【THE REAL】日本代表・昌子源が秘める不退転の覚悟…シリア代表戦で犯したミスを成長への糧に | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE REAL】日本代表・昌子源が秘める不退転の覚悟…シリア代表戦で犯したミスを成長への糧に

オピニオン コラム
昌子源 参考画像(2017年6月7日)
昌子源 参考画像(2017年6月7日) 全 4 枚 拡大写真
■セットプレー時の守備で犯した禁断のミス

映像を見直すたびに、自分自身に対する情けなさを募らせるだろう。不甲斐なさに置き換えてもいい。それでも日本代表DF昌子源(鹿島アントラーズ)はいっさいの言い訳をせず、努めて前を向いた。

「鹿島のときもそうやけど、ミスは1つだけじゃないから。2つ、3つ、4つ、5つと重なって初めて失点になる。それでも最後の局面では僕と(吉田)麻也君のいるポジションでやられたわけやから、そこがしっかりしておけば、という話にはなりますよね。

そういうポジションでプレーしているという自覚はあるし、失点してなんぼ、叩かれてなんぼと思っているから。これが本番じゃなくて正直、よかったというか。親善試合でよかったとは思うけど、それでも失点しないことに越したことはないから」

東京スタジアムで日本代表とシリア代表が対峙した、7日のキリンチャレンジカップ2017。両チームともに無得点で迎えた均衡は、後半開始早々の3分にミスから崩れた。

獲得した右コーナーキックを、シリアはショートでつないできた。集中力が途切れていたのか。パスをつなぐDFジェニアトとMFアルマワスをマークするのは、DF長友佑都(インテル・ミラノ)しかいない。

ボールは再びジェニアトへ渡る。ようやくMF倉田秋(ガンバ大阪)が間合いを詰める。しかし、一発でボールを刈り取ろうとするあまりに、簡単にかわされてしまう。

フリーで前を向いたジェニアトが、右足で緩やかなカーブの回転をかけたクロスを送る。ボールはクリアしようとジャンプした昌子の頭上をわずかに越えた。いわゆる“かぶる”という、禁断のミスだ。

空中で慌てて背後を振り返ったその視界に、完璧なタイミングで走り込むFWマルドキアンが飛び込んできた。ボールを頭でヒットする嫌な音が聞こえ、着地したときにはゴールネットを揺らされていた。

シリア代表戦
(c) Getty Images

■センターバックの選手が背負う重い十字架

コーナーキックを与えてから失点するまでの十数秒間で、日本代表はいくつかの細かいミスを重ねていた。まずはショートコーナーに対する警戒感がほぼ皆無だった点だ。

弛緩した雰囲気を察したGK川島永嗣(FCメス)が大声で指示し、慌てて倉田が長友のヘルプに駆けつけた。その倉田も球際の攻防、バヒド・ハリルホジッチ監督が重視する「デュエル」があまりに軽かった。

セットプレーの際には、ハリルジャパンはマンツーマン・ディフェンスを採る。ゴールを決めたマルドキアンをマークする役目を担っていたのは、実は昌子だった。

「気配は感じていました。自分としては届くと思ったけど、届かなかったからああいう結果になった。相手のレベルが高くなってくると、そこをちゃんと決めてくる」

右サイドで短いパスをつながれている間に揺さぶられ、マークする相手との距離感に微妙なずれが生じた感は否めない。それでも昌子は「19番(マルドキアン)のマーク役は僕やから」とこう続ける。

「鹿島でのプレーをいつも見てくれている人は、今日の僕がいつもと違うのかどうなのかがわかるんでしょうけど…自分自身としてはいつも通りにやろうとした結果が、今日のプレーやった。鹿島のときとはちょっと違ったし、だからこそ『もっとできた』とも思う。

ただ、自分としてはこれでまたちょっと成長できるんじゃないかと思っている。失点しておいて何言ってるねん、と思われるかもしれんけど、切り替えるしかない。いつまでもくよくよしとっても先はないし、(時計の針を)巻き戻せるならそうしたいけど、できんもんは仕方ないので」

