【THE SPIKE】ブルペン陣は侍ジャパン史上最厚…WBC王者奪還のカギは権藤博の手腕 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE SPIKE】ブルペン陣は侍ジャパン史上最厚…WBC王者奪還のカギは権藤博の手腕

オピニオン コラム

秋吉亮 参考画像(2016年11月13日)
秋吉亮 参考画像(2016年11月13日) 全 4 枚 拡大写真
「ワールド・ベースボール・クラシック2017」(WBC)がいよいよ3月7日に開幕する。本日2月23日~26日にかけてWBC強化合宿が始まり、2月28日及び3月1日には台湾プロ野球選抜との壮行試合が行われる。

日本全国の野球ファンが世界一奪還を期待している同大会は、2013年より野球日本代表・侍ジャパンの指揮を執る小久保裕紀監督の集大成となる。

昨年11月に行われたオランダとメキシコとの強化試合では計4戦で29失点と投手陣が崩壊。注目されたメジャーリーガーの招集は青木宣親(ヒューストン・アストロズ)のみで、投手陣にいたっては田中将大(ニューヨーク・ヤンキース)、ダルビッシュ有(テキサス・レンジャーズ)、前田健太(ロサンゼルス・ドジャース)、岩隈久志(シアトル・マリナーズ)ら全てのメジャーリーガーが参加を見送った。

さらに負の連鎖は続き、先発ローテーションの核として期待されていた大谷翔平(日本ハム)がまさかの辞退。決戦を前にして、「大丈夫か?侍ジャパン」という雰囲気が漂っていることは否めない。


■ブルペン陣は侍ジャパン史上最厚

大谷という大黒柱が抜けたことで、特に先発投手陣に対する不安を持つファンも多いだろう。確かに大谷という絶対的な存在がいるにこしたことはないが、代わりに招集された武田翔太(ソフトバンク)は国際試合で常に安定した力を見せており、大きく縦に落ちるカーブは初見の打者にはやっかいな球だ。外国人打者のバットが空を斬るシーンが想像できるし、本来の実力を発揮できれば、どの国が相手でも先発としての役割を十分に果たしてくれるだろう。

そして、今大会で選出されたメンバーを見る限り、ブルペン陣は「侍ジャパン史上最厚」ではなかろうか。小久保監督は、先発、第2先発、セットアッパー、クローザーのバランスを重視したことを強調していたが、過去の大会と比べてもバランスは最もとれているかもしれない。

WBC2013ではクローザーに抜擢された牧田和久
(c) Getty Images

昨年11月に行われた強化試合では安定感抜群の投球を見せた変則サイドスローの右腕・秋吉亮(ヤクルト)、常勝日本ハムを長年支え続けるセットアッパーでありサイドスローの左腕・宮西尚生(日本ハム)、同強化試合では走者をためた場面で登板し、飄々とした投球でピンチを切り抜けた売り出し中の左腕・岡田俊哉(中日)、前回の「WBC2013」ではクローザーとして結果を残し、西武では先発もセットアッパーの経験も持つアンダースローの右腕・牧田和久(西武)、今回のメンバーでは最もクローザーとしての経験値の高い平野佳寿(オリックス)、楽天の若きクローザー・松井裕樹(楽天)らが名を連ねている。

右・左のバランスもいいし、アンダースローの牧田がいて本格派の平野もいる。秋吉と宮西はそれぞれにクセのあるサイドスローで初見の打者にとってはとらえにくいだろう。実にバリエーション豊かなブルペン陣だ。

さらには、クローザーとしての経験も持つ増井浩俊(日本ハム)、セットアッパーとしての経験も持つ千賀滉大(ソフトバンク)もメンバー入りした。この2選手は先発もしくは第2先発として位置づけされていると思うが、いざという時に後ろも任せられるだけの経験を持っている。

シーズン通りの投球を見せた岡田俊哉
(c) Getty Images

WBCでは球数制限があり第2先発を担う投手の確保が課題となるため、これまでの大会でも先発投手が多めに呼ばれる傾向にあった。しかし、2015年11月に行われた「WBSCプレミア12」準決勝・韓国戦での継投失敗(ブルペンワークの失敗)がいまだに侍ジャパンの首脳陣の脳裏に深く刻まれているのだろう。あの悪夢の敗戦が、ブルペン陣に厚みをもたせることに少なからず影響しているはずだ。小久保監督は、こう語っている。

「あの日の敗戦が頭から消えた日はない」


■投手陣を操るのは、球界随一の名伯楽

充実したブルペン陣があっても操ることができなければ意味はない。そこを任されているのが球界随一の名伯楽とも言われる権藤博投手コーチだ。名伯楽とは、優れた資質を持った人を見抜く力のある人物とされ、「伯楽」とは古代中国の伝説的な馬の目利きの名前である。

プレミア12で敗れた直後に小久保監督と電話で話していたという権藤氏。「野球は勝つか負けるかなんだから」と、球界の後輩に対して負けても顔を上げるようにと声をかけていたそうだが、そんな会話の最中に小久保監督から直々に「権藤さん、ピッチングコーチをお願いできませんか」との打診があったという。

