借りして配信をさせて頂くことも少なくありませんでした。あとは毎回都内でスタジオを探して…みたいな。

そこで「だったら、いっそうのことそういう場所を自分たちで作ってしまおう」と、なりまして。機材選びから、場所から、雰囲気から、自分たちで「こういう場所で配信したい、番組を作ってみたい」と思える場所をつくってしまい、それを会社の新規事業にしてしまおうと。そういう狙いで今回スタジオを会社としてつくることにしました。「自分たちでこういうのがいい」というものを「自分たちで」つくったというのが今回のポイントです。

――「スカイ」の名前の由来は?

ももち: 名古屋に「スカイ」というゲーセンがありまして。

――あー、それなんですね!

チョコ: もう閉店してしまったのですが、闘劇に出るような選手がいっぱい通う聖地みたいなところで、私達が出会ったのもスカイですし、通っていたのもスカイです。そこでランキングバトルなどを毎週自分たちでやっていて。そこでイベントをしていたからプロになれたというある種の思い入れがあって、じゃあ東京でスカイ(それに当たる場所)を作っちゃおうよ、っていう。

ももち: すごいボロくて、アーケード筐体がいっぱい置いてある硬派なゲーセンでしたね。でもそこに集まるプレイヤーたちの熱量は凄かった。

――元スカイの店長さんを呼んだりはしないんですか?1日限定復活とか。

ももち: イベントで呼んだりはするかもしれません。名古屋のゲーセンなので、名古屋でやるとすごく人が来そうですけど。

チョコ: 東京にわざわざ来てもらうのは大変かもしれません。ですが、元スカイ店長も応援してくれていて「スカイっていう名前使うよ」とか、なんでスカイって名前つけたの?とか色々話しました。本当にみんなスカイが大好きでゲーセンに集まっていたので、そういうなにかの”はじまりの場所”になれればいいなと思っています。

――スタジオの正式稼働のタイミングは決まっていますか?

チョコ: 1月中にオープニングイベントをやってみようと考えています。忍ism企画の対戦会という形で、ももちとチョコがいて、弟子もいてみんなでやってみようか、という感じです。

――スタジオ内には、何名ぐらい入りそうですか?

ももち: 最大50~60人ぐらいは収容できると考えています。

チョコ: イベントとしては40人ぐらいですね。パブリックビューイングをやろうと思えば結構入ると思います。

ももち: 昔のゲーセンだと狭いスペースに300~400人ぐらい入っていて、すし詰めで酸欠になるようなのもありましたね。あとはアットホームな感じでやっていきたいです。内装も木などを取り入れてリラックスできるようにしています。

チョコ: 長く居ても居心地がいいようにしました。みんなから愛される場所になってほしいなって。

――スタジオスカイを通してどういったことを行っていく予定でしょうか。

チョコ: 私自身も世界各国のストリーマーやゲーム実況者、開発者の方々らと繋がりがありますので、そういった意味で「ストリーマーの仲間」というか「育成企画・挑戦企画」みたいなこともやっていければと思っています。折角こういった場所もありますし、私自身も今年は今まで以上に「配信」に力を入れたいですし、あと何より「海外の人たち」に向けてゲームを中心に配信してる日本のストリーマーってまだそこまで多くないと思うんですよね。だからその部分の可能性を一緒に追求していけるような仲間を募れたらなぁと思っています。あとは今も既にお世話になっている、各企業様、ゲームのプロモーションや何かの企画などで、是非スタジオスカイをご指名頂き、使って頂ければと考えています。

ももち: もちろん、ゲームに関わることは全て応援というか、やっていければと考えています。この場所を使ってのオフ会ですとか、何かのイベントをきっかけにプレイヤー同士が集まれる場所になってくれたらとも思いますし、今の弟子たちの練習場所としてですとか。

