【THE INSIDE】根付く継承文化としての対抗戦の伝統…「四中・六中」時代の流れを汲む「戸山・新宿」戦 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE INSIDE】根付く継承文化としての対抗戦の伝統…「四中・六中」時代の流れを汲む「戸山・新宿」戦

オピニオン コラム
戸山・新宿
戸山・新宿 全 19 枚 拡大写真
高校野球の最終目標は甲子園出場である。それは、万人の認めるところであろう。しかし、高校野球の担う役割はそれだけではない。歴史と伝統を継承して受け継いでいかなくてはならないものもある。

それを今の若い世代がどのように甘受して、次の世代へ継承していかれるのか、そうした伝統を育んでいく作業も大事な要素ともいえるのだ。

東京都では、学制改革以前の旧制時代にあった府立中学の歴史を背負うナンバースクールが今も都立の進学校として存在している。その時代には文武両道を前面に掲げていた。その歴史を新時代になっても継承していこうと、旧制府立四中の戸山高校と六中の新宿高校が、1956(昭和31)年から野球だけではなく、あらゆる運動部で総合定期戦として対抗戦を開催。毎年、6月に駒沢オリンピック公園を借り切って開催されている。


戸山・新宿の選手たち

今年は1日に開催されたが、野球の対抗戦は駒沢球場で行われ、中盤に猛打が爆発した新宿が6回コールドゲームで戸山に勝利。新宿は昨年、サヨナラ負けした悔しさがあっただけに、意地の雪辱を果たしたとも言える。


試合結果
【戸山】竹原大輔、合田幸弘―金子草太
【新宿】梅原猛―吉田壮吾


6回を4安打3失点に抑えた新宿の梅原猛君は、「去年は、ボクが打たれてサヨナラ負けをしていたので、どうしても負けられませんでした。あまり本調子ではなかったのですが、絶対勝つんだという気持ちで投げられました。自分の思惑通りの投球というよりも、それ以上に打線が打ってくれたので、よかったです」と大勝を素直に喜んだ。

特に序盤の投球はスライダーが低めによく決まっていて、戸山打線は4回まで無安打だった。「スライダーというよりは、カーブを投げていてそれがスライドしている、スラーブです」と言う。スリークォーター気味に投げ込まれる右打者の外に逃げていくような球が有効だった。

新宿は、初回に四球の小山和希君をバントで進め、藤原隆明君の安打などで二死一三塁として、5番荒川世那君が左翼線へ落とすタイムリーで先制。4回にも、二死走者なしから、9番大竹晶君と小山君の安打に盗塁と四球で満塁とする。ここで、藤原君が右前へポトリと落とす2点タイムリー安打。さらに、四球と失策もあって、この回打者一巡で4点を奪った。

戸山・竹原大輔君

戸山の先発・竹原大輔君も、ややリズムに乗り切れなかったところだ。それでも、味方が1点を返してくれた5回には、3人でぴしゃりと押さえて意地も示した。

しかし、6回にはさらに新宿打線に火がついて、2四球とバント安打で満塁として、4番吉田壮吾君の犠飛に始まって、荒川君の一掃の三塁打で竹原君を攻略。さらに、リリーフした合田幸弘君にも襲いかかり、ついにこの回、打者10人で8点を奪い、大会通りの規定(10点差でコールド)により6回コールドゲームとなった。

戸山は、5回には8番金子草太君のタイムリーで1点を返し、6回にも4番町田光海君の左翼線二塁打などで一時は2点差としたものの、その後の新宿の反撃に屈した。快勝した新宿の吉田主将は、チームの特徴をこう語っている。

「人数は少ないですけれども、チームとしてのまとまりはいいし、ベンチのムードもすごくいいと思います。捕手としては、投手がいいので、リードはしやすいです。今日は変化球のコントロールがよく、安心できました。去年負けていますから、今日の快勝は嬉しいです」

夏の大会の本番約1ヶ月前である。他の部活動では、インターハイ予選を終えている競技も多く、この対抗戦が実質3年生の引退試合になるところも多いという。そんな中で、野球部は、まだ夏の大会の本番を控えている。

サイドノックを行う、新宿・田久保裕之監督

21世紀枠代表となった小山台では助監督として、甲子園でシートノックも経験している田久保裕之監督。この4月から、母校でもある新宿に赴任してきた。日体大の学生時代にも学生監督としての経験があるが、久しぶりの戸山との対抗戦となった。「夏の大会前に、お互いの意地があって、負けられない試合があるということは、非常にいいことだと思います」と、自分自身も経験してきた対抗戦の独特の雰囲気を味わっていた。

そして、今年のチームに関しては、「3年生が4人しかいませんが、その4人がそれぞれ、素晴らしく、いいチームになってきています。梅原はよく投げましたが、もっといい投球ができると思います」と、チームそのものもこの試合の価値をきっかけとして、もうひとつステップアップしていけるという感触を得ていたようだった。

伝統校の意地とプライドもかけた対抗戦。スタンドには、応援団も入り、本番さながらのムードに盛り上がっていた。こういう試合が組めるということに対しての誇りも胸に、両校の選手たちは、早くも次の夏本番を見据えていた。

「夏は3つは勝とうということを目標としています」。吉田君の自信に満ちた力強い言葉でもあった。

《手束仁》

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