しかし、連休中に山に行こうものなら、混雑必至。都心に近く、普段から人気がある山だと、なおさらである。これは山に限ったことではなく、連休には渋滞や人混みは付き物と、多くの人が混雑を恐れずに立ち向かった結果、さらなる混雑を生み出しているのが現状だ。
それでも、この季節ならではの花と新緑で彩られた低山を歩きたい。でも、渋滞や人混みは嫌だ。近場の茨城県の低山ならば、人気もなく空いてそうだが、せっかくの連休だから特別な感じが欲しい。かといって、東京を通るルートだと、高速道路で間違いなく渋滞にハマるだろうし、栃木県や福島県の高山はまだ雪が積もっているし(雪山は怖くて無理)。そのようにワガママを言っていると、登る山が決まらずにイタズラに時間ばかりが過ぎていく。
登山日前日の深夜までアレコレと悩んだ挙句、半ば投げやりな気持ちで選んだのが、福島県にある矢祭山だ。いい加減な気持ちで選んだのだが、この選択は正解だった。
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矢祭山山頂から、茨城県の最高峰・八溝山がきれいに見えた
筆者が住んでいる水戸から程よく遠い距離にあり、旅行の感覚を味わえて、連休中でもさほど渋滞はしていない。標高は383mと単山で挑めば物足りないかもしれないが、すぐ近くに檜山という山もある。奥久慈地方の山だから、低山といえど景観もいい。
そばに流れる久慈川や、水郡線というローカル線が里山の風景にアクセントを与えている。その眺めは「東北の耶馬溪」と言われるほどの素晴らしさである。そして、この季節ならではの光景が、矢祭山公園にあるツツジの花だ。5万本以上もあるというツツジの花が、山をピンク色に染めるのである。
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矢祭山公園に咲き乱れるツツジの花
何より極めつけは、人の少なさ。ツツジの花が咲き乱れる矢祭山公園は、それこそ大勢の人で賑わっていたが、その上にある矢祭山には、まったく人がいなかった。G.W.を、低山で独り過ごす。これは、スペシャルでエレガンス、そしてラグジュアリーな過ごし方ではないか。
渋滞や人混みに耐えながら、有名な観光地で過ごすのも、それはそれでG.W.的な過ごし方でいいだろう。だが、たまにはそれを遠巻きにして眺めつつ、「渋滞、人混みご苦労様」とほくそ笑みながら里山でのんびり過ごすのも、また違った趣があっていいものだ。