あとはゲームイベントって、自分たちも経験してきた中でやはり「開く側・運営する側」がすごく大変だなぁと思っているんです。皆さん兼業で、普段仕事をしながら、準備、エントリー、集客、機材調達、会場確保、設営、当日運営…みたいな、こういう本来はプロの代理店さんやイベント会社さんがやられるようなことを、お仕事をしながらされているという。我々のコミュニティはこういった個人個人の努力や苦労の上で成り立ってきた歴史があるので、出来れば「イベント企画運営=大変」というイメージの中で、それでも自分はやるぞという方々、イベントを企画・運営する方々を応援できるような仕組み、お手伝いが出来ればと考えています。

具体的には、我々が集客をお手伝いしたりですとか、イベントも、格闘ゲームに囚われずに一緒に出て、皆さんと実際にプレイしてみたりですとか、コミュニケーションさせて頂いたりですとか、微力ながらいろいろと出来ることはあると思っています。

――海外の放送を日本にローカライズしたものは結構ありますが、国内では日本の放送を海外へというのはあまり聞かないですね。

チョコ: 海外向けに対応しているのはウメハラさんらがやられている「BeasTV」ぐらいですね。

ももち: 同時通訳とか結構難しいというかハードルが高いと思うのですが、そのあたりも以前より応援をして頂いているTokyoOtakuModeさんや忍ismを応援して頂いている方々にご協力いただきながらやっていければと思います。

――海外に向けても発信していきたいと。

ももち: 自分たちのファンも海外のファンが日本の方々以上にすごく多く、所属しているチームもアメリカのチームなので。

チョコ: 忍ismは今までもそうだったんですけど、企業としては海外に向いている感じですね。開けている感じというのが正しいかも知れないですけれども。もちろん国内のコミュニティを盛り上げるために活動はしていますし、コミュニティへの感謝・アクションは惜しまず継続していくつもりなのですが、やはり自分たちもそうだったように「未来のスター」であったり「プロゲーマー」であったり「市場として考えた場合のe-sports」そして「ゲーム配信」というのをビジネス的に考えた場合でも、海外に向けて発信・アピールをしていくのが合理的だなと今は考えています。

2017年1月4日にEcho Foxとの契約が発表。
――Echo Foxについて教えていただけますか?移籍の話はいつごろ話があったのですか?

チョコ: ちょうど12月末がEvil Geniusesとの契約更新のタイミングだったんですね。そこで来年はどうしようかという話をし始めたんですが、その時にEcho Foxさんから話があって。私たちも色々と決断を迫られる中で、よく話し合ったうえで移籍を決めました。

EG脱退のニュースだけ先に公表になり、移籍先のEchoFoxの件はアメリカで公表されるまで匿秘ということになっていたので、一部の皆様にはご心配をおかけしてしまいました。アメリカのYahoo!のインタビューでもお答えしたのですがEGは凄く良いチームで、新たなCEOを迎え非常に前向きに、私たちによいお話をしてくれました。ですが一方で私たち2人のテーマとして「変化し続けること」というのがありまして、元所属チームが新たな節目を迎えるタイミングで自分たちも「新たな環境で挑戦してみよう」という気持ちになりました。

――『ストリートファイター V』ですが、カプコンカップの視聴者数はすごいですし、有名な選手もどんどんと出てきています。一方で、一般の人を見るとあまりプレイしている人がいないようにも思えます。そういうところを意識したことはありますか?専門的になるべきか、一般に開かれたほうが良いのでしょうか?どういう方向に向くべきでしょうか。

ももち: 自分はプロとしてやっている前提でおこたえしますね。自分としてはよくわからないです。両方あって良いと思います。今の『ストリートファイター V』のコンセプトとして、どんどん簡単になっています。『ストV』シーズン1で「初心者でも上級者に勝てますよ」というのがあったんですが、今はもっとそれが楽になっているといいますか、技術介入要素が減っています。その流れは色々な人が楽しめるという意味では良いと思うんですが、プロとしては技術介入要素が減り、自分より腕前の弱い人と技術的な差がどんどん付きづらくなると、あまり差が出せなくなってきて悲しいというか、練習する意味がそこまでなくなってしまうのかな、とも思ってしまいます。より多くの人にタイトルとして触って欲しいですが、それはそれで寂しいなと思います。

