【e-Sportsの裏側】「e-Sports」は新しいエンターテイメントの形、「焦らず、じっくり進めていく。」―ウォーゲーミングジャパン キーマンインタビュー | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【e-Sportsの裏側】「e-Sports」は新しいエンターテイメントの形、「焦らず、じっくり進めていく。」―ウォーゲーミングジャパン キーマンインタビュー

オピニオン ボイス

【e-Sportsの裏側】「e-Sports」は新しいエンターテイメントの形、「焦らず、じっくり進めていく。」―ウォーゲーミングジャパン キーマンインタビュー
【e-Sportsの裏側】「e-Sports」は新しいエンターテイメントの形、「焦らず、じっくり進めていく。」―ウォーゲーミングジャパン キーマンインタビュー 全 7 枚 拡大写真

e-Sportsに携わる「人」にフォーカスを当てて、これからの日本のe-Sportsシーンを担うキーパーソンをインタビュー形式で紹介していく【e-Sportsの裏側】。

前回の連載では、大手ゲームメーカーネクソンとの資本・業務提携をアナウンスした韓国ゲーム専門チャンネル放送会社Loud Communications. Co., Ltd.、CEOのイ・ジェミョン氏に提携の狙いや日本のe-Sports市場の可能性についてお話を伺いました。

■e-Sportsとは?
e-Sports(Eスポーツ)とはElectronic sportsの略で、コンピュータゲームやビデオゲームで行われる競技のことです。高額な賞金のかけられた世界的な規模で行われるプロフェッショナルな大会から、アマチュアまで競技が行われており、ジャンルやゲーム毎にプロチームやプロリーグが多数あります。現在e-Sportsの対象となっているゲームを遊ぶ人の数は、全世界で5500万人を超えています。
(ゲーム大辞典参照:http://game-lexicon.jp/word/e-Sports

第12回目となる今回は『World of Tanks』(以下:『WoT』)や『World of Warships』(以下:『WoWs』)などを手がけるウォーゲーミングジャパン株式会社のコチョール・オザン氏(以下:オザン氏)、マッテオ・ランゴ(以下:マッテオ氏)氏にインタビューを実施。日本のみならず、世界でプレイされるタイトルを手がける同社が見据えるe-Sportsの未来、日本での今後の戦略について明らかにしていきます。


――自己紹介をお願いします。

オザン氏:元々はプロデューサーから、ヘッド・オブ・プロダクションと色々担当してきました。現在は、APAC(アジア太平洋)リージョンのパブリッシング・ストラテジー・ディレクターを担当しています。

マッテオ氏:コンペティティブ・ゲーミング(e-Sports)部門を担当しています。APACとしては、韓国、台湾、シンガポールに同部門があるのですが、日本では今回新設された部署になります。

――コンペティティブ・ゲーミング部門は、海外では元々存在していたのでしょうか

オザン氏:弊社の中では「コンペティティブ」というとても大きな部門があります。e-Sportsはもちろん、オンライン・オフラインだけでなく、ゲーム内の要素も守備範囲内です。我々は「プレイヤーズ・ジャーニー」と呼んでいますが、プレイヤーがゲームに触れてからハードコア・プレイヤーやプロになるまでの流れをこの部署が見ています。e-Sportsだけでなく、色々なことをやっている部署です。

弊社のタイトルはオンライン・オフラインともにトーナメントで競い合う(コンペティティブ)コンテンツがメインとなったものが多く、それをよりよくサポートしていくためにe-Sports部というe-Sportsに特化した部署から、コンペティティブ・ゲーミングという全体をコントロールしていく部署が立ち上がりました。

APACに関しては、韓国、台湾、シンガポールには担当者がいたのですが、日本ではまだ設立されていませんでした。韓国やシンガポールといったチームが大会などに登場してくることが多かったのですが、最近では日本のチームも出てくることが増えたため支援をしたいということが背景にあり日本でも設立されました。


――マッテオさんは、元々は何のお仕事をしていたのでしょうか?

