2016年12月に行われたテニスイベント「ADIDAS HIMARAYA TENNIS FESTIVAL 2016 TOKYO FINAL」では子どもたちへのクリニックやエキシビジョンマッチに参加。ファンたちと汗を流してテニスを楽しむ内山選手を訪ね、2016年シーズンの振り返りと選手生活について聞いた。(聞き手はCYCLE編集部・五味渕秀行)
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内山靖崇選手
---:2016年、前半はケガもされて苦労も多いシーズンになりました。内山選手にとってどんな1年でした?
内山靖崇選手(以下、敬称略):前半はなかなか勝てなくてランキングも下がり、いろいろ試行錯誤してもうまくいかないことも多かった。それでも腐らず練習を続けていった結果、夏ごろからうまくかみ合って、試合でもいいプレーができるようになって、勝てるようになりました。
そこからいい循環になって、夏以降は自分よりもランキングが上の選手にも勝てる試合が増えたり、試合数も勝つことによって増えてきた。夏からは、自分としてはいいシーズンだったと思います。
---:点数をつけるとしたら、何点くらい?
内山:う~ん…50~60点ぐらいですかね。やっぱりシーズンが始まる前に目標としていたランキングに届かなかったので、そこがよくなかった。夏のころを考えると、今のランキングに戻せたのは良かったと思います。
---:内山選手はダブルスの試合も多いですが、シングルとの違いや気をつけていることはありますか?
内山:シングルスは自分らしさを。自分ひとりなので、自分の得意な所をガンガン出せるようにしています。サーブとフォアハンドが得意なので、サービス中心にフォアハンドも入れつつ、アグレッシブなプレーをするのが自分の持ち味。それをどれだけ出せるかというのが一番気をつけている所です。
ダブルスに関してはパートナーがいますし、相手もふたりいる。すべてが自分のやりたいようにできるわけではないので、ダブルスは自分がガンガンやるよりはパートナーの良さを引き出しながら、バランスを取るようにしています。あまり陣形が崩れないように、チームとしてふたりでいいプレーができるように注意しています。
---:ダブルスで組む相手はどのように決めるのですか?
内山:そのときそのときですね。直前まで決まってないときもあります。トップレベルのツアーはエントリー式もあるのですが、その1コ下の(カテゴリーの)チャレンジャーとかはサインなんですよ。
会場でこの人とこの人が組みますと名前を書いて、それで(試合の枠に)入れるか入れないかなので、サイン締め切りの数分前まで決まってないこともあるぐらい。あらかじめ話し合って、この人と組みたいなと思って約束することもありますけど、直前で決まることもあるので、ある意味誰とでも組めるようになっておくのが大事なことなのかなと思います。
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2016年3月のデビスカップでは西岡良仁選手(左/ミキハウス)とペアを組んだ
(c) Getty Images
---:サインした段階でもわからない?
内山:サインしても何ペアしか出られないというのがあるので。ランキング順で入れる順番が決まっていくので、このパートナーとだったらサインしたけど入れなさそうと思ったら、もっとランクの高いパートナーをそこから探したりとか。
その(最初の相手の)人に『ゴメン』と言って、『他の人探したから…』って。ツアーでは日常茶飯事で、直前で決まって打ち合わせしてすぐ試合とかしょっちゅうあります。だから、全然知らない初対面の人と組むことも稀にあります(笑)。
---:初対面ではコミュニケーションの部分でも難しいことがありそうですね。
内山:そうですね。だけど、それもうまくできる人がツアーのダブルスでも勝つ秘訣なんじゃないかなと。
---:内山選手は海外転戦も多いですが、年間どれくらい海外で生活していますか?
内山:去年の4月頃からスペインのバルセロナに拠点を置いています。ヨーロッパで試合があるときはそっちから飛んだりしているので、日本にいるのは3カ月ないぐらいじゃないかな?
秋ぐらいからアジアの試合が増えて、日本でもありますし、比較的日本に帰ってくる機会は多いんですけど、夏場はヨーロッパが多いですね。
---:海外生活中心なんですね。食事で気をつけてることは?