当時77歳という年齢で受けた大きな打診に、「この年で必要とされる。それも日本代表。こんな光栄なことはない」と侍ジャパン投手コーチの大役に身震いしたという。権藤氏は小久保監督から依頼を受けた翌日、快諾した。

投手起用の達人、権藤投手コーチ
(c) Getty Images

権藤氏は、これまでに多くの球団で投手コーチを歴任し名投手を発掘し育成。1998年には監督就任1年目にして横浜ベイスターズを38年ぶりの日本一に導いたわけだが、その成功要因のひとつとして、五十嵐英樹、島田直也、阿波野秀幸、関口伊織らの中継ぎにもローテーション制を導入するという画期的な投手の起用法があった。

また、手取り足取り指導するコーチが多い中、選手の自主性を尊重する。超一流の選手が集う侍ジャパンに相応しい指導者と言えるだろう。

人心掌握にも優れ、選手からの人望は昔も今も厚い。横浜ベイスターズの監督時代、「監督」と呼ばれることを嫌い、そう呼んだ選手に対して罰金(1回呼ぶごとに1000円支払う)を課していたことも有名な話だ。選手やスタッフらは「権藤さん」と呼ぶことで、よりいっそうの親近感が必然的に生まれ、チームもまとまる。

例えばこんなシーンがある。権藤投手コーチと侍ジャパンの投手陣との良好な関係性が伝わってくる写真だ。


昨年の強化試合期間中に撮影された写真でツイートの投稿主は強化試合で侍ジャパンに招集されていた山崎康晃(DeNA)である。中央でダンディーに腕を組むのが権藤投手コーチ。まわりの選手らもリラックスした表情を見せている。


■座右の銘は「Kill or be Killed(殺るか、殺られるか)」

権藤投手コーチの座右の銘は「Kill or be Killed(殺るか、殺られるか)」。横浜監督時代、開幕ベンチ入りした投手全員に、この言葉を書き込んだボールを手渡したという。

プレミア12敗戦後、小久保監督に対して「野球は勝つか負けるかなんだから」と声をかけたことは前述したが、勝負事には常にそれほどの覚悟が必要だということだろう。殺るか、殺られるか……国の威信をかけた一発勝負のWBCはまさにその舞台になる。

権藤投手コーチは投手に対して技術的なことはあまり言わない。一方で、投手が投げる時の気持ちの持ち方については何回でも厳しく檄を飛ばすという。

「アウトを3つとるまでは絶対に気を抜くな」「2アウトからが大事。トドメをさすときほど慎重に投げろ」。

プレミア12の敗戦後、運命に導かれるように侍ジャパンの投手コーチに就任した権藤氏。小久保監督は今回のメンバー発表会見時、「投手を中心とした守り勝つ野球」を掲げたが、その影には権藤投手コーチに対する絶大な信頼が見え隠れする。

WBC王者奪還のカギは、権藤投手コーチの手腕にかかっていると言っても過言ではない。



過去のWBCに選出された投手陣は以下の通り。カッコ内は当時の所属チーム。

(WBC2006:第1回大会)
石井弘寿(ヤクルト)
上原浩治(巨人)
大塚晶則(レンジャーズ)
小林宏之(ロッテ)
清水直行(ロッテ)
杉内俊哉(ソフトバンク)
藤川球児(阪神)
藤田宗一(ロッテ)
松坂大輔(西武)
藪田安彦(ロッテ)
和田毅(ソフトバンク)
渡辺俊介(ロッテ)

計12名

(WBC2009:第2回大会)
ダルビッシュ有(日本ハム)
馬原孝浩(ソフトバンク)
田中将大(楽天)
涌井秀章(西武)
松坂大輔(レッドソックス)
岩田稔(阪神)
岩隈久志(楽天)
藤川球児(阪神)
内海哲也(巨人)
小松聖(オリックス)
渡辺俊介(ロッテ)
山口鉄也(巨人)
杉内俊哉(ソフトバンク)

計13名

(WBC2013:第3回大会)
能見篤史(阪神)
杉内俊哉(巨人)
内海哲也(巨人)
攝津正(ソフトバンク)
山口鉄也(巨人)
牧田和久(西武)
大隣憲司(ソフトバンク)
涌井秀章(西武)
森福允彦(ソフトバンク)
澤村拓一(巨人)
前田健太(広島)
田中将大(楽天)
今村猛(広島)

計13名

(WBC2017:第4回大会)
松井裕樹(楽天)
菅野智之(巨人)
秋吉亮(ヤクルト)
則本昴大(楽天)
宮西尚生(日本ハム)
藤浪晋太郎(阪神)
増井浩俊(日本ハム)
石川歩(ロッテ)
武田翔太(ソフトバンク)
岡田俊哉(中日)
牧田和久(西武)
千賀滉大(ソフトバンク)
平野佳寿(オリックス)

計13名

《浜田哲男》

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