1次ラウンドを全勝で勝ち上がると、激戦区と言われた2次ラウンド・プールFも3戦全勝で突破したプエルトリコ。決勝で敗れた4年前の雪辱を果たすため本気でWBC制覇を狙っている。
■ベテランと若手が融合した総合力の高いチーム
2次ラウンドで前回王者ドミニカを破ったチームは、“現役最強捕手”ヤディアー・モリーナを中心によく組織されている。
攻守の要であるモリーナに、若くパッションあふれる内野陣、そして頼れる4番打者カルロス・ベルトランの存在。野手に関しては隙きのない構成だ。
スイッチヒッターでメジャー通算400本塁打を放っているベルトランは、今大会も打率.471、5打点をマーク。出場した5試合すべてでヒットを打ち、4試合で打点を記録している。
ここまで9本のホームランを放っているプエルトリコ打線だが、2次ラウンドのアメリカ戦では徹底した逆方向への打撃でマーカス・ストローマンを攻略。『チームの勝利』を第一に全員がまとまっている。
■ドミニカの重量打線を封じた巧みなリード
野手に比べて投手はどうなのかとも言われたプエルトリコ。だが、ここまでの6試合ではモリーナが巧みなリードを見せ、投手陣の実力を引き出している。
1次ラウンドのベネズエラ戦で先発したセス・ルーゴは、「ゲームプランについて心配することはなかった。モリーナが構えてるんだからね」と絶対的な信頼を口にした。モリーナのミット目がけて自信満々で投げ込んでくる投手陣は脅威だ。
ドミニカ戦では元ヤクルトのオーランド・ロマンを先発させたプエルトリコ。正直これはサプライズ起用だったが、モリーナはロマンを巧みに操縦してドミニカの重量打線を1失点に抑える。そこから2番手、3番手、4番手と徐々に良い投手を出していく尻上がり継投で最後までドミニカを封じた。
これは一番良い投手を最初に出してしまい、次に出てくる投手がそれよりも格落ちする尻すぼみの継投より攻略されにくい。
■ストライクゾーンを支配するキャッチング技術
ドミニカ戦のモリーナはリードで投手を導くだけではなく、何度も巧みなフレーミングで際どいボールを球審にストライクと言わせた。あまりにも球審がモリーナに欺かれ続けるため、試合終盤にドミニカのトニー・ペーニャ監督が激怒して退場処分になっている。
●【WBC2017】光った名捕手モリーナの技術、ドミニカ打線と球審を手玉に取る巧さ
ゴールドグラブ4度受賞の名捕手だったペーニャ監督をして、「今日の試合はモリーナが支配権を行使した」と言わしめた。
アメリカ戦でもやはりアンドリュー・マカッチェンがストライク判定に抗議。六回に退場処分となった。アメリカはマカッチェンの代わりにジャンカルロ・スタントンを外野守備につかせたが、結果としてこれが勝負のアヤになった。
アメリカは3点を追いかける九回に2点を返し、なおも2アウト三塁のビッグチャンス。だがここで打順はこの試合ノーヒットのジョシュ・ハリソン。三振に倒れてアメリカは敗れた。もしベンチにスタントンが残っていれば、長打を期待して代打に送りたい場面だった。
準優勝に終わった前回大会の雪辱を果たすため万全の準備をしてきたモリーナ。エドウィン・ロドリゲス監督も「このチームの心臓部。よくビデオを見てゲームプランを練っている」と語る。
現役最強捕手が新たな勲章を手にして母国に野球世界一の栄冠をもたらすか。
F組MVPに選ばれたのは、プエルトリコのヤディアー・モリーナ。おめでとうございます!#WBC2017 pic.twitter.com/pWVwSq80R5
— MLB Japan (@MLBJapan) 2017年3月19日