大会前、強化試合では投手陣は打ち込まれる場面が目立ち、期待されたメジャーリーガーは辞退が相次ぎ、さらには今大会の侍ジャパン最大の注目株であった大谷翔平(日本ハム)のケガによる辞退も重なり、戦前の侍ジャパンには概ね厳しい視線が送られていた。
それでもやはり、日本人は野球が好きなのだ。開幕のキューバ戦を皮切りに勝利を重ね、終わってみれば、1次ラウンド・2次ラウンドを通じて6戦全勝。劇的な勝利も相次ぎ、強い侍ジャパンを見せつけることができたのも確かに大きい。しかし、そうでなくとも戦いの舞台となった東京ドームには、初日から異様なまでの熱気が渦巻いていた。
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異様なまでの熱気が渦巻く
当然、国際試合ならではの独特の雰囲気はあるのだが、東京ドームを360度埋めつくしたファンの熱気、声援は凄まじいものがあった。守備位置につくごと、打席に入るごとに降り注いだ大音量の声援。すべての選手の魂を震撼させ、勇気づけたのではないだろうか。
一方で、逆にプレッシャーにならないのだろうかとも思わせるほどの声援だった。相手国が攻撃中は、ドームが静寂に包まれるのだからなおさらだ。
「必ず世界一を獲る」
世界一奪還に向けて選手とファンがまぎれもなく一体となっていた。
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侍たちに魂のエールが送られる
東京での最後の戦いとなったイスラエル戦後、全6試合で4番に座って毎試合のように活躍を見せた筒香嘉智外野手(DeNA)は、「東京ドームでは本当にたくさんの声援をいただいた。その声援に恩返しするために世界一を獲りたい」と誓い、アメリカへと向かった。
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筒香嘉智はファンへの恩返しを誓う
(c) Getty Images
■侍ジャパンへ帰還した青木宣親への大声援
メジャーリーガーから唯一の参加となった青木宣親外野手(アストロズ)。打席に入ると、地鳴りのような大声援が送られた。
第1回WBC、第2回WBCに出場し連覇に貢献した青木。WBC参加の理由について、「アメリカで戦っているなかで、自分が日本人であることを強く感じる機会が多くて、日本代表として選ばれるのであれば、ぜひ出たいと思う」と語っていた。
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日の丸を背負う戦いを望んだ青木宣親
(c) Getty Images
そんな青木を歓迎する気持ちや感謝の気持ち、かつて第1回WBC、第2回WBCでイチロー外野手(マーリンズ)がそうだったように、青木に侍ジャパンを牽引する役割を期待してのものなのか、とにかく侍ジャパンの応援に駆けつけたファンのさまざまな想いが一気に解き放たれたような魂の声援が青木に注がれた。
東京ドームに、ヤクルト在籍時代の懐かしい青木の応援歌がこだまする。
(前奏:ここで勝利を呼べ いくぞ 青木宣親)攻めろ青木 世界に輝くNo.1 疾れ宣親 明日への扉を開け
2010年より、青木はミスタースワローズの称号ともいえる背番号「1」(現在は山田哲人が背負う)を背負うことになり、その時に作られた応援歌だ。
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青木宣親の応援歌でドームがヒートアップ
「青木の応援歌、めっちゃ懐かしい!神宮球場でよく歌ったよ」と言いながら懐かしむ、おそらく昔からのヤクルトファンの男性。「この応援歌、盛り上がるから好き」などと言い合う、侍ジャパンのユニフォームを着た若い女性たち。応援団の大合唱につられて一緒に歌って楽しんでいるオーストラリア人。ペナントレース中には見られない国際大会ならではの光景だった。
■東京ドームは侍ジャパン一色
第1次ラウンド・第2次ラウンドの期間中は各日、12時より日本代表戦以外の試合が行われていた。スタンドの観客はまばらながらも、中国代表やキューバ代表など、他国の代表選手の動きを食い入るように見つめる生粋の野球ファンの姿が散見された。
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中国対キューバ戦
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中国の応援団
東京ドームの屋内外にはWBC期間中のアトラクションが設けられ、昼間から賑わいを見せていた。
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スピードガンチャレンジ
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バッティングゲーム
日が暮れていき侍ジャパンの試合時間が近づくと、東京ドーム周辺は黒山の人だかりに。侍ジャパンのユニフォームやマフラーなどで身をつつんだ、あらゆる世代のファンが次から次へと押し寄せた。
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試合開始直前、球場に詰めかけるファン
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ゲート前の広場も混雑
侍ジャパンのオフィシャルグッズ売り場も大盛況。聞けば、マフラーとタオルが一番の売れ筋のようだ。ユニフォームは坂本勇人内野手(巨人)と筒香嘉智外野手(DeNA)が特に売れているという。
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オフィシャルグッズ売り場も大盛況
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売れ筋のタオル
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パーカーも人気アイテム
3月7日のキューバ戦から3月15日のイスラエル戦までの期間中、連日多くのファンが大挙して押し寄せ、異様な熱気に包まれた東京ドーム。6戦全勝というこれ以上にない結果の背景には、少なからずファンの熱い声援が作用していたはずだ。
戦いの場をアメリカにうつしても、魂のエールは選手一人ひとりの心の中で響き続けるだろう。