目の前にある非情な現実を、真正面から受け止める。批判も甘んじて浴びる。守備の要、センターバックを託される選手が背負う十字架が、日本代表の戦いになるといっそう重く感じられた。

■常連・森重真人がリストから外れた意味

ハビエル・アギーレ前監督時代から、日本代表に継続的に招集されてきた。しかし、実際にピッチに立ったのはこれまでにわずか2度。プレー時間は96分間しかない。

一方でセンターバック陣にとって、シリア戦は重要な意味をもっていた。通算41キャップを誇り、吉田麻也(サウサンプトン)と不動のコンビを組んできた30歳の森重真人が選外となっていた。

所属するFC東京でのプレーに、ハリルホジッチ監督は不満を抱いていた。GK西川周作(浦和レッズ)やMF清武弘嗣(セレッソ大阪)とともに、ためらうことなくリストから外した。

吉田以外にセンターバックとして招集されたのは、これまでは左サイドバックの控え的な立場だった30歳の槙野智章(浦和レッズ)と代表初招集の22歳・三浦弦太(ガンバ大阪)、そして24歳の昌子の3人だった。

「森重君が入っていないということで、今回はセンターバックが一番注目されるポジションやと思う。僕や槙野君、弦太の誰が出ても『森重君がいないと』と思われるのは嫌やし、僕が出たときには『森重君がいなくても、昌子に任せれば大丈夫』と思ってもらえるようなプレーをしたい」

シリア戦を翌日に控えた6日の段階で、静かに闘志を燃やしていた。吉田とコンビを組んだことはないが、言い訳にはならない。世代交代を果たすために、誰もが通る登竜門。実際に出番を命じられて、浮き足立つわけにはいかない。

果たして、アントラーズでも背負う「3番」とともに、先発を射止めた。しかし、現実は厳しかった。前半27分には小さくなったクリアをアルマワスに拾われ、ポストをかすめる一撃を放たれてしまった。

日本代表でも「3番」に
(c) Getty Images

「次も僕でいく保障はない。槙野君や弦太かもしれんけど、だからといって『もうええわ』と投げ捨てるほどカッコ悪いものはない。そうなればJリーグで結果を出して、また次も呼ばれるようにすればいい」

■テヘランで待つイラク代表戦に勝つために

米子北高校から2011シーズンに加入したアントラーズでも、最初の3年間は控えに甘んじた。2014シーズンからレギュラーに定着するも、チームは前年に続いて無冠に終わる。

「強い鹿島というのは僕たちの大先輩、レジェンドの方々が築いた時代のこと。言うたら強い鹿島を壊してしまったのは僕たちとなる」

常勝軍団の屋台骨を背負う重圧を、こんな言葉で表現したこともある。前人未踏の3連覇を知る大岩剛コーチ(現監督)から何度も叱責されながら、執念で食らいついて昨シーズンの二冠の原動力になった。

失敗を糧に変えて、はいあがってきた自負がある。だからこそ、シリア戦で痛恨のミスを犯しても下を向かない。振り向いても森重はいない。自分がやるしかないと、追加点を許さなかった。

「J1で100試合以上に出させてもらったなかで感じたことやけど、ミスを引きずったら2点、3点とまたやられて負ける。失点に絡んだことのないセンターバックなんて絶対におらんと思うし、これまでのいろいろな人たちも、こうやって上り詰めてきたはずなので。

成長への階段をのぼり続ける
(c) Getty Images

大きな大会や舞台になるほど、失点したときの責任の重さは増してくる。そういう痛い思いを積み重ねながら、強くなる。次に僕が出たときには意地でも無失点にこだわるけど、サッカーは何があるかわらんし、たとえまた失点に絡んだとしてもスパッと切り替えたい」

シリア戦は13日にイランの首都テヘランで行われる、イラク代表とのワールドカップ・アジア最終予選第8戦を想定して組まれた。試合会場のピッチ状態は劣悪で、7日には同時テロも発生している。

ピッチの内外で何が起こるかわからない状況下で勝ち点を積み重ね、6大会連続のワールドカップ出場へ王手をかけるために。シリア戦でまたひとつ、成長への階段をのぼった昌子は不退転の覚悟を決めている。

《藤江直人》

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