2015年はゴールデンステイト・ウォリアーズがクリーブランド・キャバリアーズを倒して優勝したが、翌年はキャバリアーズがウォリアーズにリベンジを果たして優勝。1勝3敗からの大逆転勝利というファイナル史上初の記録まで生まれた。
そして今年。三たびウォリアーズとキャバリアーズがファイナルで顔を合わせた。史上初の3年連続同一カードによるNBAファイナルである。大注目のシリーズは初戦から歴史的な視聴率を叩き出し続けた。
肝心の試合内容はいささか一方的なものになった。初戦から3連勝したウォリアーズがプレーオフ史上最長の15連勝を達成。キャバリアーズも第4戦で意地を見せたが反撃及ばず、ウォリアーズが4勝1敗で2年ぶりにタイトルを奪回している。
■「支配的だった」ケビン・デュラントの存在
ウォリアーズの連勝を支えた主役のひとりがケビン・デュラントであることは間違いない。スティーブ・カー・ヘッドコーチ(HC)も「支配的だった」と認める活躍でMVPを獲得した。
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試合を支配したケビン・デュラント
(c) Getty Images
昨シーズン限りでオクラホマシティ・サンダーとの契約が満了を迎えフリーエージェント(FA)になると、デュラントのもとには多くのチームから獲得のオファーが舞い込んだ。
複数のチームと面談を行い最終的に選んだのがウォリアーズだった。サンダー時代にシーズンMVPと4度の得点王を獲得しながら、ファイナル王者の称号だけは得られなかったデュラント。悲願達成の可能性が最も高いチームを選んだのは必然だったかもしれない。
だが、ただでさえ黄金期を迎えていたウォリアーズに、デュラントが加入するのは一強時代を招きかねない危険性もはらんでいた。ダラス・マーベリックスのダーク・ノヴィツキーは、デュラントの個人的な事情に理解を示しながらも「NBAはこういう事態を避けたかった」と、スター選手がひとつのチームに集まることを危惧した。
●ケビン・デュラントがウォリアーズ入り、NBAのバランスブレイカーになる恐れも
ウォリアーズはレギュラーシーズン1位の成績でプレーオフ進出を決めた。そしてプレーオフでも無敗でカンファレンス王者となり3年連続のNBAファイナル進出。ファイナルでも圧倒的な強さでキャバリアーズを下した。
■献身的なスーパースター軍団
デュラントの加入はファイナル進出を簡単なものにする。そういった声がある一方で、スター選手同士のエゴの衝突という心配もあった。
ステフィン・カリー、クレイ・トンプソン、ドレイモンド・グリーンを中心に個性豊かな職人集団が脇を固める形で構成されていたウォリアーズ。そこにデュラントを加えることは難しさもあったはずだ。
だがウォリアーズの選手たちはスターであっても、決してエゴイストではなかった。優勝決定後の会見でデュラントはグリーンに助けられたと振り返っている。
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ドレイモンド・グリーン
(c) Getty Images
「メンフィス・グリズリーズ戦で敗れた翌日、サクラメントでグリーンと食事をしているときに『自分らしくいろ』と言われたんだ。ただ自分らしくいろとね。あのときは苦しんでいた。そういうときに鼓舞してくれるチームメートがいたんだ」
鳴り物入りで加入したデュラントだが、シーズン中には調子の上がらない時期もあった。グリズリーズ戦では第3クォーター終了時に19点リードしながら大逆転負けを喫し、デュラント自身も第4クォーターでは5得点に抑えられている。そうした時期にチームメートたちのサポートが得られたことを嬉しそうに語る。
「僕らがみんな人生で必要とすることさ。シーズンを通してずっとそうだったのが素晴らしい。このチームの一員でいられて素晴らしいよ」
またデュラントはカリーの献身性を称え、彼の人柄は演技ではなく見たままの人物なんだと賞賛した。
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ステフィン・カリー
(c) Getty Images
「ステフのような選手は見たことがない。本人にも伝えたんだ。君のような選手は見たことがないってね。第5戦でも全身全霊をかけてプレーしていた。ステフの献身性やチームメートへの気遣いについては聞いているだろうが、それは間違いなく本当のことだ。マスクや衣装を身に着けて演じているわけではない。本当に献身的な男なんだ。彼のようなスーパースターがチームのことを最優先する姿は本当に素晴らしい」
■「人生のどこかで自分の番が来ることは分かっていた」
シーズン中には様々な批判も浴びせられたデュラント。会見ではそうした声が間違いだったことを証明できたと誇らしげに語った。
「間違いを証明できたのはクールなことだ。インスタグラムやツイッターでそういう話をすることは自由だ。だが批判を気にすることはない。ただ毎日コートに出て取り組むだけだ。自分がチームの中でも個人としてもできる限り最高の選手になれるよう努める」
重ねてデュラントは「何でも好きなことを言ってくれて構わない」と批判は気にしない姿勢を示し、「僕ほどバスケのことを気にしてバスケのことが大好きで、必死にバスケットボールに取り組むものは誰もいない」とこの競技にかける熱い想いを語った。
「コート外で起きることについては何でも好きな話をすれば良いが、ラインの中では毎日必死に取り組んで自分自身を信じている。バスケを信じてバスケを尊重してバスケのことを愛している」
これまで何度も挑んでは届かなかったファイナル制覇。悲願の優勝を果たしたデュラントは、「人生のどこかで自分の番が来ることは分かっていた。だからとにかく自分の信念を守って努力を続けようとしてきた。いまは何を言えば良いか分からない気分だ」とはにかんだ。