【THE REAL】湘南ベルマーレのホープ・神谷優太の咆哮…J2の舞台とU‐20日本代表で確固たる爪痕を | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE REAL】湘南ベルマーレのホープ・神谷優太の咆哮…J2の舞台とU‐20日本代表で確固たる爪痕を

オピニオン コラム
神谷優太 参考画像(2017年3月22日)
神谷優太 参考画像(2017年3月22日) 全 2 枚 拡大写真
■FC岐阜戦後の胸中に渦巻いた2つの言葉

ミックスゾーンと呼ばれる試合後の取材エリアには、どこのスタジアムでも、昔もいまも変わらない光景が広がっている。ベンチ入りを果たしながら出番を得られなかった選手は、決まって姿を現すのが早い。

湘南ベルマーレで2年目を迎えた19歳のホープ、MF神谷優太(写真右端)もいち早く帰りのバスに乗り込んだ。ホームにFC岐阜を迎えた15日のJ2第8節。入念にアップを繰り返したが、最後まで声はかからなかった。

後半に入って逆転され、同点に追いついた3分後にはPKで再び勝ち越される。最終的には3‐3のドローで終わったが、ゴールを求められる展開でピッチに立てなかった現実に、忸怩(じくじ)たる思いがこみ上げてくる。

「率直に言って試合に出たかったですし、悔しい。その二言しか今日はないですね」

二言とは「出たかった」と「悔しい」となる。ミックスゾーンで足を止め、胸を張り、毅然とした表情を崩すことなく取材に応じた5分あまりの短い時間のなかで、どれだけこの二言を繰り返したことか。

東京ヴェルディとの上位対決となった9日の前節で、7試合目にして今シーズン初先発を果たした。キャプテンのMF菊地俊介の先制点とダメ押しの3点目をアシストして、3‐2の逆転勝利に大きく貢献した。

後半21分にひとつ年下のMF齊藤未月との交代で、お役御免を告げられた。ベンチに下がってくると、普通ならば握手で済ます曹貴裁監督が熱く抱きしめてくれた。大きな手応えを感じずにはいられなかった。

「開幕から立て続けに出られなかったなかでヴェルディ戦に出たときに、自分は成長しているんだ、と実感することができました。試合に出られなかったからこそ、メンタル面で逆に成長できたんだと。

何がいけなかったのかは正直、まだわかりません。ただ、それを見つけられるのも練習や試合しかない。どれだけアピールできるか、どれだけ結果を残せるか。悔しいですけど、次に向けて頑張りたい」

■順風満帆だった軌跡を襲った骨折の悪夢

青森山田高校から加入した昨シーズンは、ルーキーながらJ1の舞台で14試合に出場。そのうち8度は先発に名前を連ねて、トータルで661分間、主にボランチの位置で濃密な経験を積んだ。

10月にはU‐19日本代表の一員として、中東バーレーンで開催されたAFC・U‐19アジア選手権に出場。ボランチとしてイエメン代表とのグループリーグ初戦、イラン代表との同2戦に続けて先発を果たす。

しかし、好事魔多し。イラン戦で相手選手と接触して左ひざを痛め、後半20分での途中交代を余儀なくされる。精密検査の結果、患部が骨折していることが判明。プレーそのものが不可能になった。

それでも志願してバーレーンに残り、チームを鼓舞する側に回る。FIFA・U‐20ワールドカップ出場のかかった準々決勝で、4‐0でタジキスタン代表に快勝した後の歓喜の輪に加わってから単身帰国した。

息つく間もなく幕を開けたリハビリの日々。その間に全国高校選手権大会で悲願の初優勝を飾った母校に、1年目の「28」から「7」へと変わった背番号に励まされながらシーズンの開幕を迎えた。

水戸ホーリーホックとの開幕戦、ザスパクサツ群馬とのホーム開幕戦はともにベンチに入れなかった。ツエーゲン金沢戦、愛媛FC戦と続けてベンチ入りしたものの、ピッチに立つことなく試合終了を迎えた。

U‐20日本代表のドイツ遠征参加で欠場したジェフユナイテッド千葉戦をへて、カマタマーレ讃岐との第6節でようやく出番が訪れた。3点を追う後半25分から投入されたが、一矢を報いることもできなかった。

「調子は上がってきていたし、シーズンの最初のころに比べたら考え方や判断もまったく違ってきていますし、その意味でも成長しているのかな、とは思うんですけど」

細かいパスをつなぐFC岐阜に対して、曹監督は「J1でも通じる」とボール奪取能力に太鼓判を押す齊藤が必要だと判断したのだろう。齊藤をフル出場させた一方で、もちろん神谷の変化にも目を細めていた。