マッテオ氏:以前はイベント企画をしていました。

オザン氏:大事なことを言い忘れていましたね。彼は元々プロゲーマーです。

マッテオ氏:元々プロゲーマーで、15年前のコンペティティブシーンが始まった頃に『Unreal Tournament』のプレイヤーとして活躍していました。

――プロゲーマーをやめてゲーム業界の仕事をすることになった経緯や心境を教えてください。


マッテオ氏:当時は高校生でしたし、プロゲーマーも仕事というよりは趣味の延長線上の感じでしたが、大学や社会人になった後も、何らかの形でゲームに関わりたいと思っていましたし、コンペティティブシーン自体も注目をしていました。元々プレイヤー側から提供する側に移りたいとは考えており、この業界に入りました。プレイヤーをやっていたからこそ、どこが良い、どこが悪いという判断はできるので、そこを活かしていきたいです。

――改めてウォーゲーミングジャパンが運営しているタイトルを教えてください。

オザン氏:『WoT』はもちろんフラッグシップのタイトルですが、リリース順で言うと、XBOX360版の『WoT』、その後に今年3周年を迎えるモバイル版の『WoT Blitz』、『WoWs』、PS4『WoT』があります。日本ではPS4版が特に人気が高いです。既に発表されていますが、『Total War Arena』もあります。『World of Warplanes』は、現在APACリージョンでは、検討していますがまだリリースはしていない形になります。

――実際のところ、e-Sportsとはどのようなものだと考えていますか?

オザン氏:定義の問題だと思います。e-Sportsという言葉が人によって捉え方が違うなぁ、と。日本には昔からウメハラさんなどのプロゲーマーがいらっしゃって、それを職業に近い状態でしていた方がいます。e-Sportsがその時と何が違うかというと、「エンターテインメントになった」と私は感じています。大きいスケールで観戦することなどの新しいエンターテインメントの形になったのはe-Sportsというものだと思います。日本はまだそれに慣れていないだけだと思います。まだ文化が出来上がっていない中では、e-Sportsというものを理解するのは難しいと思います。

マッテオ氏:どこまでがコンペティティブ、どこまでがアマチュアと線引きをするのは非常に難しいと思います。

――スマホタイトルでも競技性が高いものの増えてきています。

オザン氏:プラットフォームは関係ないと思います。『WoT』が弊社の中で最もe-Sportsの可能性が高いと個人的に考えていますが、カジュアルモードでもそれなりに難しく、スキルも必要です。その要素を満たしていれば、どのゲームでもコンペティティブになりえます。その度合をどこまで引き上げることができるかというところが問題だと思います。『ビューイング・エクスペリエンス』と呼んでいますが、視聴体験がやはりe-Sportsの根本的な特徴だと思います。

マッテオ氏:視聴者が見て楽しいと感じれば、e-Sportsと呼んでいいのでは。大会やトーナメントを実施したいというのであれば、プレイヤーが体験できる場を用意し、トップを目指してもらうプレイヤーを支援するのも1つの方法だと思います。

オザン氏:e-Sportsで元々面白いと思っていたのが『テトリス』です。見ていて面白いと思いましたし、十分e-Sportsだと思っています。

再生回数で言えば、そういう動画は我々が通常実施している大会の再生数よりも多くなると思います。そういったことをやっている方は集中力や真剣の度合いが半端じゃなく高いと思っています。それも同様にe-Sportsだと言えると思います。

――お二人から見て、今の日本のe-Sports市場はどのように見えていますか。


マッテオ氏:日本は海外の大きなリージョン(韓国、アメリカ、ヨーロッパなど)に追いつきたいという気持ちが強いと感じます。時々焦りすぎて、発展や成長のステップを飛ばしてしまっているようにも感じたりしますが…。他のリージョンでは発展に時間がかかり、その間にインフラやスター性、スポンサーなどがゆっくりと出来上がってきました。逆に日本の場合は、急ぎすぎているように見えていて、もう少し時間をかけて健康な環境を作ることが必要だと思います。

オザン氏:段階を踏む必要があると思います。社会の準備が整っていないというのもありますし、プロゲーマーが大金を稼ぐことを社会が認めていないというのもあります。プロゲーマーも職業的にも不安定ですし、サポートする側もまだ整っていません。インフラができて、その次のステップでブランディングやビジネスが始まると思います。

スポンサーはまだゲーム業界に関連しているところが多いですよね。ただ、通常のサッカーなどのスポーツチームがe-Sports部門を設立しているのは面白いと思っていて、良いことだと思っています。ヨーロッパの大きなサッカーチームも設立していることで、大きく変わっていくこともあるかもしれません。

