【THE REAL】セレッソ大阪・水沼宏太があげる復活の狼煙…正確無比なクロスとほとばしる情熱 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE REAL】セレッソ大阪・水沼宏太があげる復活の狼煙…正確無比なクロスとほとばしる情熱

オピニオン コラム
水沼宏太 参考画像(2012年5月23日)
水沼宏太 参考画像(2012年5月23日) 全 4 枚 拡大写真
■緩みかけた雰囲気に喝を入れた大声

怒気が込められた大声が、はっきりとスタンドまで聞こえてきた。キンチョウスタジアムで歴代2位にランクされる、1万6759人のファンやサポーターの歓声をかき消すほどの迫力も伴っていた。

ホームに柏レイソルを迎えた8日のJ1第18節。相手にコーナーキックを与えた前半32分だった。弛緩しかけた空気を感じ取ったのか。セレッソ大阪のMF水沼宏太が、おもむろに仲間たちを叱咤した。

「夏の暑い試合中に大声を出すと、本当に倒れそうになるんですよ。ちょっと気をつけないといけないんですけど、そういう(声を出す)ところはまったく苦にならないので」

試合が始まった午後7時の気温が28.3度、湿度に至っては75%。大量の水分と体力が失われる、過酷な消耗戦で求められるのは集中力。だからこそ、自他ともに認める熱血漢の27歳は黙っていられなかった。

相手にチャンスが訪れているというのに、帰陣する動きがやや鈍いように映った。ちょっとでも隙を見せればやられるのが勝負の世界。仲間たちの目を覚まさせるためにも、つんざくような大声が必要だった。

このときのピンチは防いだが、前半41分にカウンターから先制された。右サイドをドリブルで駆け上がったFWクリスティアーノのアーリークロスを、MF武富孝介がダイビングヘッドで叩き込んだ。

前節のFC東京戦に続いて許した先制点。しかも、相手は勝ち点1差の3位で追走してくるレイソル。キンチョウスタジアムにため息が漂うなかで、セレッソの闘志は逆に高まったと水沼は笑う。

「先制されるとガクッとなりがちですけど、いまはそれでも逆転できる力というものがついてきている。後半に入ってからは僕たちのサッカーが変化したというか、このままじゃいかん、というところをピッチで表現できた。勢いだけじゃない、という部分を見せられたと思う」

■2試合連続でアシストした逆転ゴール

FC東京戦は後半の怒涛の3連続ゴールで逆転した。舞台も同じキンチョウスタジアムで、再び劇的なドラマの幕が開く。後半16分にFW杉本健勇のゴールで追いついた9分後だった。

途中でベンチに下がったFW柿谷曜一朗に代わり、左腕にキャプテンマークを巻いたMF山口蛍が、右タッチライン際へロングパスを通す。トップスピードで駆け上がり、追いついたのは水沼だった。

「それまでも何本かファーサイドにクロスをあげていたし、ひとつはまったく狙い通りじゃないものもあったので。自分としても早くアシストを決めたい、という気持ちはありましたね」

このとき、柿谷に代わって途中出場していたFW澤上竜二がニアサイドに走り込み、ファーサイドには187センチの長身が武器の杉本が陣取っていた。必然的に中央をケアする意識が薄くなる。

「FC東京戦もそうでしたけど、あそこ(中央)がよく空くんですよ。そのスペースへソウザがよく入ってくれた。ソウザのシュートも上手かったけど、ソウザにしっかり合わせられたのもよかった」

水沼が放った低く、速いクロスに飛び込み、ダイレクトで右足を合わせたのはボランチのソウザ。慌てて飛び込んできたDF中谷進之介、キャプテンのMF大谷秀和のブロックも間に合わない。

むしろ中谷と大谷のブラインドになったのか。再三のビッグセーブでレイソルの快進撃を支え、ハリルジャパンにも選出された22歳の若き守護神、中村航輔の反応がわずかに遅れる。

「もっと楽な試合運びができたという点では、先制されたのは自分たちの課題。ただ、いまは夏なので楽な試合はないし、中だけでなく外からも攻撃を仕掛けられたのはよかったと思う」

