【THE REAL】逆境でこそ輝きを放つ本田圭佑のぶれない生き様…日本代表に必要な鋼のメンタル | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE REAL】逆境でこそ輝きを放つ本田圭佑のぶれない生き様…日本代表に必要な鋼のメンタル

オピニオン コラム
本田圭佑 参考画像(2017年3月23日)
本田圭佑 参考画像(2017年3月23日) 全 5 枚 拡大写真
■ACミランでも日本代表でも失った居場所

どんなに強烈な逆風が吹き荒れても、すべてを真正面から受け止める。どんなに厳しい批判にさらされても絶対に目をそらさないし、耳もふさがない。本田圭佑は昔もいまも、これからも生き様を変えない。

「何も言われないことが、僕は一番嫌なんです。批判されることはむしろありがたい。見返してやりたいという気持ちがなくなってしまえば、サッカーをやめるべきだと僕は思っているので」

不敵な笑みさえ浮かべながら、捲土重来を期していたのは昨年11月。オマーン代表との国際親善試合、サウジアラビア代表とのワールドカップ・アジア最終予選に臨むハリルジャパンに招集されたときだった。

もちろん、本田とて生身の人間だ。自らが直面する苦境に対して忸怩たる思いを抱いているし、だからこそ口を突いて出てくる言葉のなかには、虚勢を張っているものも含まれていると素直に認める。

「自分で強がって発言するだけではなく、周囲から『本田はパフォーマンスをあげてきた』とか『明らかに本調子に戻った』と言われなきゃいけない、ということも重要だと認識している」

5ヶ月近い時間が経過したが、所属するACミランにおける状況はさらに悪化した。今シーズンのセリエAでは昨年末までに5試合、95分間だったプレー時間が、1月以降はともにゼロのままだ。

日本代表でも失いつつある居場所
(c) Getty Images

ハリルジャパンでも右ウイングを23歳の久保裕也(ヘント)に奪われた。UAE(アラブ首長国連邦)、タイ両代表に連勝した3月シリーズでは、成長著しい久保が2ゴール3アシストの大活躍を演じた。

2010年のワールドカップ・南アフリカ大会から大黒柱を担ってきた、日本代表でも失いつつある居場所。それでも本田は、久保に象徴される若手の台頭を「嬉しいですよ」と歓迎する。

「別に僕に危機感がないということではなくて、これがサッカーにおけるスタンダード。何ら不思議なことではないし、むしろ日本代表がそれくらいのレベルになってきたととらえていいと僕は思う」

■日本代表で繰り返されつつある世代交代の歴史

ここで本田が言及した「それくらい」とは、世代交代とリンクする。岡田ジャパンで不動の司令塔を担っていた中村俊輔(現ジュビロ磐田)に、大胆不敵にも真っ向から挑戦状を叩きつけたのが本田だった。

当時の本田はちょうど23歳。くしくも久保と同じだからこそ、歴史は繰り返されると感じずにはいられない。もちろん、本田はこのまま白旗をあげるつもりも毛頭ない。徹底して抗ってみせると公言する。

「逆に僕がここで(久保と)競り合うことができて、もう一回ポジションを取り返すことができるような状況を作れば、日本代表がもっといい感じになるんじゃないかと思っている」

まずは出場時間を増やしていくこと
(c) Getty Images

逆襲に転じるためには、所属クラブでの出場時間を増やしていくこと。その過程で、プレーの切れ味を取り戻していく作業が必要不可欠となる。言うまでもなく、それ以外の近道もない。

しかしながら、ACミランに所属する限りは、現状は変わらない。ヴィンチェンツォ・モンテッラ監督の構想から完全に外れていることがわかっているからこそ、余計に歯痒さを募らせる。

「日本代表で先発として出られない要因のひとつは、チームで出ていないこと。この状況を打開する場もなかなかないので、みなさんも『本田はどのようなプレーをするのか』というのがおそらくわからない。普通に出て点を取って、これくらいはできると示すことができれば、チャンスは増えてくるのかなと思う」

チーム内で干されている現状を潔く認めながらも、プライドは失ってはいない。試合に出ていないから、という言われ方を、6月で31歳になるこの男はもっとも忌み嫌う。

「結局は頭のなかをどのようにもっていくか、なんです。自分が試合に出ていないから体力に不安があるんじゃないか、ボールタッチの感覚を失っているんじゃないか、試合勘がないんじゃないかという言葉が、脳のなかに入ってくることが問題。自分の精神的な状態が、実際のプレーに反映されてしまうんです」

