【THE REAL】南半球で輝きを放つ日本人…楠神順平が浦和レッズ戦で魅せた意地のゴールと成長の跡 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE REAL】南半球で輝きを放つ日本人…楠神順平が浦和レッズ戦で魅せた意地のゴールと成長の跡

オピニオン コラム
楠神順平
楠神順平 全 3 枚 拡大写真
■外国人選手として来日した浦和レッズ戦

真夏の日本から、季節が真逆の南半球のオーストラリアへ。ピッチに立てるチャンスだけを求めて、裸一貫で未知の国に飛び込んだ昨年8月に幕を開けた挑戦が、ひとまず終わろうとしている。

オーストラリアのAリーグは8月に幕を開ける。10チームが3回戦総当たりで対戦するレギュラーシーズンを、MF楠神順平が所属するウェスタン・シドニー・ワンダラーズFCは6位で終えた。

上位6チームが進むファイナルステージへ、何とか残った。ブリスベン・ロアーFCのホームに乗り込んだ1回戦は延長戦を含めた120分間を終えても1‐1で決着がつかず、運命のPK戦へと突入する。

先蹴りのブリスベン、後蹴りのウェスタン・シドニーの5人ずつが全員成功させる。緊張感が一気に高まるサドンデスは、しかし、6人目で天国と地獄とに明暗が分かれてしまった。

ブリスベンはオーストラリア代表MFトミー・オアーが確実に決める。そして、ウェスタン・シドニーの命運を託された楠神が放った一撃は、無情にもゴールネットを揺らすことはなかった。

Aリーグでの戦いが終わってから5日後の4月26日。楠神は埼玉スタジアムにいた。浦和レッズとのACLグループリーグ第5節で大敗を喫し、わずかに残されていた決勝トーナメント進出への希望を断ち切られた。

「何かすごく変というか、不思議な感じですけど。でも、日本に来て、やってやろうという気持ちがさらに強くなりましたよね」

海外クラブの外国人選手として、母国へ凱旋を果たす。初めて経験する状況に覚えていたちょっとした違和感は、前後半で3ゴールずつを奪われる試合展開の前に、跡形もなく吹き飛ばされてしまった。

「日本とはまったく違う環境や文化のなかで、1年間を通して試合出場にからんだことは、自分にとってすごく大きな経験になりました。でも、結果にはまったく納得していない。次のシーズンはもっといい結果を出せるように頑張っていきたい」



■チャンスに飢えていた状況で届いたオファー

滋賀県立野洲高校の3年次に全国高校選手権大会を制覇。2009年には同志社大学サッカー部に在籍したままJリーグの試合出場できる、JFA・Jリーグ特別指定選手として川崎フロンターレに登録された。

そのフロンターレでJリーガーとなった2010シーズン。後半26分から途中出場した5月5日のガンバ大阪戦で、アディショナルタイムを含めた20分間でハットトリックを達成する離れ業を演じてみせた。

4年目の2013シーズンからはセレッソ大阪へ移籍。思いもよらない「10番」を託された。順風満帆だった楠神のサッカー人生は、セレッソがJ2降格を喫した2014シーズンから微妙に狂い始める。

初体験のJ2でも、なかなか出場時間が増えない。2016シーズンにはJ1のサガン鳥栖へ新天地を求めたが、ファーストステージでピッチに立ったのはわずか一度。途中出場で31分間プレーしただけだった。

「鳥栖でほとんど試合に出られない状態だったので、チャンスが欲しかったというか、チャンスがあればとずっと思っていた」

突然届いたウェスタン・シドニーからのオファーに、迷うことなく首を縦に振った。どんな状況であれ、とにかくピッチに立ちたかった。しかし、待っていたカルチャーショックは想像をはるかに超えていた。

「練習からものすごくガツガツいくんですよ。体の当たり合いというか、ぶつけ合うのがごく普通だし、ふっ飛ばされて痛がる選手もいない。チームにもよるんですけど、日本だったら『味方にけがをさせたらあかん』という感じで、なかなか練習ではあそこまですさまじいタックルは飛んできませんからね。

もちろん、自分としてはものすごく刺激になりました。自分もAリーグの試合では基本的に相手と当たり合うし、そのなかでよく走れるようにもなった。向こうの芝生は日本と違って緩くて長いので、普通に走るだけでしんどいんです。だからこそ、走るための体力がシンプルについたのかなと思っています」