U‐20日本代表のドイツ遠征
(c) Getty Images


■ヴェルディ戦後に指揮官から抱擁された理由

ヴェルディ戦後のひとコマ。公式会見を終えてロッカールームへ戻る途中で、課題だった球際の攻防へ気迫を込めて挑んでいた神谷を称賛している。交代時に熱く抱きしめた理由がここにある。

「優太は素晴らしかった。今日のプレーなら、絶対にU‐20代表で力になる」

FC岐阜戦でも、ベンチ入りさせた選手全員への目配せを忘れない。90分間を通して、神谷から向けられている視線にも気がついていた。当然ながら、5月上旬に発表されるU‐20日本代表の動向も気になる。

「オレを出してくれないのか、と悔しそうな顔をしていたよね。でも、優太はめちゃくちゃよくなったよ。どうなの、アイツ? (U‐20日本代表に)選ばれそう? 当落線上というか微妙なの?」

指導を受けて2年目。一見して厳しく映るも、その実は選手の成長に対して海よりも深い愛情と、山よりも高い期待をかける指揮官だと神谷もわかっている。だからこそ、腐ることも下を向くこともない。

「現状にプラスしていきたいもの? すべてですね。ここで何だと(限定して)とらえると、そこまでの選手になってしまうので全部成長したい。満足するなという、曹さんのメッセージだと思っているので」

東京ヴェルディユースを自らの強い意思で退団し、青森山田高校に転入したのは2年生の冬。異例に映るルートを選んだ理由を「人間性というものが一番大事だと思ったので」と説明したことがある。

積雪で冬場はまったくサッカーができない過酷な環境で、春が近くなってくると、控えの部員たちが必死に雪かきをして練習環境を作る。サッカーができる日常への喜びが、自分自身を変えたと神谷は言う。

「感謝の気持ちやあいさつといった、人に対するマナーを一番求められました。これからも人間性というものを極めていきたい」

ベルマーレ加入直後に残した言葉だ。Jリーグでも最も厳しい練習に身を置き、心技体の特に「心」を磨いてきた軌跡の跡がいま問われようとしている。

■2年前に芽生えたベルマーレへの憧憬の念

17日と18日に千葉県内で開催された、U‐20日本代表候補合宿に招集された。今回は所属クラブで出場機会の少ない選手が対象。ジェフとの練習試合を通じて、試合勘を取り戻させる狙いがあった。

「確かに今年に入ってまったく試合に出ていなくて、そのなかで招集されたということは、逆に1試合多くできると自分ではとらえています。その分だけ、他のみんなよりも成長できると。ワールドカップも近いですけど、自分のなかで焦りはないですね。

3月下旬のドイツ遠征もそうでしたけど、チームとしてやるべきことはしっかりとまとまっているので。あとは細かいところを修正するだけですし、自分たちのサッカーを貫いていけばもっと強いチームになるし、絶対にワールドカップで上に行けると思っています」


(ドイツ遠征から帰国する際のツイート)



2015シーズンのJ1ファーストステージ開幕戦。NHKのBS1で生中継されたベルマーレと浦和レッズの一戦を見て心が震えた。前線から激しくプレスをかける。グイグイと走る。憧憬の思いが芽生えた。

「ちょうど(転入したばかりの)青森山田で走るサッカーを徹底されていたので」

特に前半24分に自陣から発動されたカウンター。大槻周平(現ヴィッセル神戸)のシュートはDF槙野智章に防がれたが、6人が相手ゴール前へなだれ込む光景に思わず腰を浮かせた。

あれから2年。6人のうち5人までが他のクラブへ移り、唯一残っているFW高山薫も右ひざに大けがを負い、今シーズン中の復帰がほぼ絶望となった。「湘南スタイル」の担い手は次世代へと移っていく。

「(FC岐阜戦で)出られなかったのも何かの試練だと思って。悔しさをぶつけるのはサッカーしかないし、この逆境でメンタルを崩すことなく、どのようにすごすかでまた変わってくるので」

24日に20歳になる。必然的に10代で最後の一戦となる、ホームに大分トリニータを迎える22日の第9節へ。すべてをポジティブにとらえる神谷は、ピッチに立てば大きな爪痕を残す雰囲気をプンプンと漂わせている。

《藤江直人》

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