4月26日、メディアには非公開で説明会が開かれた。現状の方針としては、すでに決定事項である東京2020時の「東京ビッグサイトのメディアセンター化」は既定路線であり、これが揺らぐことはない。一方で、東京都などは、展示会関係者らの意向を踏まえて、東京ビッグサイトが全面的に利用できない期間をオリンピック/パラリンピック開催期間を中心とした従来の7ヶ月間から、5ヶ月間へと短くすることで、譲歩した格好だ。
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この問題については、現在東京都が五輪に向けて抱える問題が、さまざまに連動しており、複雑化している。本稿で少しでも紐解ければと考えている。
◆豊洲新市場問題と、東京ビッグサイトのメディアセンター化
2020年のこの問題を考える前に、参考事例したいのが1964年の東京五輪だ。
過去の資料や取材を通して、浮かび上がるのは東京1964は、戦後からの完全復興と未来への成長を具現化するのに絶好の機会となったということ。道路や地下鉄、国立競技場をはじめとする各種大規模建造物が、このタイミングに急ピッチで組み上げられ、現在もなお東京の根幹をなす「物理的なレガシー」として残った。
本稿で紐解きたいメディアセンターについて、1964年のメディアセンターは、NHKだった。渋谷のNHKを見てもわかるように、広大な土地と大規模なアンテナを複数擁する、一大拠点だ。五輪は、その国の総合的なメディア力を世界に示す機会となる。当時の力の入れようが現在も見て取れる。
このように五輪のメディアセンターは、広大な土地と、世界へのデータ配信、放送に耐えうる機材設置が必要で、精密機械の正常稼動には、適正な空調管理が欠かせない。そのため、空調設備も一定水準のものが求められる。
ここで、日本展示会協会が、東京2020のメディアセンター候補としてあげているのが豊洲新市場だ。すでに土地と建物はあり、空調も整っているという点が大きい。
ただ、築地からの移転問題に、東京ビッグサイトの五輪メディアセンター問題が連結してくることで、築地問題も含めた一連の課題解決はより複雑になるかもしれない。
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◆イベント会場問題と東京ビッグサイトのメディアセンター化
インターネットでの物品売買が一般化し、購買活動は変化を遂げている。買うことと売ることが個人にとって容易になり、結果、転売なども活況だ。
ここで課題になりそうなのが、チケット問題。実際に、我々編集部がリオ五輪を取材した際にも、チケットの転売は一大ビジネスになっているだろう肌感を持った。
チケットの転売と連動するのがイベントビジネス。近年「モノよりコトに金を使う」とはよく言われたもので、音楽アーティストやスポーツイベントなどへの積極的な参加は、チケット購入の簡素化や多様化がもたらした、古くも新しいビジネスだ。
イベントビジネスを手がける事業者の課題が、会場問題。著名な会場は定期的に改修を迎える。その際、従来利用していたイベント会場が使えない、という事態が発生する。
そこで、東京2020五輪に合わせ用意が検討される各種「仮設会場」を、イベント事業者も欲しているという。
東京ビッグサイトのメディアセンター問題においても、メディアセンターを東京ビッグサイトではなく、仮設会場に設置する、という代替案が日本展示会協会から東京都に提出されており、この案に、イベント事業者も興味を示しているようだ。仮設会場とはいえ、2020年以降数年は利用可能なレベルのものになるようで、五輪後の活用ニーズをうまく汲み取ることができれば、仮設会場は物理的なレガシーとして生きたものになる。
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◆夏の都議会選と東京ビッグサイトのメディアセンター化
2017年7月2日投開票で行われる都議会選。東京2020へのアプローチをいかに行うかは、有権者に対して大きなインパクトをもたらすことは間違いない。
都議会選までの小池百合子都知事の手腕もさることながら、小池氏が中心となる「都民ファーストの会」はどのようにこの問題を扱うのか。また都議会自民党会派はじめ対抗組織はそれぞれどのように選挙材料に盛り込んでいくのか。
東京2020五輪の損益計算書だけでなく、東京都といった大きな損益計算書を描き、利益を最大化するための最適解を待ちたいが、大都市東京で行われる五輪を含めた損益計算書の組み上げは、困難を極めるのだろう。