内山:日本で食べている食事を、(海外で)同じようにするのは正直難しいケースが多いです。完璧を求めない、求めすぎないように。気にしすぎるとストレスになりますし、最低限、野菜とか肉、炭水化物をバランス良く食べるようには気をつけています。
---:日本から常に持参して使う調味料とかありますか?
内山:特にないですね。スペインの家に持っていったりはしていますけど、遠征中に何かを持っていくことはないですね。
---:基本現地のものをそのまま食べる?
内山:はい。それに合わせる生活をずっとしているので。
---:オフシーズン中のトレーニングは何をしてますか?
内山:普段はすぐ何日後とかに試合があるので、体を次の試合のことを考えて追い込みたいけど、ちょっと余力を残さないといけない。逆にオフシーズンだとウエイトトレーニングだとか走り込みとか、よりハードに負荷の大きなトレーニングが多くなりますね。
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テニスイベントに参加した内山選手
---:内山選手は子どものころに今回のようなイベントに参加したことは?
内山:ありますね。小学校の頃とかプロの選手が来て目の前にいるだけでも緊張するというか、『わあスゴい』と思ったり、そんな感じだった(笑)。今は逆の立場になって、そういったものをジュニアに与えられたらいいなと思います。
---:イベントにはテニスクリニックがありましたね。一般レベルでよりテニスを上達させるには、どこを鍛えるといいと思いますか?
内山:一番気をつけてほしいのはバランスですかね。テニスは強く打ちたいけどコートの枠のなかに入れなくちゃいけない。それを繰り返さないといけない。
バランスのいいフォームや自分の打ちやすいフォームを探してもらって、無理なく、なおかつ効率のいい力のあるボールを打てるのが長く続けられるラリーだとか、テニスというものを楽しむ上でも大事なこと。力ばっかりだとか、何かに偏るというよりは、全体的にバランス良くやってもらいたいなと思います。
---:2016年3月の国別対抗戦デビスカップのダブルスで、現男子世界ランキング1位(試合当時は2位)のアンディ・マレー選手(英国)と対戦しています。トップ選手を目の当たりにした感想は?
内山:試合でそこまでトップの選手とやったことがなかったので、まずはファーストサーブの、スライスサーブのキレだとか、コースの精度にビックリして。リターンとかも精度が高いので、自分がサービスを構えていても、どこに打てばどこにボールが返ってきてポイントが取れるっていうイメージがほとんど湧かなかった。
強い選手の雰囲気もものすごく感じました。実際ショットもかなり高いレベルでコントロールされていたので、どうやってポイント取ればいいんだろうって気持ちにさせられましたね。
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デビスカップで英国のアンディ・マレー(左から2人目)らと対戦
(c) Getty Images
---:その対戦も踏まえて、2017年シーズン以降より強化していきたい所は?
内山:プレーの内容は2016年シーズン後半からすごい良かったので、今のプレーの質だとか継続できる体力をより身につけられるように。
何か大きく変えるというよりは、今の持っているものをより大きくしていくこと。それでさらにランキングを上げて、マレー選手だとか高いレベルの選手とどれだけ試合をやったり、練習したり、経験を詰めるかが大事になってくると思います。大会としては四大大会、その本戦でプレーしたいです。
---:子どもたちへのメッセージをお願いします。
内山:錦織(圭)選手が活躍していることもあって、テニスもすごい注目してもらえています。テニスをやってくれる子どもたちもどんどん増えてくると思う。
個人スポーツですけど、みんなが楽しくテニスをやって、そのなかでどうやったらうまくなれるか、強くなれるかをそれぞれ真剣に熱心に考えてくれたらテニスという競技がどんどん広がっていきます。熱意を持ってテニスを楽しんでもらいたいなと思います。
●内山靖崇(うちやま やすたか)
1992年8月5日生まれ、北海道出身。北日本物産所属。2016年度男子テニスナショナルチームメンバー。テニス全日本選手権は2012年にダブルス(内山靖崇/田川翔太ペア)、2015年はシングルスで優勝。