――日本では東京ヴェルディがe-Sportsのチームを設立していました。

オザン氏:本当に良い事だと思いますよ。もしかすると、ビジネス面で成り立てば他のチームの注目を引くので、まずは実績を作ることからしなければなりませんが。

――とはいえ、4年~5年前に比べると日本もだいぶ環境が整ってきたと思います。日本のe-Sports市場で、「これは良い」と感じる部分はどこでしょう。

オザン氏:地域に合わせることは大事だと思います。例えば日本で言うと『シャドウバース』ですが、ターゲットをしっかりと見ていると思います。


マッテオ氏:アーケードは地方にアプローチするには良い方法だと思いますし、力の入れ方も良いと思います。ゲームセンターを盛り上がらせるということは、場所があるので面白い体験を提供することができます。PCゲームは1人で盛り上がることができますが、サッカーなどのスポーツはみんなで盛り上がることができます。アーケードであればみんなで盛り上がることができるので、良い場所になると思います。

オザン氏:日本ではネットカフェもいいと思います。

マッテオ氏:元々韓国ではPC-BANG(韓国のインターネットカフェ)からさまざまなオンラインゲームが流行ったわけですから、そういうみんなで集まれる場所があることが重要ですね。弊社では、トレーニングキャンプをはじめとし、「プレイヤーを次の段階まで成長させる」方法を定期的に実施しています。そういうものも箱を作ってやっていかなければならないと思っています。

――日本のe-Sportsがもう一歩、上に上がるためには何が必要だと思いますか?

オザン氏:政府のサポートとブランドの投資ですね。スターを作ることが重要です。現状、誰もが知っているようなスタープレイヤーがまだいないと思います。

――「ゲームが上手い」、「話が面白い」といったように方向性は様々だと思います。

オザン氏:メディアももっとプッシュしなければいけませんが、ゲームメディア意外の一般のメディア(テレビや雑誌など)がプッシュしていくことが重要です。

――昨年のLogicool G CUP2016は、コカ・コーラと日清がスポンサーに付いていました。

オザン氏:スポンサーしている企業は何かしらのリターンを求めています。ただ、成果(購買数など)を見ることはもちろんですが、e-Sports/コンペティティブ・ゲーミングというものはマーケティングツールというよりは、定着率やエンゲージメントを高めるツールになっています。データを確認して気付いたのは、コンペティティブなプレイヤーの方が一般的なプレイヤーよりもエンゲージメントが高くなっています。こういったユーザーに対して、何かを訴求することで企業や商品の認知拡大やブランド向上に繋がると思います。

―――ウォーゲーミングジャパンとして、年内、準備しているものはありますか?

マッテオ氏:PC向け『WoT』はクライマックスの時期で、この後モスクワにてWargaming.net League Grand Finalsが待っています。トレーニングキャンプもありますし、『World of Tanks Blitz』の定期的な大会もあります。ゲームにアクセスしてすぐにトーナメントに参加できるような、新しいシステムの採用も考えています。国ごとに合わせた機能も考えていますし、『WoWs』もコンペティティブ・ゲーミングの機能を導入する予定があります。日本でももちろん利用できます。

――最後に読者にメッセージをお願いします。

オザン氏:これからいろいろ日本のe-Sportsシーンを育てるために頑張りたいと思います。一番大切にしたいのが、ゲーム会社とプレイヤーのギャップを埋めることです。普通のプレイヤーであっても、プロゲーマーであっても関係ありません。

マッテオ氏:e-Sportsというのはトレンドの技術と違って長く残ると思っています。我々がずっと前からコンペティティブ・ゲーミングをやっていることもあり、もっとプッシュをしていきたいと思っています。会社の課題としてどの目的で実施するか、それをビジネスに落として活用できるかなど、課題や社内調整なども待っています。自分らしく、ウォーゲーミングらしく、e-Sportsシーンを作っていきたいというのが弊社メンバー全員の気持ちです。頑張ります。


「ユーザーファースト」の気持ちが非常に伝わってくるおふたりのインタビュー。今後、ウォーゲーミングジャパンの日本での展開に注目です。

《森 元行@INSIDE》

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