同点および逆転のゴールをアシストした、FC東京戦に続く大仕事。12年ぶりとなる単独首位浮上を導く逆転弾を喜ぶ輪の中心で、水沼のとびっきりの笑顔が映えた。

■大阪の地で再会したサガン鳥栖時代の恩師

日本代表でも活躍した父の貴史氏が現役時代にプレーした、横浜F・マリノスのジュニアユースに入団したのが2002年。ユースをへて2008シーズンにトップチームへ昇格し、親子2代でJリーガーとなった。

迎えた10年目のシーズン。マリノスからJ2の栃木SC、サガン鳥栖、FC東京に続き、通算5チームとなるセレッソのユニフォームに袖を通した。胸中には捲土重来の思いが秘められていた。

FC東京時代
(c) Getty Images

「去年悔しい思いをして、まだまだこのままじゃ終われないと。もう一度輝くために、もう一度自分がやりたいことをピッチのうえで表現できるようになるためにセレッソに来た、という感じですね」

サガンでの4年目を終えた2015シーズンのオフ。契約延長のオファーを受けていた水沼は、U‐17日本代表時代に約2年半指導を受けた、城福浩氏が監督に就任したFC東京からの完全移籍のオファーに応じた。

しかし、なかなかリーグ戦の舞台に立てない。城福監督が解任された7月下旬以降は、さらに出場機会が激減した。オフに届いたセレッソからの期限付き移籍のオファーに、迷うことなく首を縦に振った。

サイド攻撃を強化したかったセレッソにとって、右サイドからの正確なクロスを武器とする水沼はうってつけの存在だった。そして、水沼自身も運命に導かれた再会を感じずにはいられなかった。

3年ぶりにJ1へ挑むセレッソの新監督には、元韓国代表MFのユン・ジョンファン氏が就任した。サガン時代の監督であり、徹底的にフィジカルを鍛える厳しい練習を介して成長させてくれた恩人でもあった。

「ユンさんがやりたいことは何となくわかるし、それをチームとしてピッチで表現できるように、みんなに声をかけていくことが僕に与えられた使命だと思っている。キャンプの前にユンさんと話して、ユンさんもそういう役割を求めてくれたので」

■清武弘嗣の離脱を補って余りある存在感

しかし、好事魔多し。ジュビロ磐田との開幕戦で右太ももを痛めて離脱すると、復帰した川崎フロンターレとの第9節で今度は左太ももを負傷。再び治療に専念する日々が続いた。

「ようやく1試合を通して、走り切れるようになりました。でも、けがはいつ起こるかわからないので、体をしっかりケアしながら目の前の試合に向けて準備して、自分に与えられた仕事をまっとうしていきたい」

2度目の復帰戦は、敵地・ノエビアスタジアム神戸で行われた5月28日のヴィッセル神戸戦。柿谷に代わって後半14分からピッチに立つと、わずか5分後に移籍後初ゴールとなる決勝点を決めた。

そして、FC東京戦で杉本の同点弾、レイソル戦ではソウザの決勝弾を、右サイドからの正確なクロスでアシスト。もっとも、復調した水沼がセレッソに与えているのはゴールやクロスだけではない。

高温多湿の悪条件下でプレーしたレイソル戦では、両チームを通じて最長となる11.801キロを走り抜いた。攻守両面で労を厭わない献身さと泥臭さ、そしてリーダーシップでチームを鼓舞し、背中で引っ張る。

「最後の苦しい時間帯でもみんなで声をかけあって、お互いを助け合うのはユンさんが求めるサッカーでもある。いまは先制されても逆転できる自信があるけど、それを過信に変えることのないように。まずは先に失点しないところから始めて、地に足をつけながら一歩一歩、みんなで前進していきたい」

6月25日のベガルタ仙台戦でMF清武弘嗣が左太ももを痛め、全治8週間と診断された。今シーズンだけで4度目の戦線離脱となるが、だからといって失速するわけにはいかない。

入れ替わるように戻ってきた水沼が、清武の穴を補って余りあるパフォーマンスと存在感を発揮。悲願の初タイトル獲得へ、8戦連続無敗と絶好調を維持したまま後半戦に臨むセレッソをけん引していく。

《藤江直人》

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