■昨夏と今冬の移籍市場で動かなかった理由

日本代表を率いるバヒド・ハリルホジッチ監督からは、幾度となく出場機会のあるチームへの移籍を勧められた。昨夏、そして今冬の移籍マーケットで、それでも本田は動かなかった。

「誤解してほしくないのは、別にミランにしがみついているわけではないということ。望んだ移籍がかなわなかったからこそ、まだミランにいるという状況下なので」

こう語っていた昨年11月と同じく、今冬に届いたプレミアリーグのハル・シティからのオファーも、望んだものではなかったのだろう。構想外とわかっていても、あえてミランでのレベルの高い練習を選んだ。

「ミランで外されている理由は、自分のなかで納得はできている。カカやマリオ・バロテッリ、フェルナンド・トーレス、ステファン・エル・シャーラウィと、いろいろな名選手たちが困難な時期から何とか抜け出そうと一丸になって戦ってきたけど、誰しもが乗り越えることができなかった。

ACミランではピッチに立てない日々
(c) Getty Images

成果を残すことのできなかった僕もその一人だと感じているし、それで完全に若返るチーム編成になった段階で外されたことも非常によく理解できる。(キャプテンの)リッカルド・モントリーヴォもそういう対象となった感があるし、ひとつの時代が終わった流れがあることは非常に強く感じる」

6月で契約が切れるミランでは、もはや「10番」を背負えないことはわかっている。違約金が発生しないフリーの身となって退団することが、憧れてきたセリエAの名門における最後の仕事になるだろう。

しかし、日本代表においては、ピッチのうえでなすべき大仕事があると信じて疑わない。ワールドカップ・ロシア大会が開幕する、来年6月14日の前日に32歳になる。まだまだ老け込む年ではない。

「これまで自分の力で代表でも道を切り開いてきたと思っているし、当然ながら自分が代表にふさわしい選手か否かということは自分で判断できる。ミランではそれ(ふさわしくない)を自分で判断したので」

■タイ代表戦を前に本田が鳴らした警鐘

昨年9月に苦杯をなめさせられたUAE代表に敵地で快勝し、上昇モードで帰国した直後。グループBの最下位にあえぐタイ代表と埼玉スタジアムで対峙する一戦を前に、本田の濃密な経験が警鐘を鳴らさせた。

「メンタルが緩くなるのは危ない。思った以上に難しい試合になると、締めて入ったほうがいい。簡単なパスを簡単に成功させるとか、基本的なところから入っていくことが大事になる」

タイ代表戦で途中出場
(c) Getty Images

はからずも試合は本田が危惧した展開となった。早い段階で2点を奪ったことで、油断や安ど感の類が頭をもたげたのか。最終的には4‐0で勝利したが、致命傷になりかねない単純なパスミスが繰り返された。

勝ち点で並んだサウジアラビア代表を得失点差で上回り、初めてグループBの首位にも立っても素直には喜べない。後半途中から試合を締めるために出場した本田も、「いいとは思っていない」とこう続けた。

「いまでもいろいろと言うことはできるけど、みんなの胸の奥底にスッと入る言葉を、できるだけいいタイミングでかけたいと思っている。そこれには僕の状況が、もう少し好転してからがいいのかなと」

ミランと決別し、自分が納得できる新天地に移ってからでないと、どんなに熱く厳しい言葉でも説得力を帯びない。もっとも、今シーズンの軌跡を見る限りは、強豪クラブへ移籍するハードルは高く険しい。

「だからこそ、僕はいまがすごく楽しい。こいいう状況が起れば起こるほど、何だか自分が試されている気がして。再び右肩上がりにするにはどうすればいいのかを考える自分も、試練を乗り越えていこうとする自分も、自分の結果を待っている人たちを喜ばせる自分も、すべて好きなので」

ここでも本音のなかに、幾分か「強がり」や「虚勢」も混じっているはずだ。それでも威風堂々とした背中と言動を見せながら、努めて前を向く姿勢とそれを導く鋼のような強靭なメンタルは、まだまだハリルジャパンに必要だと感じずにはいられなかった3月シリーズでもあった。

《藤江直人》

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