■浦和レッズとの再戦で突きつけられた実力差

背番号「14」を与えられた2016‐17シーズン。現役時代にサンフレッチェ広島でプレーした、トニー・ポポヴィッチ監督の信頼をすぐに勝ち取った楠神は、27試合に出場して3ゴールをマークした。

かつて在籍した小野伸二が、多くのファンやサポーターから愛された土壌はいまなお色濃く残る。Jリーグ時代から「国内ではトップクラス」と評されたドリブルを武器に、楠神は瞬く間に人気者になった。

「難しいリーグですけど、実際にプレーしているとすごく楽しい。自分にとってもまたとない経験ですし、このチャンスをものにして、どんどん成長していけたら」

季節が真夏となる年末年始も、Aリーグは続く。1月1日のパース・グローリー戦でフル出場した楠神は、プロになって初めて元日に試合を経験した。迎えた2月21日。ACLが幕を開ける。

ホームにレッズを迎えた一戦。前半は何とかスコアレスで折り返したウェスタン・シドニーだったが、後半に入ると4失点を喫してしまう。攻撃も不発に終わり、難攻不落という印象だけが残った。

「浦和さんがいいチームだということは試合前からわかっていたし、今日もみんながそれを意識して戦ったけど、その上をいかれてしまった。特に前半は何もさせてもらえなかったし、力の差を感じました。2月に戦ったときよりもみんなコンディションが上がっていて、より嫌な相手になっていたというか」

フロンターレやセレッソ時代にも、レッズとは何度も対戦している。しかし、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督体制になって6年目を迎えた「赤い悪魔」は、以前よりもはるかに完成度を高めていた。

「僕が言うのも何ですけど、チームとしてやろうとしていることが、どんどん統一されていと感じました。一番差を感じたのは、浦和さんがポゼッションしているときのボールの回され方。一人ひとりの技術がしっかりしているから、ボールを取りに行ってもダメだし、行かなきゃずっと回されてしまうので」

■13試合目でマークしたACLでの初ゴール

それでも、一矢を報いた。3点を追う後半21分。相手ゴール前でパスを受けた楠神が、果敢にドリブルを仕掛ける。すかさずボランチの青木拓矢が体を寄せてくる。

弧を描くような軌道のドリブルで圧力をかわしながら、ペナルティーエリア内へ侵入する。今度は日本代表DF槙野智章が、猛然と楠神との距離を潰しに来る。

そして、槙野が右足を伸ばした刹那に、右足を軽く振り抜いた。緩やかなループ弾は日本代表GK西川周作が必死に伸ばした左手をかすめて、ゴールバーに直撃して真下に落ちた。

「とにかく、どうにかしたかった。どのタイミングでシュートを打とうか、と考えながらドリブルしていきました。西川さんの股間を抜こうか、上を狙おうか迷ったんですけど…上のほうがタイミング的にも嫌かなと思って。(下に落ちて)微妙な感じでしたけど、入っていると思っていました」

ワンバウンドした地点が、ゴールラインを越えていたと副審が認めた。フロンターレ、セレッソ時代を含めて、通算13試合目となるACLで決めた初ゴールに、一瞬だけ表情を緩ませた。

「点を取れたことはよかったけど、何度かチャンスはあったので、もうちょっとチームとして立て直していかないと。とにかく、2人ともすごくいい選手なんだと、あらためて思いました。マキはガツガツくるし、最終ラインからしっかりパスもつなげる。ヨウスケのところで、ずっとボールを握られてもいたので」

マキはDF槙野智章、ヨウスケとはMF柏木陽介のこと。同じ1987年生まれで、今年30歳になる同級生たちを試合前からかなり強く意識していた。差を見せつけられたからこそ、新たな目標も生まれる。

「助っ人は結果を求められる。それはわかっていることだけど、もっともっと意識していきたい」

今シーズンの公式戦はあとひとつ。ホームに上海上港(中国)を迎える、5月10日のグループリーグ最終節の先に待つ来シーズンを見すえながら、170センチ、61キロのドリブラーはさらなる成長を誓う。

《藤江直人》

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