チョコ: 見ている側も『ウル4』の時は、ももちのケンはこういう個性がある、この人のこのキャラはこういう個性があるというのがあったんですが、『ストV』ではそれがなくなってきていて、観る側の人たち、とくに目の肥えた人たちがみても「すごい人のすごいプレイ」がわかりにくいとは思います。盛り上がるポイントが若干減ったのは個人的には寂しいですね。

ももち: それは難しいよね。やってる人の意見だからそうだけど、やってない人からの意見としては別かもしれない。

チョコ: まぁそうだね。クリティカルアーツが決まっていれば「うわ、すごい技が当たった」って思うかもしれないし。

――1つの試合の時間を短くなるようにしています、と『ストV』プロデューサーの杉山さん、綾野さんがおっしゃっていましたが、感覚としては短くなりましたか?

ももち: 相手に攻撃を当てたり、ダウンを奪ったりという攻防はスピーディーになっています。倒れている時間が『ストIV』は長く、1回キャラクターが倒れたら2秒ぐらい倒れていて、その間に倒した側がどう攻めるかというのがあって、そういうのは逆に分かりやすかったんですが、『ストV』は倒したら1秒ぐらいで起き上がってきます。そういう意味では試合展開(テンポ)は早くなっていますね。

――解説とか厳しそうですね。

ももち: そうですね。実況は流れで言えるので可能だと思うんですが、解説の場合は解説中に次の攻防・駆け引きが始まっているので大変ですね。

――ももちさんは選手としての活動は今年も継続ということですね。

ももち: はい、もちろんです。


――育成して、運用して、配信をして、しかも選手をして、さらにご夫婦で、というのは他では類を見ませんが、色々なものを両立しながらしていく中で、一番難しいところはどこでしょうか?

チョコ: 基本的に楽しいですよ、楽しめているからこそ続いています。自分たちがやりたいことをやっていますし。ただ、やることが重なりすぎて、タスク的に「もう回んない!」っていう時は爆発しますけど(笑) 。でもスタッフのみんなに本当に助けてもらいながらなんとか両立できています。

ももち: 1人ではできないですね。今やっていることの多くは、やはり会社だからこそ、スタッフや周りの応援頂ける企業様があってこそできていると痛感しています。それを1人でやろうと思ったら無理だと思います。

チョコ: 私としては仲間をもっと増やしたいなと思っています。ただ、自分たちと同じ考えで同じ熱量で戦える「仲間」が欲しいんです。今後もっと色々やっていく前提で、いろいろな人、多くの人に関わってもらいたい…でも人の採用、仲間探しは本当に難しいですよね。

ももち: 人が増えるというのは大変ですね。やること、やれることはどんどん増やしていきたいですし、大きくしていこうと思ったらそれだけ関わってくる人も増えてくるのは当たり前なんですけど。会社としてはコスト面はもちろん人が増えれば増えるほど様々な課題や問題も出てきます。このあたりは勉強しながら挑戦していかないといけないですね。「人」に支えられている会社としての活動だけれども、やはり、「人」の部分は難しいです。

――読者の方にメッセージをお願いします。

チョコ: スタジオスカイをベースに、弟子企画、コーチ職の設置、日韓交流戦の3つを基盤に、2017年も引き続きコミュニティを盛り上げ、海外・世界に向けて頑張っていきたいと思っています。

ももち: やらなければいけないことはすごく増えました。自分達はまだまだ小さいですが、もしかすると今年は大きな動きがあるかもしれません。もっと注目されるように仕掛けていきますので、2017年、株式会社 忍ismを注目しておいてください。今のうちにチェックしておくと、「俺、この人達知ってたよ」って周りに自慢できるかもしれません(笑)、

――読者のみなさん、知ってると思いますよ?(笑)

ももち: 本当ですか(笑)。でも事業内容も含め、初めて知ったという方もいると思うので、注目しておいてください、ということで!

――わかりました。本日は、ありがとうございました。

ももち・チョコ: ありがとうございました。

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日本国内だけでなく、ワールドワイドでの「ゲーム文化」の拡大に努めるももち氏とチョコ氏。今後スタジオスカイを軸にどのような活動を行っていくのか注目です。

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《森元行@Game*Spark》

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